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Practice05-1. 「守る」オペレーションから「攻める」オペレーションへ

PracticeDX推進の実用書

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オペレーションを進化させ続ける。そして、ビジネスの進化を支援する。

デジタル時代にオペレーションへ求められるのは、この2つの「攻め」の両立である。

「攻め」のオペレーションへ転換させるためのケイパビリティとは何かを見ていきたい。

デジタルがオペレーションの概念を変える

 デジタル時代には企業よりも、顧客のほうが速く、そして大きく変化していく。この現実が、オペレーションに臨むスタンスの転換を促す。「守り」から「攻め」への転換だ。

 これまでオペレーションには主に定められたプロセスを着実に実行することが求められてきた。そこには、顧客の変化は緩やかに進行するという前提があった。しかし、その前提が崩れるのがデジタル時代だ。顧客が速く、大きく変化するならば、その変化に先んじて自社のオペレーションも進化させ続けなければならない。

 そして、その進化は、オペレーション領域だけに留まるものではない。オペレーションは、顧客への提供価値向上などを通じて、ビジネスの進化を支援することもできる。常に変化する顧客のデータを吸い上げられる顧客接点を持つからだ。

 「オペレーションを進化させ続ける」こと、「ビジネスの進化を支援する」こと。デジタル時代に新たに求められるこの2つを両立させ、「守り」から「攻め」のオペレーションへ転換させていくためには、3つのケイパビリティを整備しなければならない。

  • 1.これまで取っていなかったデータを取りに行く
  • 2.仮説検証型の顧客インタラクションをつくる
  • 3.変化を是とするマインドセットを身に付ける

 

 日本企業は、この3つのケイパビリティに大きな課題を抱えているのが現状だ。顧客変化を捉えた全社的、継続的な進化のために、これらのケイパビリティを大幅に向上させなければならない。

これまで取っていなかったデータを取りに行く

 オペレーションは、多数の顧客接点から構成される。例えば商品・サービスの販売時の接客から、コンタクトセンターでのアフターフォロー接客など、数え上げれば枚挙に暇がない。この接点から、顧客の変化の予兆を捉えるデータを取得できれば、オペレーション、ひいてはビジネス全体のタイムリーな進化へとつなげていくことができる。

 しかし、データの収集パスとなり得る顧客接点が、宝の持ち腐れとなっているのが現状だ。今でも、商品・サービスに関するアンケート、営業日報、コンタクトセンターへの改善要望など、顧客ニーズを探る多くのデータ収集は行われている。しかし、いま集められているのはデータ化できる顧客の声のほんの一部に過ぎない。顧客の潜在ニーズを捉え一歩先を行くには、データ取得もこれまでより一歩踏み込み、より多様なデータを取りに行かねばならない。データの種類と量が増えてこそ、顧客自身も気付いていない感情や行動の変化に迫ることができる。これまで取っていなかったデータを取りに行くために、オペレーションに意思を持って、データを収集するパスを埋め込むのだ。

 例えば、カナダに本社を置くTDバンクでは、「最上級のカスタマーエクスペリエンスの提供」をスローガンとし、オペレーションにおけるすべての顧客接点をフル活用したデータ収集を実現している。

 コンタクトセンターやATM、モバイルバンキングの利用から得られる行動データに加え、スマートフォンの使い方、ソーシャルメディアでのコミュニケーションなど、顧客の関心に関わるデータも集めている。ここで得られた情報はAIで分析され、顧客への自社サービスのレコメンドや、各種サービスの改善に用いられている。

 また、コンタクトセンターでは、顧客の行動データだけでなく、感情分析も導入している。これにより顧客がサービスに対して、どの程度満足しているか、あるいはフラストレーションを感じているかを計測し、サービス向上に生かしているのだ。

 同様のデータ収集の取り組みは、アメリカの大手銀行や地銀などでも進んでいる。

 日本企業もあらゆる顧客インタラクションをデータにすることの重要性を改めて認識し、収集可能なデータと活用方針を深めていくべきではないだろうか。

仮説検証型の顧客インタラクションをつくる

 これまで取ってこなかった顧客の声や行動などを次々とデータ化できたとしても、それらを可視化し、そのまま打ち返しているだけでは、顧客の表面的なニーズをなぞるだけで終わる。それでは、潜在ニーズに応えられず、顧客の期待を超えることはできない。

