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Practice02-1. そこに確固たる目標はあるのか?とりあえずデジタルからの脱却

PracticeDX推進の実用書

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日本企業のデジタル変革は、”とりあえずデジタル”に留まっているケースも多い。

全社一丸となったDXにするには、WhyやWhatを明確にする必要がある。

目指す目標を定め、絶対にたどり着くという意志と、困難を乗り越えるパッションで挑むのだ。

ますます本気度が増す企業のデジタル変革

 すべての企業にとって、デジタルを活用することは必須となり、企業変革に向けた取り組みは一層加速している。現在では、あらゆる業界において、DXに向けた取り組みが始まっている。
 デジタルを駆使すれば、社員のオペレーションを圧倒的に生産性の高いものに変えられる。顧客接点をデジタルで補強していけば、リアルタイムに臨機応変な対応をすることで、新たな価値を提供することができる。
 そのインパクトは計り知れず、積極的な変革に舵を切らなければ、デジタル・ディスラプターによって多くの業界トッププレイヤーがその地位を奪われることになると、危機感を持って伝えられるようになった。

 「競合他社も本腰を入れていない」という声もあるかもしれないが、業界外から攻めてくるデジタル・ディスラプターの存在は脅威以外の何物でもない。代表例としてアマゾンのようなデジタル巨人企業、ウーバーやネットフリックスといったスタートアップが挙げられるが、彼らはいつの間にか業界内に現れ、既存企業を駆逐する。

 ここで注意しなければならないポイントは、ウーバーはタクシーに変わる車を作ったのではなく、スマホアプリをつくったに過ぎないということだ。過去の常識では、タクシー業界を破壊するためには、画期的な車のような大発明が必要だと考えていた人も多いだろう。そのような発明は不可能とは言わないが、時間もカネも要するものだ。しかし、これからのDX時代では、デジタルテクノロジーを駆使すれば時間もカネもかけずに破壊を起こし得る。
 新たな業界に参入する場合でも、デジタルだけなら参入障壁は一気に下がる。これまでのアナログ時代と比べると、参入するためのコストは10分の1、一方で参入プレーヤーの数は10倍に増えているとも言われる。これらの条件を掛け合わせると、デジタル・ディスラプターの脅威は、アナログ時代に比べて100倍のインパクトがあるのだ。モノづくりに絶対の自信を持つ企業であっても、決して対岸の火事ではないと考えた方がよい。

 ベイカレントも2016年にデジタル・イノベーション・ラボを創設し、クライアントとの協議や支援を重ねてきた。その中で、各社の取り組みの本気度が年々増していることを実感している。
 2016年頃はいくつかの先進テクノロジーが話題にはなっていたものの、ほとんどの企業がまだ情報収集の段階にあり、AIやブロックチェーンといった紙面を賑わすテクノロジーについて、「まずは教えてほしい」といった問い合わせが多かった。それが2018年くらいになるとDXという言葉がバズワード化し、「自分達もやらなければまずい」とチャレンジを決意する企業が増え始めた。そして2019年以降は、どの企業でもDXへの取り組みはやるのが当たり前という状態となり、「本気でやるので支援してほしい」といった要望が数多くなってきた。

Howから入ってWhyやWhatが欠落する

 DXへの本気度が増してきたといっても、まだまだ苦悩を続けている企業がほとんどだ。いざDXに取り組もうと意気込んでも、何から手を付けてよいかわからないという状態に陥ることは珍しくない。
 「AIを使って何かやれ」という乱暴な指示を受け、四苦八苦してきたデジタル部門は数多い。「自社には何十年と蓄積してきた宝の山とも言えるデータがある」と語気を強める大企業も、その多くはまだ分析した効果を見込めそうにない。
 手探り状態から抜け出せない最たる理由は、目的を見失っているからだ。ビジネスにおける基本的な話だが、「変革目的(Why)」と「変革項目(What)」があって、初めて「取り組み内容(How)」が明確になる。しかしAIのように、何がすごいのかわかりづらい技術を前にすると、とりあえずやってみようというHowから始めがちだ。そういう“とりあえずデジタル”から脱却しなければ、DXを成し遂げる道筋は見えてこない。
 クライアントから、以下のような声を聞くことも多い。

  • 全社員にデジタル研修を受けさせたい
  • データサイエンティストを100人以上育てたい
  • 新規デジタルビジネスを成功させられるリーダーを育てたい

 
 このような取り組みを本気で進めている企業は多いが、一方でこれらを実現できた後の姿は描けているのだろうか。Howから入り、WhyやWhatが欠落している日本企業が多いのではないだろうか。

