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Practice02-2.変革前進の鍵は、熱(パッション)と力(リソース)の化学反応

PracticeDX推進の実用書

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組織の熱量を上げなければ、デジタル変革は進まない。

皆の心に火をつけ、全社一丸となった取り組みにつなげるためのメカニズムが必要だ。

組織内にパッションとリソースの化学反応を起こすためのメカニズムとは、一体どのようなものであろうか。

プロトタイプを目にしたとき、組織の熱量は急上昇す

 笛吹けども踊らず。トップがDXを叫べども、停滞している企業は枚挙に暇がない。そして、それらの企業には共通点がある。危機感だけを煽って、社内を動かそうとしていることだ。

 実際これまで、クライアントからベイカレントに寄せられた相談には、「社員に危機感を与えてほしい」というものが多くあった。

 各部門、各社員にデジタル変革へ本腰を入れてもらうためには、その取り組みを自分事とさせる必要がある。そのため、「今から動き始めないと乗り遅れる」という気持ちを高めるようなセミナーやディスカッションを多数行ってきた。

 しかし、デジタルリテラシーの低い人に危機感を植え付けても、「このままではまずい」という気持ちは高まるものの、自分からデジタル変革をスタートさせることは稀であった。

 もちろん、危機感は重要だ。しかし、暗い見通しだけでは、人は前向きな気持ちにはなりづらい。明るい見通しもセットで実感できないと、人の心に火はつかないのだ。

 では、明るい見通しの象徴とは何だろうか。それは、絵に描いた成長戦略でも、すぐに真似できそうな他社事例でもない。実際に動かせるプロトタイプだ。プロトタイプに触れ、「これは行けるぞ」といった前向きな気持ちが芽生えたとき、経営も現場も熱を帯びる。

 実際に自ら動かして気付くこと、そしてそこから想像を膨らませてみることは極めて重要なのだ。例えるならば、「100ページの資料より一回の体験」なのである。

 ただし、熱に浮かされてはならない。DXで掲げる目的や、当面の目標とずれていないことを、念入りに確認しておくことが不可欠だ。

スジの良いプロトタイプは遊び心から生まれる

 組織の熱量を上げたプロトタイプの共通点を振り返ると、興味深いことに気付かされる。共通していたのは、開発者が楽しんで夢中になっていたこと。つまり、そこに「遊び心」があったことである。

 新しいデジタルテクノロジーを理解する近道は、自分で楽しみながら体験してみることだ。ドローンやVRといったテクノロジーで考えてみるとわかりやすい。既に製品化されているものを、ゲーム感覚で試してみると様々な発見をすることができる。例えばドローンは、扱ったことのない人からすると、「ラジコンと何が違うのか」「操縦が難しくて危険ではないか」といった否定的な意見が出るが、いざ動かしてみるとラジコンよりも機体が安定しており、操縦も至って簡単なことに気付かされる。そして何より夢中になって遊ぶことで、「こんな使い方したら面白そう」という想像力が掻き立てられるのだ。

 夢中になっている人間のパフォーマンスは群を抜く。危機感に煽られ、義務感でやっている人間では到底かなわない。ベイカレントが携わったプロジェクトにおいても、夢中になった開発者たちは、新しいテクノロジーの習得や課題の深掘りも、そして次々変わっていく仕様への対応もいとわなかった。これまでになかった技術で、これまでにできなかったことができるようになっていくことが楽しかったからである。

 ベイカレントのコンサルタントが夢中で作ったプロトタイプも、経営と現場に大きな驚きを与え、皆の心に火をつけた。例えば2016年に行った「ブロックチェーンを活用したC2C売買プラットフォーム」の実証実験では、ブロックチェーンの能力を最大限に引き出すユースケースを模索し続け、非金融領域では希少な事例として取り上げられた。

 当時は世の中に参考となるコーディング実績がほとんど存在しない中、コンサルタントが苦労しながらも独学でつくり上げることができたのは、夢中で取り組んだことの賜物であった。

