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Practice01-2. 何をどう変革すればよいのか? DXの構成要素と必要なアクション

PracticeDX推進の実用書

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日本企業はデジタルパッチからデジタルインテグレーションへ、一刻も早いステップアップが求められている。

鍵を握るのは、DXの構成要素の理解と、要素ごとに定めるアクションのスジの良さ。

デジタル変革の先進企業の事例を紐解き、DXの構成要素に迫る。

DXの構成要素(WhyとWhat)

 DXとは、「デジタルテクノロジーを活用し、従来のやり方を抜本的に変革すること」と前節で定義した。社会・顧客課題を解決するために、CXとEXをデジタルで進化させ続けることが、抜本的な変革へとつながっていく。そのためには、将来実現したいビジョンとなる変革目的(Why)を明確にすることが、極めて重要だ。

 変革目的が定まったら、変革項目(What)を具現化していく。変革項目は大きく「バリューモデル」、「プロセスモデル」、「インフラストラクチャ」の3つのブロックに分けられ、これらを揃えることでDXに向かう取り組みが構成されていく。

 バリューモデルとは、「どのような顧客へ、いかなる価値を届けるか」を示したものであり、CXを進化させるうえで起点となるものだ。「どのような顧客」がターゲットに当たり、「いかなる価値を届けるか」が提供価値を指す。そして、自社へ価値を還元するためのマネタイズについても、並行して検討することになる。 

 プロセスモデルは、「その価値をどう届けるか」を示す。届け方は生産性に直結するのはもちろんのこと、価値そのものにもつながる。例えば「顧客インタラクション」においては、おもてなしの心を持って顧客にサービスを提供することで価値を感じてもらえるとともに、相互コミュニケーションを通じて、その価値を改善していくこともできる。また、社員のオペレーション改善は生産性を高めるとともに、スピードという価値を顧客に届けていく。

 最後の要素であるインフラストラクチャは、バリューモデルとプロセスモデルを支える基盤となる。変革を実現するためには、社内に旗振り役となるデジタルリーダーが必要だ。そしてDXの心臓ともいえるデータをいかに整備していくかを検討していく。そのデータを調達し、サービスを届ける役割としてのシステムの高度化も欠かせない。

 以上の3つのブロックで整理できる変革項目ごとに、変革目的に向かって「どう変革するか」(How)を決めていく。それが、DXの歩を進めることにつながっていくのだ。

DXを前に進める取り組み例(How)

 変革目的に向かう具体的な取り組み(How)を定めていくための指針として、前節で述べた3ステップの各段階における取り組み例をここで整理しておく。デジタルパッチからDXへ向かって、ステップアップしている様が見て取れるだろう。

 日本企業は、変革の取り組みを前に進め、いち早くデジタルパッチから、既存モデルの構成要素にデジタル融合を図るデジタルインテグレーションへステップアップする必要がある。デジタルインテグレーションの段階に踏み込むことが、最終的に目指すDXへの足掛かりとなるのだ。

 日本企業の多くがこれから挑戦することになるデジタルインテグレーション。その鍵は、アセットとデジタルをせめぎ合わせることにある。自社の強み(アセット)を徹底的に考え抜いた後に、思い切ってデジタルありきの発想に振り切ってみる。この両アプローチの結果、生まれる葛藤。それを乗り越えてこそ、アセットとデジタル双方のポテンシャルを解放できるのだ。

本格化する巨艦企業のデジタル変革

 海外では、GAFAに代表されるデジタル・ディスラプターが躍進するだけでなく、巨艦企業のDXへ向けた取り組みも本格化している。先進的な企業の中には、デジタルインテグレーションの段階で変革すべきことを早々に固めつつあるプレイヤーも現れている。

 例えば、小売業界のリーディングカンパニーであるウォルマート。店舗にデジタルを組み合わせ、アマゾンの脅威に対し、逆襲を始めつつある。

 また、製造業界でデジタル変革のリーディングカンパニーと位置付けられるシーメンス。産業用IoTプラットフォーム「MindSphere」を核に、製造業のデジタル化を牽引する。

 そして、クールで革新的なブランドイメージを持つナイキも、デジタル変革を推し進める、紛れもない先進企業の1つだ。

 3社はあくまで一例だが、世界の巨艦企業はデジタルを活用し、CX・EXの進化を加速させている。

 日本は海外と比較し、デジタル変革で遅れを取っていると言われることが多い。変革に向けて一気呵成に取り組んでいる海外の巨艦企業を見て、そのビジョンと戦略を参考にする手もあるだろう。

 大いに真似をしたうえで、自社の強みを埋め込んでいく。自社ならではのデジタル戦略をつくり上げられたとき、その戦略は彼らに見劣りしないものになっているはずだ。

DXの構成要素で読み解く巨艦企業の変革

 ウォルマート、シーメンス、ナイキは、デジタル変革の先進企業に位置付けられる。DXの構成要素の複数において変革の真っ只中にあり、2ステップ目のデジタルインテグレーションを実現させつつあると言ってよい。デジタルインテグレーションの実像をつかむ意味も込め、3社のDXへの取り組みを紐解いてみる。

