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Practice04-3.データレバレッジへの第一歩の進め方

PracticeDX推進の実用書

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実際にデータレバレッジを進めるためには、その前提として任務にあたる人材を見極めなければならない。

リスクを恐れず任務を全うし得るファーストペンギンたる人材は、どこから発掘すればよいだろうか。

ファーストペンギンを核にした、データレバレッジの第一歩の具体的な踏み出し方を見て行きたい。

ファーストペンギンは現場で探す

 データ活用を進めたいという声をよく耳にする。しかし、レバレッジを利かせる第一歩をうまく踏み出せていない企業が多いのではないだろうか。最大の要因は、デジタル部門においてデータレバレッジの第一歩目を任せる人材を間違っていることにある。自社ビジネスへの深い理解と、データを操るスキルを兼ね備えた稀有な人材でなければ、ファーストペンギン(群れの中から最初に海へ飛び込むペンギンのこと。すなわち、リスクを恐れず初めてのことに挑戦する精神の持ち主を指す。)には到底なれない。

 そのような人材がデジタル部門の既存メンバーとして在籍していることは少ないし、外部のデータサイエンティストでその要件を満たせることはほぼないと言ってよい。

 それでは、ファーストペンギン足り得る人材はどこにいるのだろうか。答えは、「灯台下暗し」である。ビジネス理解とデータスキルを磨き続けてきたファーストペンギン候補は、あなたの会社の中に何人も隠れている。社内で見出されていないだけなのだ。

 データサイエンスは、ここ最近生まれたものではない。データサイエンススキルの一つである現代統計学は、100年以上の歴史がある。機械学習にしても50年以上の歴史がある。データサイエンスを使って業務にあたっている人が、どの業界のどの企業にも必ず存在しているのだそのような人材の中からビジネス理解が深いファーストペンギン候補達を探し出し、デジタル部門へ引っ張ってこなければならない。

 例えば、生産部門や品質管理部門は良い例だ。彼らは古くから機械学習を活用した工程・装置管理、統計を活用した品質管理に取り組んでおり、ビジネス課題とデータサイエンスへの造詣が深い。

 また、マーケティング部門やサプライチェーンの部門にも、ファーストペンギン候補が隠れている可能性が高い。未来の需要予測は彼らの主要業務の1つだが、そこでは統計が確実に駆使されているからだ。

 このように、固定化したデータサイエンティストのイメージを取り払い、社内に目を凝らせば、ビジネス理解とデータスキルを兼ね備えたファーストペンギン候補はきっと見つかる。現場からファーストペンギンを探す。そして、デジタル部門へ引っ張ってくる。それが、データレバレッジの最初の準備である。

クイックプロトタイプを作る

 次は、クイックプロトタイプ作りだ。クイックプロトタイプは、カネと時間をかけずに1人で作成できるような、ライトな試作品を意味する。

 このクイックプロトタイプが、DXを推進していくうえで欠かせない。デジタルはこれまでできなかったことをできるようにする、大きな可能性を秘めたテクノロジーだ。しかし、人は動くものを目の当たりにしなければ、その可能性になかなか気付くことはできない。クイックプロトタイプには、ファーストペンギン自身、そして周囲の人達に気付きを与える力がある。その気付きが、テクノロジーの可能性を最大限生かしたアイデアを発想する下地となるのだ。

 そして、気付きを与える力を持つプロトタイプには、カネと時間がなくても簡易的につくる方法が存在する。つまり、やらない理由、やれない理由はどこにもないということだ。

 モデル作成ツールや前処理ツールなどのデータ活用ツールには、オープンソースのものもある。つまり、無料だ。そして、かかる時間も数時間から1週間程度だ。これもデータ活用ツールの恩恵である。数百件のデータをつくり、モデル作成ツールにインプットすれば、わずか1日で機械学習モデルを作成できる。

 実際にベイカレントでは、売上実績と天候情報から来店者数を予測するクイックプロトタイプを1週間で作成した。その際に使ったのは、PythonとH2O Driverless AIである。わずか一週間だが、数十のアルゴリズムの精度を試し、最も適したアルゴリズムを使って来店者数を導き出した。

 ここで、ファーストペンギンにデータ活用ツールを使いこなせるのか、そんな疑問が浮かぶと思うが、心配には及ばない。基本的なデータスキルを備えているファーストペンギンならば、使いこなせるようになるのに1日も必要ないだろう。事実、このときファーストペンギンがH2O Driverless AIを使いこなせるようになるのに、1時間とかからなかった。

 クイックプロトタイプ。それが、ファーストペンギンの最初の仕事となる。

ペンギンの群れで突き抜けた未来を描く

 ファーストペンギンのクイックプロトタイプはデータレバレッジの可能性を示してくれるが、ファーストペンギン一人で生み出せるインパクトの大きさには限界がある。策定できる打ち手の幅が、ファーストペンギンの知っている領域に限定されてしまうからだ。

 次の一手は、ファーストペンギンが知っている領域の周辺にいる、ビジネス理解が深い次のペンギン候補をデータレバレッジの取り組みへ引き込み、データによる最適化・自動化を狙う群れをつくっていくことである。ペンギン達の自動化領域がつながれば、業務プロセスが巨大な塊で自動化され、飛躍的な生産性向上が成し遂げられる。工場で言えば、検査の自動化とパッケージングの自動化をつなげることが、後工程全体の自動化へとつながっていく。インパクトが10倍、100倍になる突き抜けた未来を描くことができるのだ。

