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Practice03-3.デジタルビジネスを成功させるCX思考

PracticeDX推進の実用書

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デジタルビジネスを成功させるポイントは、これまでできなかったことを実現すること。

顧客に刺さり、マネタイズできるサービスを生み出すには、「検討する立場」と「時間軸」を増やす必要がある。

そのうえで、デジタルテクノロジーを活用するために心得ておきたい点についても見ていきたい。

そのビジネスモデルは顧客に刺さるのか

 ビジネス成功の尺度は、費用対効果で語られることが多い。しかし「売上を上げたい」、「今なら先行者利益を上げられる」といった考えだけでは失敗する。なぜならば、企業の思惑だけで考えたビジネスモデルは顧客に刺さらないからだ。

 ここで誤解を避けるために、先行者利益について言及しておきたい。先行者利益を上げることはビジネスの勝ちパターンの一つであるため、それ自体を否定するものではない。実際クライアントの多くも、まだ競合が参入していないブルーオーシャンを狙って取り組んでいるのが現実だ。

 特に進化の激しいデジタルビジネスにおいては、先行者利益をつかみ取ることはビジネスに弾みを付けるうえで重要なため、企業にとっては是非とも狙いたいと思うのも当然である。しかしブルーオーシャンは、見つけたとしてもすぐに他企業が参入してくる。いずれレッドオーシャン化してしまうものと捉えると、その探索活動は、企業にとって繰り返し訪れる「終わりなき旅」であると覚悟しておく必要がある。

 一方で、ブルーオーシャンをせっかく見つけたとしても、そこにはサービスの成功を阻む落とし穴が潜んでいる。顧客の先を行くサービスであるブルーオーシャンは、顧客に本当に刺さるサービスであるか否かの事前確認ができない。まだ見ぬ顧客の視点に立つことを疎かにし、企業側の自分勝手な視点でサービスを独り歩きさせてしまう可能性すらある。

 落とし穴にはまり込まないためには、CX(カスタマーエクスペリエンス)思考で顧客の声に耳を傾け続けることを忘れてはならない。具体的には、顧客の感じる不足や不満、そして顧客に刺さったポイントをいち早く察知するための、フィードバックループの仕組みをサービスに組み込んでおくことである。加えて、ヘビーユーザやファーストターゲットに該当するユーザと定期的にコミュニケーションをとる機会を設けておけば、サービス向上に一役買ってもらうこともできるだろう。

 デジタルサービスに慣れ親しんだ顧客は目が肥えている。自分にジャストフィットするサービスを望んでいる顧客の期待を超え、感動CXを提供することは容易ではない。提供者視点が透けて見えるサービスであれば、顧客ニーズに刺さり込む鋭さは到底持ちえないであろう。多様化する顧客のニーズを深く理解せずして、感動CXは成し得ないのだ。

マネタイズの仕掛けはあるのか

 顧客のためにとCXを重視する余り、売上を二の次に考えてしまうことは、資金面でビジネスが頓挫するリスクを高める。企業は慈善事業を行いたいわけではないのだから、どこでマネタイズするかの検討は疎かにしてはいけない。

 しかし、マネタイズが想定通りに進まず、新規ビジネスを始めても売上がほぼゼロというケースは後を絶たない。最初は実験的に無料提供することで顧客に受け入れられたとしても、有償化した途端に離反されるという流れだ。

 まず認識すべきなのは、デジタルビジネスが自社に利益をもたらすためには、品質・コスト・納期を追求する視点だけでは不十分だということだ。顧客に「対価を支払ってでも、そのサービスを受けたい」と感じさせ、マネタイズにつなげるための仕掛けが求められる。つまり、顧客に嫌悪感を持たれることなく、サービスへの対価を支払ってもらう仕掛けを生み出さねばならない。

 例えば、以下のいずれかに該当するような場合、顧客にとって対価を支払うことへの抵抗感は薄れる可能性があるだろう。

<サービスへの対価を支払ってもらうための仕掛け(例)>

  • ちょっとした追加料金

 少しだけ追加料金を払うだけで、新たなサービスを利用できる

  • 支払いを将来へ先延ばし

 既存の月額料金に組み込むことで、1回の支払いが低額で済む

  • 割安感あるお得サービス

 ポイントや特別サービスといったメリットの方が際立っている

  • 他よりも安いという比較

 比較すると他サービスより安い

  • 目的との直結感醸成

 少々高くても、このサービスであれば目的を実現できると思わせる

 

 サービス料を支払う行為もカスタマージャーニーの一部である。CXの中で、顧客にいかに気持ちよく対価を支払ってもらうかという戦略を立てていく必要があるのだ。「いかに良い体験をしてもらうか」だけでなく、「料金を払ってでも使いたい」と感じてもらう仕掛けを組み込むことも、ビジネス成功の鍵を握っている。

増やすべきは「検討する立場」×「時間軸」

 デジタルビジネスを成功させるためにはCXを磨き上げることが必要だが、顧客を深層理解するためには前節で紹介した「3次元顧客分析」の考え方が有効だ。そして理解を深めた先、顧客に刺さるサービスにまで昇華させるには、「検討する立場を増やすこと」がポイントとなる。様々な顧客の視点に立つことはもちろん必要だが、同様のサービスを展開している競合の視点と、このサービスを最も売りたいと考えている自社部門の視点も加えて検討すると、それぞれの観点から得られたインサイトの突き合わせ確認ができる。

