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Practice03-1. 顧客の期待を超えることが真のカスタマーエクスペリエンス

PracticeDX推進の実用書

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デジタルサービスの進化に必要な視点とは何か。

顧客から「さすが」や「まさか」といった言葉を引き出し、感動を与えるほどのCXを提供する。

そのためにどうデジタルを使いこなすか、そのアクションについて考えてみたい。

デジタルサービスの進化に必要な2つの視点

 2019年、国内のスマートフォン普及率は85%を超えた。特にこの5年間は、デジタルが常に隣にある環境が私達の生活様式を激変させてきた。今後は、ウェアラブルやIoTといった新たなデバイスの普及と、新たなネットワークである5Gの本格サービス開始で、デジタルを活用したコネクティッド社会は次なる夜明けを迎えるであろう。

 そんな激変する社会の中で、 モノの所有からコトの体験へと、顧客が求める価値観はますます変化していく。それに応えるように、新たなデジタルサービスが生まれ続けている。

 デジタル環境の進化とともに、顧客のデジタルサービスへの期待値は年々高まっており、その分「賞味期限」が短くなっている。これまでのモノ売りではモノを買い換えない限り向上しなかった機能が、デジタルサービスでは高頻度で簡単にアップデートできるからだ。進化の手を緩めれば、そのサービスはすぐに消費者から飽きられることになるだろう。

 また、デジタルサービスはスマートフォンを介して場所や時間を選ばず顧客にアクセスできる分、自ずと使用頻度が上がる。使えば使うほど飽きやすくなってしまうことも、「賞味期限」が短くなる理由の1つであろう。

 顧客を飽きさせないためには、サービスを定期的に進化させ、新たな価値を提供し続けるしかない。しかし難しいのは、変化し続ける顧客の価値観はつかみどころがないことだ。顧客のニーズを先読みし、刺さるサービスへと進化させ続ける営みは容易ではない。

 そのため、従来のモノ売りが定番商品の開発を目指してきたのと同様、デジタルサービスにおいても、「賞味期限」が長く頻繁なアップデートが必要ない「サービスの定番化」の考えを併せ持つことが重要となる。顧客の持つ基礎的欲求を高い水準で満たし、日々の生活に溶け込ませるのだ。

 ただ注意すべきなのは、デジタルサービスの「定番化」とモノ売りにおける「定番化」は大きく異なるという点である。モノの場合、購入した製品が少し気に入らないからといって、すぐに捨てられてしまう可能性は低い。一方で、モノを買う必要なく始められるデジタルサービスは、初期費用を抑えられる反面、継続的にサービス対価を支払い続けることになるためサービスへの不満や飽きが離反に直結する。

 顧客をつなぎ止めるには、顧客ニーズに応え続けるデジタルサービスを生み出していくしかない。飽きられないサービスのあり方は「賞味期限」の短いサービスをアップデートし続けることと、サービスを生活に溶け込ませて「定番化」することの、双方の実現だ。そのためにCX(カスタマーエクスペリエンス)思考でサービスと向き合い、顧客に深く刺さるものに進化させることが必要である。

顧客の期待を超える「さすがとまさかのCX」

 日本には古来、顧客の気持ちを汲み取った“おもてなし”文化がある。この“おもてなし”の発想こそがCX思考そのものだとも言える。ただし、”おもてなし”発想をデジタルサービスに盛り込む際は注意が必要だ。旧来のアナログな“おもてなし”で行ってきた顧客理解だけでは、顧客の期待に応える水準までCXを高めるための情報量が足りない。顧客とのタッチポイントが増加し、よりきめ細かく観察できるようになったデジタル社会では、顧客が対価を支払う瞬間のみでなく、日々の体験についてまでデータを蓄積する必要がある。

 集めたデータを分析することで、顧客が生活の中のどの瞬間でどのような体験をしているのかを捉え、CXを高めることができる。顧客の生活を一連のストーリーとして描き、価値を届けるポイントを見定めた結果を、カスタマージャーニーのアウトプットに刻んでいくのである。

 賞味期限が短い傾向にあるデジタルサービスでは、サービスを生活に溶け込ませる「定番化」で賞味期限を長くする手段はあるものの、それだけではCXの緩やかな下降は避けられない。「現状維持=サービスの衰退」と理解し、CXを跳ね上げる施策を投入し続ける必要がある。

 求められるのは、顧客が「あっと驚く」体験である。顧客の期待を超えたサービスを提供し、“さすが!”や“まさか!”といった驚きを引き出せた瞬間をイメージしてもらいたい。顧客の期待を超え、感動を与えるほどのCXを提供できたとき、自社サービスのファンとして支えてくれるコア顧客が生まれるのである。