 こうして作り上げたプロトタイプは、ブロックチェーンの活用意義を十分に感じてもらう結果を生んだのだ。

 スジの良いプロトタイプを生む原動力は、遊び心にある。非日常感から得られるワクワク感を仕事に込めていくことが、これまでのやり方ではできなかったことを可能にしていく。

 原動力である遊び心があれば、その想いはパッションへと昇華していくであろう。

高まった熱量を、変革前進の初速に変える

 プロトタイプによる興奮を一過性のものに終わらせては、事は前に進まない。興奮冷めやらぬうちにプロジェクト化し、実行へつなげなければならない。そのプロジェクトを前進させる鍵は5つある。

  • 1.プロジェクト部隊を既存部門から切り離す
     成功確度のまだ低いプロジェクトを既存部門に抱えさせると、保守的な判断がなされて取り組みが尻すぼみになりかねない。

  各部門から然るべき人を集めて、特別プロジェクトを組成するなどの動きが必要だ。

  • 2.プロジェクトリーダーを突破力のある人材に任せる
     新しい取り組みは、抵抗勢力も多い。良い意味の強引さを持ち合わせた人材でなければ、物事を進めていけない。
  • 3.トップが守り切る
     DXの取り組みは、なかなか結果が出ないことも多い。他部門からの批判にさらされることもある。それを守ってあげられるのは、トップだけだ。本気でDXを成し遂げたいのであれば、トップが腹を括る必要がある。
  • 4.プロジェクト部隊を結果ではなく、前進で評価する
     評価制度は、人の行動を大きく左右する。本気でDXの地平を開拓したいなら、失敗をも評価するぐらいの気構えでなければならない。
  • 5.定期的に道程を振り返り、自信とさらなる挑戦心を呼び起こす
     DXは企業を生まれ変わらせる大きな変革である。当然、途中で挫けそうになることもある。そのときに道程の振り返りが生きる。歩んできた道が、自信とさらなる挑戦心を呼び起こすからだ。

    

 この5つの鍵を揃えたうえで取り組みを推進すれば、挑戦・学び・挑戦…のサイクル、すなわちトライ&ラーンのサイクルが回り出すはずだ。

組織内に熱を広げるパッションとリソースの化学反応

 生まれた熱を変革の大きな渦にしていくには、プロジェクトに閉じず、他部門を巻き込んでトライ&ラーンを進めていくことが重要だ。他部門に熱を伝え、熱が伝導することによって仲間に引き入れていくのだ。

 しかし、多くの場合、これがなかなかうまくいかない。プロジェクトメンバーから他部門へ生まれた熱が伝わりかけるが、ここで熱の広がりが止まってしまう。熱は伝わってもリソースが回ってこないのが常である。他部門で熱を感じた人が、その熱を行動へ変えようにも、現業で手一杯であるため新しい取り組みまで手が回らないからだ。熱だけではなく、リソースが必要なのだ。リソースをいかに捻出するかも重要な論点である。

 そして、このリソースを捻出し得るのも、実はデジタルなのである。ロボットによる自動化や、予測・最適化アプリによる補助などがそれだ。リソースを捻出することと、そのリソースを新しい高付加価値な取り組みに振り向けることは、まさに車の両輪なのである。

 ウォルマートにおいて、プロセスモデルとバリューモデルの改革が同時に行われているのは、その好例だ。店舗・倉庫業務のロボット化や、業務支援アプリを整備する一方、オンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)やインホーム・デリバリー等、顧客への新しい価値を生み出している。

 パッションには人を惹きつけ、仲間に引き入れる吸引力がある。そして、日頃から共創することによってパッションは伝わっていくものだ。しかし、肝心のリソースを調達できないのであれば、「笛吹けども踊らず」の状態から脱却できない。今あなたの組織に足りないのは、パッションなのか、リソースなのか。まずはその見極めから始めてはどうだろうか。

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