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Practice01-3. 日本企業と海外先進企業の距離はどこまで縮まったか?

PracticeDX推進の実用書

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国内にも既に、デジタルインテグレーションの段階に入ろうとする企業が存在する。

日本の主要企業の取り組み状況を分析し、

デジタル変革を果敢に推し進める先進企業の事例に学んでみたい。

デジタルインテグレーションを加速させる日本企業の旗手

 日本企業の多くが、まだDXの入口であるデジタルパッチに留まっているが、一部の先進的な取り組みはデジタルインテグレーションのフェーズに入ってきている。

 日本の主要企業(日経225企業)のデジタル変革の取り組みを俯瞰してみると、2ステップ目のデジタルインテグレーションの取り組みが広がりつつあるのが見て取れる。

 この図表1は、各企業が公表している中期経営計画やアニュアルレポートなどからデジタル関連の取り組みをピックアップし、3ステップのどこまで目指しているかを評価した結果である。

 ベイカレントでは、デジタルインテグレーションをどの日本企業も到達すべき段階であると提唱している。そのデジタルインテグレーション以降をビジョンとして掲げる取り組みは、数にして54件挙げられた。まだまだ全体に占める割合は多くないが、期待通りの効果が得られれば海外先進企業に見劣りしないものばかりだ。日本のデジタル変革の旗手とも言える企業が現れてきた印象を持てる。

 日本の旗手と言える企業の取り組みを見てみると、世界に引けをとらないデジタル変革を着実に推進している姿が見えてくる。前節で取り上げたウォルマート、シーメンス、ナイキと対比させながら、日本の旗手の取り組みを、DXの構成要素に沿って見ていきたい。

ウォルマートとファーストリテイリング

 ウォルマートはリアル小売チェーンのデジタル変革のあり方を示す先駆者としての地位を固めている。一方日本では、ユニクロやGUを傘下に持つファーストリテイリングが、デジタル変革を推し進めている。

 まずは、バリューモデルから見てみよう。

 ウォルマートは新たな買い物体験を具現化させつつある。BOPIS(Buy Online Pickup In Store)を本格化させ、専用アプリで事前に注文しておけば、店に行くまでに商品を取り置きしておいてくれる。加えて、カメラを身に付けた社員が顧客宅の冷蔵庫まで配達するインホーム・デリバリー等、サービスの進化は留まることを知らない。

 一方、ファーストリテイリングは、顧客一人ひとりに合った洋服を提供する新たな買い物体験を提供している。スマートフォンで身体の採寸をするサービス「MySize CAMERA」はディープラーニングで精度を向上させており、全身の推定採寸を行うことができる。

 顧客の洋服選びや着こなしを支援するチャットボット「ユニクロIQ」は、自分が探している商品名のほか、学校行事などの着用シーンを打ち込むと、シャツやパンツを提案してくれる仕組みである。店舗で店員にお薦めされるよりも、気軽でフラットな意見を聞ける点を評価する人が多い。

 顧客の好みに合わせたサイズやデザインの服を10日で届けるサービスも画期的だ。型にはまった商品を大量生産するファストファッション業界において、多彩なバリエーションが魅力のユニクロが個人のカスタムオーダーまで可能とするのは、自社の強み(アセット)を生かした変革だと言える。

 次に、プロセスモデルはどうだろうか。

 ウォルマートでは、店頭における清掃や商品棚観測、バックヤードでの商品仕分けなどをロボットが担う光景が当たり前のものになりつつある。完全デジタル化された店舗も出現している。それを先端技術の研究所であるストアナンバーエイトが支える格好だ。

 対してファーストリテイリングもロボットの活用に積極的だ。AIを搭載したロボットコントローラー「MUJIN」は、多品種・多素材に対応できるピースピッキングロボットであり、この開発が実現すれば倉庫内のほとんどの作業を無人化できるという。

 上述のカスタムオーダーを10日で届けるサービスは、プロセスモデルの変革なくしては成り立たない。

 カスタムオーダーは、企画から生産、物流まですべての情報をシステムで一元管理し抜本的につくり替える「有明プロジェクト」の一環であり、「生産に7日、配送に3日」で顧客へ届けるという。