 賞味期限を長持ちさせる「サービスの定番化」と、感動を与えるほどの「さすがとまさかのCX」。双方を組み合わせていくことが、中長期的に顧客と向き合うためのデジタルサービスの肝である。

図表:「サービスの定番化」と「さすがとまさかのCX」

図表:「さすがとまさかのCX」の具体例

CXを右肩上がりにするサブスクリプションサービスとは

 頻繁に目にするようになったサブスクリプションサービスは、中期的に顧客と向き合う手段として有効だ。ただし、サブスクリプションを「単なる月額定額制」と捉えると、本質を見失うため注意しなければならない。単なる月額定額制の場合、顧客の増加に比例して利益を得ることができるが、マンネリ化とともにCXは減衰し、顧客は離反していく。

 例えばスポーツジムをイメージするとわかりやすい。痩せようと思ってジムに入会したものの、数カ月経っても結果が出ず、そのうち行くのが面倒になって退会してしまう。このような事例は後を絶たないが、これは時間とともにCXが低下していることを意味している。

 デジタル時代におけるサブスクリプションサービスのあり方は、時間とともにCXが上がっていくという考えに基づく。そのためには「さすがとまさかのCX」を提供することだ。定期的にサービスのアップデートや、顧客を喜ばせる仕掛けを盛り込んでいかなければならない。施策を投じればコストが発生するが、顧客からは定額のサービス料しかもらえないため、投資の回収には時間がかかることも認識しておかなくてはならない。

 つまり“真のサブスクリプションサービス”とは、一時的なコスト増によって収益が下がることも覚悟するものなのだ。これを表した図は「フィッシュモデル」と呼ばれており、サブスクリプションサービスにおいて一時的なマイナスを考慮することは欠かせない考え方とされている。

 顧客との関係が続くほど得られるサービス料は増えていく。将来の収益をにらんで、マイナスを覚悟のうえで施策を展開し、CXを右肩上がりにしていくことが重要なポイントとなる。

図表:“真のサブスクリプションサービス”に必要なフィッシュモデルの考え方

感動CXの鍵は「リアルタイム性」と「One to One」のアクション

 感動を与えるほどの「さすがとまさかのCX」を検討するにあたり、顧客の期待に応え続けてきた代表格である「ディズニー」や「リッツ・カールトン」の事例は、今後のデジタルサービスを考えるうえでも大いに参考になる。

【東京ディズニーリゾート】

 夢の国で働くキャストは、一人ひとりがゲストのために自分の判断で行動することを許されている。ゲストの気持ちを察してとった行動には、感動秘話として語り継がれるエピソードが数多い。

図表:東京ディズニーリゾートにおける感動CXの事例

【ザ・リッツ・カールトン】

 一流ホテルであるザ・リッツ・カールトンは、「ミスティーク(神秘性)」と呼ばれるほど、顧客の期待を超えたサービスを提供し続けている。すべてのスタッフが常に携帯している「クレド」カードには、感動サービスにつながる信条が記載されている。特にポイントとなるのは、「最高のパーソナル・サービス」と「願望やニーズをも先読みしておこたえするサービス」という文言だ。デジタルを駆使した現在のCXにも通ずるものである。

図表:ザ・リッツ・カールトンにおける感動CXの事例

 両社の共通点は、「スタッフ一人ひとりが自分の考えで行動する点」、そして「顧客の気持ちを察してサービスを提供している点」だ。感動CXは顧客の瞬間的なニーズに応えることで生まれるため、その瞬間を逃さず顧客に合わせて対応する両社の特徴は、極めて適切だと言える。

 そしてデジタルサービスにおいては、すべての企業が感動CXを提供でき得るという前提がポイントとなる。その瞬間の顧客の期待に応える「リアルタイム性」は、ネットとつながったデジタルサービスであればいつでも実現できる。そして、一人ひとりの多種多様なニーズに応える「One to One」は、顧客個人のデータを収集し、分析していくことで可能となる。

 突き抜けた感動CXは、顧客の心に深く刻まれる。逸話として語り継がれることになれば、企業ブランドの向上まで見込めるのだ。顧客の期待を超えることが真のカスタマーエクスペリエンスであり、その鍵を握るのはデジタルをうまく活用した「リアルタイム性」「One to One」の実現にあると言える。

    

     (「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査 2019年度総集編」株式会社ジャストシステム Marketing Research Camp)

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