 目的から考えないと、効果が見込めない取り組みで終わってしまう。しかし、いきなり壮大な目的を掲げても、どう取り組んでよいかわからなくなる。必要なのは小さくてもよいから目的を見据えた確実な一歩、すなわち、その目的に至るための確固たる目標を定めることだ。大きな目的を意識しながら、「コンプライアンスリスク低減のため、社員の不正メールを検知する」、「生産現場の生産性向上を目指し、機械の故障を予測する」といった、少し背伸びすれば手が届きそうで、実現すれば効果が見込める目標を設定して始めてみることである。DXへの取り組みをうまく進めるうえで非常に重要なデジタルテクノロジーの目利き力を身に着けるには、小さな取り組みから始め、徐々に目利き力を高めていくのが近道だ。確固たる目標へのトライを繰り返す中で、WhyやWhatにも磨きがかかっていくであろう。

 また、成功体験を重ねていくためには、武器になる先進テクノロジーはどんどん活用していくべきだ。R&D組織で先進テクノロジーを1から研究していく取り組みも重要であるが、時間もコストもかかってしまう。世の中で実績が出始めているテクノロジーや、プラットフォームとして提供されているデジタルサービスはうまく活用する。使えるものは何でも試してみることで速いサイクルで成功体験を重ね、より高い目標を掲げることができるようになっていくだろう。

何をどう変革したいのかを明確にする

 確固たる目標を定めてから取り組むと、「どう実行するか(How)」も自ずと意義のあるものになる。想定通りの結果が出れば、目標達成に向けて確実に前進するからだ。そのうえで、自社のビジネスやオペレーションにデジタルを融合(インテグレート)していくと、これまでのアナログなやり方ではできなかったことが実現されていく。先行して取り組んだ企業から着実に結果を出していくことになるだろう。

 例えばデータを活用して、“おもてなし”力を向上したいとする。お客様の属性や行動、接客した際の会話記録など、様々なデータを取得していけば、その方がどんな悩みを抱えているのか、それに対してどのような提案をすればよいのかが見えてくる。今までの勘と経験に頼った接客方法から抜け出せない企業は、あっという間に取り残されることになるだろう。

 モノづくりの現場の生産性を10倍にしたい、というのも良い目標だ。IoTセンサーで大量のデータを取得し、AIで分析していけば、生産効率が高まっていく。機械の故障は事前に検知され、廃棄ロスや歩留まり率は飛躍的に向上していくだろう。いきなり10倍の生産性を実現することは難しいが、着実に結果を出していくことが重要なのだ。

 一つひとつの目標をクリアしていけば、目利き力が上がっていくと述べたが、その結果として徐々に視座も上がっていくのである。その先で、何をどう変革したいのかが明確になり、最終的な目標を掲げることができたとき、企業が数年がかりで目指すDXのゴールが定まっていくであろう。

意志とパッションを持って目標となる山の頂へ

 DXという抜本的な変革のゴールが定まったならば、あとはそこにたどり着くまでのロードマップを策定して突き進んでいく。目指す山の頂は簡単には到達できない高さとなるため、社員が一丸となって企業の総合力を上げていくことが必要となるのだ。

 変革を成し遂げるためには、DXへの取り組みを他人任せにしている部門があってはならない。

 例えば、デジタルの専門組織が実験結果をもとに、「明日からこのオペレーションに変えましょう」と提案しても、「自分達にしかわからないやり方がある」という反発を起こす事業部門も多いだろう。

 新しいビジネスを立ち上げる、オペレーションを再設計するといったときは、主導する事業部門が自分事となって取り組めるか否かが成功の鍵を握る。社内の様々な抵抗にあったとしても、それを乗り越えていくためには、社員がパッションを込めて取り組むことが不可欠だからだ。

 意志とパッションを込められるようになるには、社員がやらされ仕事ではなく、自身のミッションに照らして自分で選んだ仕事につくことが重要だ。

 例えばRPAのようなデジタルテクノロジーを活用すれば、ルーチン作業から解放されていく。そこで生まれた余剰パワーであれば、自分で仕事を選びやすい。社員が自分の幸せのために選んだ仕事は、働くパワーへと変化していくだろう。自分から「もっとこうすべき」という解決策を出せるようになれば、変革のゴールへと近づいていくだろう。

 社員がパッションを込めて働くようになると、顧客の体験価値、すなわちCXも向上していく。企業としては、お客様の期待を超え感動を与えるために、どんなサービスにしていけばよいかを全社一丸となって考え、進化し続けることが重要である。

 そのために必要なのが「パッションを持って仕事に取り組む」という社員の姿勢なのだ。

 最終的にはここで差がつく。デジタルテクノロジーの活用がある程度進んだ先では、社員のパッションをどれだけ引き出せているか、全社一丸となってDXに取り組めているかが、生き残る企業の条件の1つになっていくだろう。

そこに確固たる目標はあるのか?とりあえずデジタルからの脱却

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