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Practice04-1. データにテコを利かせて価値に変える

PracticeDX推進の実用書

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データはただあるだけでは何も生み出さない。

それを価値に変えなければDXは前進しないのだ。

データ活用の巧拙は企業業績に直結する。

データにテコを利かせ、いかに成果を生み出すのか、DXの要となる「データレバレッジ」について解説する。

データ活用の巧拙は業績と直結する

 DXのキードライバーは何か、どうすればDXを前に進めることができるのか。これは、DXを推し進めたい企業にとっての最重要論点である。

 このDXのキードライバーの1つが、データサイエンス、すなわち「データを価値に変える営み」であることに異論はないだろう。

 事実、2019年に行ったベイカレントによる調査・分析によって、「データを価値に変える営み」の推進度合いが、業績と相関することが裏付けられている。

  日本の主要企業(日経225企業)を対象に、①データ活用のユースケースを数多く打ち出しているか、②データ活用の目的まで言及しているか、という2つの基準で、企業のデータ活用レベルを3つのステージに分類し、そのうえでステージ別の増収率の比較を行った。

 すると、データ活用が最も進んでいるステージⅠに属する16社は、売上の伸び率が顕著であった。2016年と2018年の売上を比較してみると、ステージⅡ・Ⅲでは増収率11%以上の企業が約2割に留まっている一方で、ステージⅠにおいては約4割が増収率11%以上を達成している。このように、データ活用方針を明確に打ち出し、ユースケースを数多く実現させている企業は明らかに業績を向上させているのである。

 では、どのようなフレームワークで取り組みを推進すれば、データを価値に変える確度とインパクトを高められるのだろうか。

データを価値に変えるデータレバレッジ

 データを価値に変える確度とインパクトを意図的に高める考え方を、ベイカレントではテコの原理(=レバレッジ)になぞらえて、「データレバレッジ」と呼んでいる。

 企業経営には意思として達成したい事柄や、課題として解決したい事柄がある。これら意思達成や課題解決を「目的」と呼ぶことにしよう。そして、企業価値につながり得る目的の実現にデータが貢献したとき、データは価値を生んだと判断することにする。

 ここからは、データ活用をテコになぞらえながら、その流れを追ってみる。

 まず目的からスタートし、作用点に置くもの、すなわち目的を実現するための打ち手を策定する。次にテコの力点に置くデータ、つまり目的の実現に必要なデータを調達する。そのうえで、データ分析を支点としてテコを利かせる。その結果、課題を解決する打ち手が実行され、目的が実現される。

 これらテコの構成要素、すなわち目的、支点、力点、作用点に工夫を凝らすことで、テコの原理は大きく働く。テコの原理(=レバレッジ)を意図的に働かせること。それが、「データレバレッジ」である。

データレバレッジに必要な2つの前提

 前述の通り、DXとは「デジタルテクノロジーを活用し、従来のやり方を抜本的に変革すること」である。抜本的な変革を実現するためには、今までの枠組みから脱却し、“突き抜けた”行動をしなければならない。そうであるならば、データレバレッジも突き抜けた目的を設定することが1つ目の前提となる。これまでのような数%、数十%の改善という発想ではなく、10倍、100倍のインパクトを狙うのだ。

 しかし、日本企業が設定する目的には手堅さが目立つ。加えて、そもそも目的すら設定していないという、嘆かわしい現実がある。

 ここで、その目的設定の実態を見てみたい。ベイカレントによるデータ分析実態調査によると、そもそも約8割のデータ分析経験者がデータ活用の最終的な目的、すなわちゴールを設定していないことがわかっている。データ分析においては、ゴールを設定してから分析作業に移るのが鉄則だ。現状は論外の実態であると言わざるを得ない。

 では、残り約2割の目的設定者が狙うゴールはどのようなものなのだろうか。調査結果によると、その大半が手堅い内容となっている。売上向上率では30%以下を目指すというものが8割弱、コスト削減率に至っては目指す数値は10%以下というところが7割弱を占めた。これでは、抜本的な変革と呼べる水準には到底及ばない。マイルストーンとして刻む目標であれば地道なものでよいだろう。しかし、最終的なゴールは突き抜けたものでなければ、既にデータレバレッジの1つ目の前提を満たしていないことになる。

 データレバレッジの2つ目の前提となるのは、支点・力点・作用点の「3点セット」を揃えることである。「3点セット」が揃っていなければ、そもそもテコを形づくれないからだ。