 両社とも自社のアセットを見極め、それを生かしながら、デジタル変革の取り組みを研ぎ澄ますことに注力おり、がむしゃらにデジタル導入を行う企業とは一線を画している。ロボット活用による無人化構想など、最先端のテクノロジー研究にも傾注している点からも、両者がデジタル先進企業であることに疑いの余地はない。

シーメンスとファナック

 クラウドベースの産業用IoTプラットフォーム「MindSphere」を核に、メーカーのDX全体を支援する企業へと生まれ変わろうとしているシーメンス。対してファナックもIoTプラットフォーム「FIELD system」で、日本発のエコシステムづくりへ挑んでいる。両社の決定的な差はバリューモデルの「ターゲット」と「提供価値」にある。

 シーメンスの「MindSphere」は、工場やプラントなどの多様な機器をターゲットとし、設計・製造プロセス全体におけるIoTプラットフォームのデファクトスタンダードの座をつかんだ。統合開発プラットフォーム「Xcelerator」の提供、メンディックスを始めとした多様な企業買収やSAS等とのサービス提携によるMindSphereのアプリケーション進化など、打ち手を矢継ぎ早に繰り出すシーメンスからその座を奪うのは困難だろう。

 結果、提供価値の面でも、シーメンスは設計・製造全体のDXを支援する立ち位置となったと言えよう。

 一方、ファナックのFIELD systemは、ターゲットを工作機械に絞り、工作機械制御の最適化を徹底的に極める存在となっている。

 ファナックはこの立ち位置の中で、他の日本の旗手達との連携を通じた提供価値、インフラストラクチャ双方の進化に余念がない。クラウド化での富士通・NTTコミュニケーションズ、5G対応での日立・NTTドコモ、アルゴリズム開発でのプリファードネットワークスとの連携だ。国内中心のエコシステムがどう花開くか、工作機械領域でのニッチデファクトとなるのか、ファナックの動きから目が離せない。

 両社の共通点として、単なるプラットフォーマーには留まらないという点が挙げられよう。提携企業をプラットフォーマーとして支えつつ、DXの実現まで共創しようという意志が感じられる。

ナイキとアシックス

 スポーツ用品メーカーであるナイキとアシックスは、モノをつくって売るメーカーから脱却しようとしている。だが、その方向性には違いがある。ナイキがエンターテインメント・カンパニーへと変革を進めているのに対し、アシックスは個人の運動と健康増進にフォーカスしている点が特徴的だ。

 クールなブランドイメージを確立しているナイキは、デジタル活用においても洗練さが際立っている。デジタル実験店における最先端のデジタル体験や、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を彷彿させる自動靴ひも調整のスマートシューズなど、エンターテインメント要素が満載だ。

 一方でアシックスは、ランナーの足の運びの変化をリアルタイムでフィードバックするスマートランニングシューズや、ランニングフォーム分析とAIによるフォーム改善トレーニング提案を行う計測アプリ「ASICS RUNNING ANALYZER」など、個人の運動にフォーカスしたサービスを提供しており、ランナーにとって欠かせない存在となりそうだ。

 また、個人向け健康管理サービス「ASICS HEALTH CARE CHECK」も提供しており、簡単な運動を通じて「脳活」「体力」「歩行」の各年齢を3Dセンサーではじき出し、歩き方やストレッチのトレーニング方法を提案する。

 「モノ売り」から「コト売り」へと変化を強いられるデジタル時代において、両社が目指す「モノ売り」からの脱却戦略は、他業種にとっても大いに参考になりそうだ。

 以上、海外先進企業とともに日本の先進企業の例を3社見てきたが、日本の旗手と言える企業はまだ少ない。DXによる日本企業の競争力強化は、今や国家レベルの課題と言えるのだ。

 日本企業が取り組みを加速させ、その果実を得るために、そして、その取り組みを企業の存在意義である社会・顧客課題の解決へとつなげていくために、次章以降では、その道筋を照らすべくベイカレント流のDXの真髄を提示していきたい。

Baycurrent-Digital_Practice01-3

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