 では、どのように周辺領域のペンギン候補達を群れへと引き込んでいけばよいのだろう。ペンギン候補達を巻き込みながら、クイックプロトタイプの実用性を高めていくことだ。

 できたばかりのクイックプロトタイプは、実用に耐える精度には達していない。使い勝手もよくない。あえて、この段階のプロトタイプで、ペンギン候補達に遊んでもらうのであるすると、忌憚のない意見が次々と出てくる。それらの知識やアイデアをモデルに加えることでクイックプロトタイプの実用性が向上していく。

 成長するのは、何もクイックプロトタイプだけではない。これを見て触れたペンギン候補達も、データレバレッジのポテンシャルに気付き始める。そして、気付き始めたペンギン候補に、ファーストペンギンがデータスキルを教え込んでいく。その結果、新たなペンギンが群れへ加わっていくのだ。

 勘と経験で、シフト表を作成している店長がいた。初めは需要予測モデルをあてにするはずもない。ところが、日に日に店長の推測値とプロトタイプの需要予測モデルの数値が近づいていくのを目の当たりにする。ある日、需要予測モデルに従ったほうが、最適なシフト表をつくれることに気付く。「機械学習は使えるのではないか」と芽生えた意識。それこそが、この店長がペンギン候補となった証拠だ。その後、店長はモデルの磨き込みに参画しながら、データスキルも身に付けていった。立派なセカンドペンギンになったのである。

 周囲を巻き込みながらプロトタイプを地道に磨いていけば、必ず群れは形成できる。その群れの大きさが、インパクトの大きさにつながっていくのだ。

抵抗勢力を味方にするためのヒント

 ペンギンが群れで描いた突き抜けた未来、すなわち目指す目的の前に立ちはだかるのが、社内の抵抗勢力だ。

 過去の成功体験によるプライド、そして、失敗体験による恐れが、変化を受け入れ難くしている。

 その壁を突破する最も効果的な方法。それは皆の前で、抵抗勢力のドン自身にデータレバレッジの意義を語らせることである。一見して困難に見えるその行為を、現実のものとするためのヒントが3つある。

 あるメーカーでの事例に基づきながら、そのヒントを説明する。

 そのメーカーでは、抵抗勢力のドンがデータ活用の取組みに異を唱えていた。このドンを説得するのは、並大抵のことではないように思えた。だが、最終的には大きな味方へと変貌を遂げたのである。その過程には何があったのか。

 1つ目のヒントは、反論できない文脈を背景にすることである。顧客からの生の声、新型コロナウイルスによる社会・経済的要求、当人も合意した経営計画の内容など、企業の中には「それを言われたら動かざるを得ない」という文脈があるはずだ。

 そのメーカーでは、機械学習を使った発注量予測を進めようとしていたが、この道30年の購買担当役員は後ろ向きだった。過去に何度もシステム化に挑戦し、失敗してきた経験があったからだ。

 しかし、抵抗勢力のドンと言われたその役員も、検討することには同意せざるを得なかった。中期経営計画の施策の1つとして、発注金額の最適化を当人が掲げていたからだ。このように、まずは反論を許さない文脈の中で、取り組みをスタートする必要がある。

 検討開始を渋々認めた抵抗勢力にぶつけるもの。それが、2つ目のヒントだ。抵抗勢力の前で、クイックプロトタイプを実演するのである

 前出の購買担当役員を前に、部品の発注量予測を実演してみせた。反応はどうだったか。

 首を傾げていた。意見を聞いてみると、自らの予測数量と近い数字が示されているとのことだった。その結果を不思議に思い、首を傾げたのだ。

 これが機械学習のポテンシャルを初めて体感した人に多いリアクションなのである。人は、推測していたことと同じ結果を目の前に示されると驚く。機械学習が人に追いついてきたことに気付くのだ。

 機械学習のポテンシャルに気付いたこの購買担当役員は、反対一辺倒から転じて、実行上の課題を前向きに指摘する姿勢を見せるようになったのである。

 3つ目のヒントは、味方になったドンに、データレバレッジの意義を皆を前で語ってもらうことである。そこで重要なのが、どんな人の胸にも突き刺さるよう、徹底的にわかりやすく、付箋1枚に書き切れる内容にすることが条件だ。

 例えば、「すべての紙を電子化して倉庫代100億円をなくす」、「すべてのチャネルでパーソナライズされたCXを実現し、売上を10倍にする」など、打ち手とインパクトの大きさをわかりやすく言語化したものである。

 この購買担当役員は、味方にする味方にするのは到底困難と思われる相手であった。どの会社にも、このような存在が大なり小なりいるのではないだろうか。しかし、手をこまねいているわけにはいかない。その人にデータレバレッジの意義を語らせるところまで流れをつくれば、その壁は突破できる。

 クイックプロトタイプを起点に、ペンギンの群れを形成しよう。抵抗勢力をものともせず、データレバレッジに向かって突き進むために。

Baycurrent-Digital_Practice04-3

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