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データで見るコロナ禍の状況

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仮説思考で見るCOVID-19の現状

 今年のクリスマス商戦を予想するためには、まずコロナ禍にある世の中の現状をより正確に把握する必要がある。そこで我々は、世の中のデータを集めて分析してみた。分析において注意したのは、「やみくもにデータをかき集めても無駄骨に終わる」という心得。肝心なのは「仮説思考で始め、その仮説を検証するために必要なデータを絞り込んでいく」というやり方を貫くことである。
そこで、我々は大きく2つの観点から仮説を出し、その仮説に合った世の中のデータを集めた。そのうえで、仮説の立証ができるかどうかを追求していくこととした。

一つ目は、「日本人はコロナ禍の自粛生活で、大いにガマンを強いられてきただろう」という観点だ。ゴールデンウィークや夏休みといった、本来は計画的に遊べる機会であっても、今年に限っては旅行などに出掛けられる状況ではなかった。コロナ禍において外出する機会が激減した家庭も多いだろう。そこで我々は、下記の仮説を立ててみた。
仮説①:有給休暇を使えず余っている人が多いのではないか?
仮説②:貯蓄が増えている人が多いのではないか?

二つ目の観点は、「十分にガマンを続けてきた結果、そろそろ元の生活に戻り始めているだろう」というものだ。ガマンを続ければ、いずれは限界がやって来る。事実、閑散としていた歓楽街には人が戻り始めており、貯まった貯蓄をはき出し始めたのではないだろうか? そこで以下の仮説を立ててみた。
仮説③:実は既に、街に繰り出しているのではないか?
仮説④:実は既に、お金を使い始めているのではないか?

図1. コロナ禍の変化に対する仮説
 上記4つの仮説がどれだけ立証されるかを見ていけば、コロナ禍の現状をより正確に把握していくことができる。以降では、これら仮説の具体的な内容と分析した結果をお伝えしていく。

仮説①:有給休暇を使えず余っている人が多いのではないか?

<仮説の具体的内容>
コロナ禍の影響によって、計画的に遊びに行く機会は格段に減った。社会人の多くは有給を取る理由が変化していると予想できる。例えば3密回避のため、社員全員が職場に出社することを避ける企業は増えており、輪番で有給を取得するケースが見受けられる。また、小さいお子さんがいる家庭では、学校が休みになって子供が家にいるため、やむを得ず休暇を取る親世代も増えているようだ。
一方、有給を取らない理由として、「遊びに行く予定が立てられないから」という人は多いだろう。また、体調不良になったとしても、リモートワークなら働けてしまうという判断で有給を取らないケースも増えている。オフィスに行く場合は、職場の人に風邪を移してしまうかもしれないが、在宅であればその心配がないからだ。

<仮説の検証結果>
東京商会リサーチが2020年6月末に実施した『第6回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査』によれば、有効回答約1万4千社のうち、リモートワークを実施していたのは31%。その31%の人に有給取得率の変化についても回答を求めたところ、取得率が減っている人はわずか14.1%という数値に留まっていた。参考データが2020年7月時点のものであるため、まだ変化が表れる前であった可能性はあるが、仮説を立証するデータとは程遠いものであった。
ただし、有給取得率が減った理由を見てみると、最も多いのが「在宅勤務でプライベート時間が増え、有給を取得する理由がなくなった」というものであり、こちらに関しては仮説を裏付ける情報にはなりそうだ。

図2. 有給休暇取得率の変化
出典:東京商会リサーチ『第6回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査』(2020/7/14)
 次に、新幹線を運営するJRグループ各社が発表しているゴールデンウィーク期間(4月24日~5月6日)とお盆期間(8月7日~17日)の乗車率データを見てみると、どの路線もゴールデンウィークは10%未満、お盆でも30%未満であり、旅行などに出掛けた人が激減していたことは明らかであった。たとえ有給を取得したとしても、旅行などの遊び目的で取得した可能性は低く、人々は娯楽をガマンし、大きな出費を控えた可能性が高いと予想できる結果であった。
図3. 2020年ゴールデンウィーク・お盆の新幹線乗車率
出典:鉄道各社発表資料

仮説②:貯蓄が増えている人が多いのではないか?