<ウォルマート>

 店舗のリソースとデジタルテクノロジーをフル活用した研ぎ澄まされたバリューモデルが際立つ。専用アプリで注文し、指定した時間に店舗で商品を受け取れるオンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)サービスは、店舗の新たな価値として顧客から注目を集めている。

 カメラを身に付けた従業員が、ECで注文された生鮮食品を顧客宅の冷蔵庫まで配達するインホーム・デリバリーも画期的だ。配達時のビデオを確認できる安心感を顧客へ提供しつつ、ウォルマートと顧客の間のラストワンマイルを縮めることに成功している。顧客と密につながることで、家庭内のプライベートデータまで取得できるため、生活者に寄り添った新たな価値を提供できる可能性も広がる。

 プロセスモデルの変革にも余念がない。店舗内では、ロボットがLEDライトと搭載カメラで15分ごとに棚の欠品情報を把握し、サーバへ送信している。社員はロボットからの報告を待って商品を補充すればよく、欠品状況を見て回る作業から解放されている。社員向けアプリ「アスク・サム」で導入されているチャットボットは、アジャイル的に拡充されており、10万人が 6カ月で550万回質問した結果、現場で役立つアプリにまで成長させることができている。

<シーメンス>

 インダストリー4.0に取り組む企業の代表格であるシーメンスは、機械を売るビジネスから、顧客企業の設計・製造プロセス全体のデジタル変革を支援するビジネスへと、バリューモデルの大胆なシフトを進めている。

 自社はまさにその実験場だ。デジタル工場向けの新技術の多くは、ドイツのアンベルク工場(バイエルン州)で最初に試される。工場内のヒトやモノのあらゆる動きをデータ化し、実際の製造に利用して改良を加え、成果を確認したうえで製品・サービス化されているのだ。

 このように、製品のライフサイクル全体をデジタル化する「デジタルエンタープライズ」構想を、シーメンスは強力に推し進めている。

 自社工場での実験から生み出した製品・サービスは当然バリューモデルの進化をもたらす。その価値を顧客へ届け、フィードバックを得る。それをもとに、プロセスモデルをさらに進化させ、さらなる価値向上へつなげていく。そのような好循環を意図的に発生させているのだ。

 それらを支えるインフラストラクチャの軸が、MindSphereだ。製品・製造・パフォーマンスの3つのデジタルツインを構築し、デジタル空間でシミュレーションした結果を、どの工程からも活用できるようにしている。

 シーメンスは製造業の再構築を進めているプラットフォーマーと言えるが、単なるプラットフォームの提供者に留まらないことが重要なポイントだ。MindSphereをベースに世界各国の多様な業界大手と提携し、各社のデジタル活動に寄り添うことで、DXに向けた取り組みを牽引している存在となっている。

 ポルシェの新たな電気自動車をつくる組み立て工場には、驚くべきことにベルトコンベアがない。無人搬送車(AGV)が従来のベルトコンベアの代わりに自動車を運び、その周囲で小型のAGVが部品を運ぶという。この画期的な工場を実現できた背景に、シーメンスのデジタルツインがある。シーメンスは、ポルシェの「街中に変幻自在の新たな工場をつくりたい」という変革目標に寄り添い、ともにシミュレーションを重ねた結果、17カ月という短期間で世界初の工場を実現させた。

<ナイキ>

 スポーツ用品を提供するメーカーから、スポーツを軸としたエンターテインメント・カンパニーへと変革を進めている。

 2018年以降、最新のデジタル体験を提供する実験店を世界各地にオープンさせている(日本では2019年に渋谷で展開)。店内では、商品購入に至るほとんどのプロセスを、店員を介さずアプリ上で完結。そのおかげで、店内の顧客は商品を触ったり試したりする体験に専念することができるのだ。

 また、パワーレース(⾃動靴ひも調整)機能を搭載し、個々⼈にフィットさせることができるスマートシューズ「ナイキ アダプトBB」は、データに基づいて顧客とともに進化していくナイキ流CRM(顧客関係管理)戦略をかたちにしたものだ。バスケットボールの試合中にプレイヤーの足は膨張・収縮するため、最初はフィットしていても徐々にきつくなったり緩んだりする。それを解決するため、プレイヤー個人にカスタマイズしたフィット感を提供するスマートシューズを開発したのだ。

 今後、「Nike Run Club」(ランニングの記録やユーザ間のコミュニケーションを提供するアプリ)との連携を図っていくことで、データに基づいたさらなるCX向上が見込めるだろう。

 3社はいずれも既存モデルからの脱却を見据えているが、口を揃えて変革への取り組みは道半ばだと言っている。このことからも、DXへの取り組みは終わりなき旅であると言うこともできよう。

 これから変革期を迎えようとしている日本企業も、この流れに置き去りにされるわけにはいかない。

 次節では3社の取り組みをさらに深掘りしながら、日本企業との対比を見ていく。

Baycurrent-Digital_Practice01-2

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