 しかし、多くの日本企業において、要素の一部が欠けており、データ活用が円滑に進まないプロジェクトが散見される。ある金融機関のデータ統合プロジェクトにおいても、この事象に直面した。

 この金融機関は、過去の取引履歴やデジタルチャネルの訪問ログ分析に基づいた新サービスで売上向上を図ろうとした。ところが、支点と作用点に問題があった。まず、支点の役割を果たすべきデータサイエンティストが在籍していなかった。さらに、作用点の重要パーツであるデータ閲覧システムの準備も後回しになっていた。これでは力点となるデータをどれだけ集めたとしても、レバレッジを利かせることはできない。

 このように、支点・力点・作用点のどれか1つでも欠けてしまうと、データは目的実現に結び付くことはないのだ。

レバレッジを利かせるための工夫とは

 突き抜けた目的を設定したうえで、データ(力点)、データ分析(支点)、打ち手(作用点)のそれぞれにどこまで工夫を凝らせるかが、レバレッジの度合いを左右する。

 では、そこにはどのような工夫が求められるのであろうか。

 まず、力点(データ)に強い力を加える、すなわち使えるデータを増やす工夫が必要となる。

 目的実現に適した打ち手を実行するためには、闇雲にデータを集めるのではなく、打ち手に貢献し得るデータを集めなければならない。日付、曜日、数量、単価、金額など、データ項目は様々ある。顧客行動データや機械音データなど、これまで取れなかったデータが取れるようになることも、打ち手に貢献し得るデータの幅が広がることに直結するだろう。そのうえで、現場の勘と経験を言語化し、打ち手に貢献し得るデータを見極めることが重要だ。

 集めるデータを決めたならば、そこで求められるのは量と品質の担保である。データ品質は、データが分析に耐え得る状態になっていなければならない。データの信頼性や正確性、完全性、適時性をチェックし、データ品質を高い水準で維持するのだ。

 打ち手への貢献度が高く、量と品質が担保されたデータを増やせば、力点に加える力を強めることができるだろう。

 次に、支点(データ分析)における工夫は、支点の位置をズラして支点(データ分析)と作用点(打ち手)の距離を短くすることである。ビジネスにおいて、これは何を意味するのだろうか。それは、分析によってデータからすぐさまアクションに移せる「違い」を見つけ出し、打ち手につなげることである。

 例えば、ダイレクトメール(DM)において、趣味趣向ごとに購買率が高まるキャッチコピーをデータから見出したとしよう。このルールに従ってDMを作成することで、送付する相手は同じでもDMへの関心度が高まり、大幅な売上増加が見込まれるだろう。

 一方、もし分析によって、晴れの日に売れる品揃えと雨の日に売れる品揃えを見出せたとしても、DMによる売上の増加につなげることは難しいだろう。天候の変化を確実に予測してDMを届けることはできないからだ。

 このように、実行可能なアクションにつながらないデータ分析は、作用点(打ち手)との距離が短いとは言えないのである。

 最後は、作用点(打ち手)における工夫だ。作用点の力を目的に向かう方向へ正しく伝えるには、すべての打ち手をデータに基づいたものへ変えていく、すなわち打ち手のIT化を進めることである。

 例えば、製造ラインの検品を効率化する場面を考えてみよう。

 出荷前の検品処理が人手で行われていたら、画像認識で不良品を検知できたとて、結局人手を介するため、製造ラインの効率化は望めない。力点と支点までは、画像データと検知アルゴリズムで、データに基づくものとなっている。しかし、作用点は人手を介しており、すべてがデータに基づくものとは言い切れない状態になっているからだ。 

 この例でデータに基づく打ち手を考えるのであれば、こうなる。まず、良品と不良品の画像データを準備し、機械学習させる。そして、画像認識で不良品を検知したうえで、ロボットアームで不良品をピックアップする。不良品の検出率が100%であれば全自動化、95%であっても半自動化すれば大幅な人件費の削減が見込める。

 打ち手をIT化し、そこにデータを通わせる。それが目的に照準を合わせることになるのだ。

 データにテコを利かせて価値に変える。それを実現するためには、突き抜けた目的を設定し、支点・力点・作用点の一つひとつに工夫を凝らす。データレバレッジは、企業価値を高めるために必要不可欠なフレームワークなのである。

Baycurrent-Digital_Practice04-1

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