 3C分析のような従来のフレームワークを用いろと言っているわけではない。通り一遍の3C分析をするだけでは、顧客に刺さるサービスへ昇華させるのに程遠い成果しか生まないであろう。

 例えば「競合はこんな取り組みをしている」と情報収集するだけでは、観察の域を出ていない。「なるほど。競合はこういう目線で検討したから、このサービス提供にたどり着いたのか!」という具合に発見や驚き、すなわちインサイトを得ていかなければ、競合と差別化できる要素を盛り込めたとしても、顧客に刺さるサービスへの昇華は期待できないのだ。

 デザインシンキングの手法の一つとして「エスノグラフィー」がある。あるコミュニティに入り込み、行動を詳細に観察することでインサイトを見出していくやり方である。

 相手目線で観察するため、「そんなことが問題だったのか」と気付きやすい点が特徴だ。このエスノグラフィーの考えに則って、顧客・競合・自社それぞれの立場に入り込んでいくと、サービスを磨き上げるヒントが見つかるかもしれない。

 そして、顧客に刺さるサービスであり続けるためには、検討する「時間軸を増やすこと」もポイントだ。たとえ現在の顧客に満足してもらえたとしても、現状サービスにあぐらをかいてはいられない。

 具体的には、現在の顧客視点でCXを磨いた後は、1年後、3年後、10年後といった具合に、将来の顧客についても連想しておくことだ。将来の顧客に対しても期待を超えるCXを提供し、将来の競合よりも一歩先行くサービスを展開するには、時代の先を読むことの習慣化が必要なのである。

 しかし、世の中の進化が早く、数年先の見通しを描くことも困難な現代において、10年後の未来まで想像することは容易ではない。常日頃からデジタルがもたらす未来を想像し、社内外の多様な人々と仮説を意見交換することが重要である。未来予測には妄想力も求められる。スジの良い仮説をぶつけ合うことで、妄想力も磨かれ、将来の顧客を先回りできる可能性が高まるだろう。

できなかったことを実現してこそデジタルビジネス

 新規ビジネスを創造する場合の鉄則となるのが、既存ビジネスではできなかったことを実現するという考え方だ。これまでのビジネスのちょっとした延長と捉えられると、顧客を惹きつけるには心許なく、期待を超えるCXも提供し難い。生みの苦しみを味わう新規ビジネスだからこそ、インパクトのある打ち出し方をしたいところだ。

 そして、これまでできなかったことを実現していくために、デジタルテクノロジーの活用は欠かせない。日々進化するテクノロジーを使って、既存ビジネスとは違う価値を見出していく考えが重要となる。

 ただし、着実に価値を見出すためには、いくつかの気を付けなければならない点がある。

  

  • 青い鳥を追いかけない

 インパクトのあるビジネスアイデアは重要だが、画期的なアイデアを思いつこうと躍起になって取り組んでも、誰もが驚くアイデアを思いつける可能性は極めて低い。世界中の企業が新たなビジネスチャンスを狙っている今、世界でただ一つのアイデアにたどり着くことは難しいだろう。

 奇抜な発想でホームランを狙うより、デジタルリテラシーの着実な積み上げでヒットを狙ったほうが勝率は上がる。ただし、上述したように、既存ビジネスのちょっとした延長ではなく、できなかったことを実現していく考えを念頭に置いたうえで、ヒットを狙っていかねばならない。

  

  • ビジネスアイデアを閃かせる準備を怠らない

 「では、どうやってアイデアを出せばよいのか」という声が聞こえてきそうだが、多くの場合はアイデアを出す準備が足りていない。世の中を賑わせている新規サービスを実際に使ってみて、その良さを理解しておくことは、日頃からやっておくべきことである。デジタルのトレンドにアンテナを張っておけば、そこから連想して勝算の見込めるアイデアを閃きやすくなる。多くの先人が語っているように、アイデアは既存要素の新しい組み合わせだからだ。

  

  • 既存ビジネスにとらわれすぎない

 せっかく新規ビジネスの種を見つけても、既存ビジネスを担う部門と話を進めるうちに徐々にアイデアが収縮し、特異性が失われていくという事例は少なくない。社内からの反発にあうリスクを恐れて思い切ったアイデアが出ないのであれば、一旦既存ビジネスの制約を取っ払って考えたほうがよい。

 アイデアが閃いた後に、既存ビジネスとの差分を明確に整理していく手順がふさわしい場合もあるだろう。

 

 これらを踏まえたうえで、遊び心を持って取り組んでいくのだ。世の中の新規ビジネスを十分に研究し、良いところは存分に盗み、そして自社ならではのスパイスを効かせていく。遊び心の詰まったスパイスは、既存ビジネスの枠組みから抜け出せない凝り固まった人達を揺り動かす刺激ともなるだろう。逆説的だが、既存ビジネスの枠組みから抜け出せて初めて、既存ビジネスがつくり上げてきた自社アセットを生かすことができるのだ。それが、これまでできなかったことを自社流に実現する道を切り拓いていく秘訣だ。

 そして最後の決め手となるのが、デジタルビジネスに取り組む自分達が、そのビジネスの一番のファンであることである。思わず人に話したくなるようなワクワクする要素を盛り込む。そのビジネスで成し遂げたいことを決める。そうすると、覚悟を決めて全力を尽くせるようになる。感動CXを届けてみせると覚悟を決め、顧客のために何としても実現しようと取り組む熱いパッションこそが、デジタルビジネス成功の最後のピースとなるはずだ。

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