 データはあくまで過去に起きた事実(ファクト)である。速く、大きく変化する顧客の一歩先を行くには、得られた多様なデータから、顧客がなぜそういう行動をとったのか、なぜそういう心理に至ったのかを突き詰めねばならない。

 そのような顧客行動、顧客心理に関する攻めの仮説検証サイクルを高速で回していった結果として、これまで気付いていなかった顧客変化を捉え、その変化を仮説検証データとして入手することができる。そうやって得られた検証データが、新たなインサイト(気付き)を生み出していく。そのためには、仮説検証型の顧客インタラクションを構築する必要がある。

 料理配達プラットフォームのウーバーイーツを利用したことがあるだろうか。Uber Eatsアプリでは料理を注文後、配達員が今どこにいるのかを地図上で確認することができ、その配達員とチャットや電話で会話することもできる。これはこれまで以上に加速する「待てない」という顧客心理に応えるものであろう。「待てない」顧客心理に応えるストレートな方法は配送時間を短縮することだが、ウーバーイーツはそれだけでなく、配達を待つ顧客心理を深掘りし、多様なサービスを展開している。

 例えば、チャットや電話は、土地勘のない配達員が自宅まで迷うことなくたどり着けるかといった「不安感」を踏まえたものであろう。

 ウーバーイーツは顧客心理に応える機能を搭載しつつ、アプリ操作やチャットのログデータで検証しながら、サービス品質を日々高めているのである。

 一方で、その顧客心理の読み方によっては、別の仮説も考えられる。

 例えば、顧客が実際に食するシーンを考えてワクワクしているのだとすれば、配送中に料理の動画や、同店舗の別メニューの紹介などを流すことも、待ち時間を感じさせない1つの方法かもしれない。

 あるいは、単純に到着時刻がわからず、自身の行動に制約がかかりフラストレーションを溜めているだけなのであれば、到着時刻を自分で調整できる仕組みがあればよいのかもしれない。

 これらはウーバーイーツも検討済みの仮説であろうが、重要なのはこれまで取得したデータから種々の仮説を持ち、検証することだ。仮説検証の結果を新たなデータとして蓄積する。その積み重ねが、顧客の一歩先を行く提供価値へとつながっていく。

 仮説検証型の顧客インタラクションは、「攻める」オペレーションの重要パーツなのである。

変化を是とするマインドセットを身に付ける

 「オペレーションを進化させ続ける」、「ビジネスの進化を支援する」。オペレーションをこのように位置付け直すことは、オペレーションに従事してきた者にとって一大事だ。なぜならそれは、守ることを中心としてきたオペレーションから、攻めること、すなわち変わり続けることを是とするマインドセットへと転換することを意味するからだ。変革を支える存在たる向上心と、新たな仮説をもとに逆風を恐れず物申す気概が求められる。

 では、どうすればこのようなマインド変革を成し遂げられるのだろうか。

 ただ闇雲に全社的な意識向上を目指したとしても、企業の規模が大きくなればなるほど、その意識の浸透は現実的ではなくなるだろう。個々の社員が具体的な変革に参加し、成功や失敗の体験を共有し、成長を遂げていかなければ意味がない。これを成し遂げるには、サイロ化した組織から隔離され、オペレーションを部門横断で変革するチームこそが、最適な場である。既存の組織ややり方に起因した制約を取り払い、CX(カスタマーエクスペリエンス)を支えるオペレーション全体を大きく変革することに挑戦するからだ。

 変革を推進・管理する特別チームの組成も、併せて必要になるだろう。この特別チームは意識変革を後押しするだけでなく、達成状況をモニタリングし、社員のモチベーションを刺激し続ける役割も担う。したがって、その機能を担わせるメンバーは、熱量を持った人材でなければならない。このような組織に対して、経営者は投資を行い、適切なエンパワーメントとエンカレッジメントを行うべきなのだ。

 変革の場が用意されたとして、そこでオペレーションに従事する社員のマインドセットを現実に変革していくには、”アジャイル”が重要なキーワードとなる。社員を継続的に刺激し、試行錯誤の苦しさと、それを乗り越えた成功体験を提供し続けるために欠かせない手法がアジャイルだ。オペレーションに新たな地平を拓くために、次節ではこのアジャイルについて深掘りしていきたい。

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