<仮説の具体的内容>
コロナの影響による不景気が原因で、ボーナス等の収入が減ったという記事は多く見受けられた。しかし収入減よりも、自粛によってお金を使わなくなった額の方が大きい可能性がある。加えて、不安の募る自粛期間中は「いざという時のために貯金しなければ」と考える人も増えたと予測できる。
上記の考えから、コロナによる給料減よりも支出減の方が額としては大きいのではと考えられる。

<仮説の検証結果>
日本経済団体連合会が8月5日に発表した『2020年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果(加重平均)』によると、 18業種153社の平均額は90万1147円で昨年比1万9960円の減額であった。この額を大きいと取るか小さいと取るかは判断に寄るが、ボーナスの使い道がないという検証結果も得られており、やはり例年よりも支出が抑えられている事実が見えてくる。

図4. 夏季賞与平均額の推移と使い道
出典:日本経済団体連合会『2020年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果』(2020/8/5)
株式会社ロイヤリティ マーケティング『第41回 Ponta消費意識調査』(2020/6/24)
 次に、支出の増減についての調査結果だが、総務省『家計調査(2020年9月8日時点)』によると、コロナ禍の2020年3月以降は消費支出が激減しており、逆に預貯金が反比例するかのように増加している。おそらく給付金の影響もあり、収入はむしろ例年より増えていることも判明した。つまり、財布の中身は例年より潤っているということであり、今後は溜まったお金を支出していく動きもあり得ることが分かった。
図5. 2019年からの平均収支推移
出典:総務省『家計調査』(2020/9/8時点)

仮説③:実は既に、街に繰り出しているのではないか?

<仮説の具体的内容>
自粛ムードも冷めつつあり、若者の集まる街や休日にプライベートで行きやすい街から、人が増え始めているのではないかと考えた。「今年のハロウィーンは渋谷に来ないで」と呼びかけたことで、10月31日の渋谷は例年に比べれば平和であったが、予定さえあれば街に繰り出す人は増えていると予想できる。
また、この仮説を置いた背景には、若年層へインタビューした際の気付きがある。「以前はオンライン飲み会をしていたが、最近は無くなった。既に店で飲む機会が増えている」という回答が非常に多かったのだ。飲み会の誘いをほとんど断らなくなったという人が多いことにも驚かされた。以前は「絶対にコロナには感染したくない」と考えていた人も、コロナ禍の生活が続くにつれ、感染リスクはある程度仕方がないという心境に変化したようだ。 「仮に移されるとしたら、親友からなら仕方がない」という意見もあり、“絶対に移されたくない”から“移される相手によっては仕方がない”に考えが変わってきた様子が見られた。
また、オンライン中心の生活を過ごす中で、「デリバリーも良いが、お店で食べたほうが出来立てでおいしく感じる」、「洋服は店舗で試着してから購入したい」、「少しはお出かけしないと精神的につらい」といった、リアルの良さに気付いたというエピソードも多かった。11月の第3波が到来するまでは、Go To トラベルやGo To イートなどの後押しによって「感染対策をしていれば外出は問題ない」という認識が広まっていたことも考えられる。

<仮説の検証結果>
下図は主要な街にどれだけの人が戻ったかをドコモ空間設計が調査した結果であるが、オフィス街と歓楽街では人の戻り方が明らかに違うことがわかった。銀座、新宿、渋谷といったプライベートで遊びに行くことの多い駅は、かなり人が戻ってきていることが判明した。東京、大手町、品川といったオフィス街と言える駅と比べると、約30%の差が発生していた。

図6. 主要駅の人出推移
出典:ドコモ空間統計(2020/5/1~2020/9/27)
 日本フードサービス協会が8月に発表した飲食店の売上を見ても、街に人が戻っている様子が伺えた。どの飲食業態でも6月以降は徐々に売上が回復傾向にあったのだ。もちろん居酒屋/パブは比較的厳しい状況にあるが、ファーストフードやファミレスは前年比100%に近いところまで戻りつつある。
図7. コロナ禍の店内飲食店売上高推移
出典:一般社団法人日本フードサービス協会『外食産業市場動向調査 2020(令和2)年7月度 結果報告』(2020/8/25)

仮説④:実は既に、お金を使い始めているのではないか?

<仮説の具体的内容>
仮説②の貯蓄が増えているという仮説を前提に考えると、コロナ自粛も落ち着き始めた現在、人々の支出は増え始めているのではないかと考えられる。
その使い道として例えば、この機会に家電を買い替えようという行動欲求が考えられる。在宅勤務により自宅で過ごす時間が増えると、より良い「おうち時間」を求めた購買活動が増えている可能性がある。
また、外出が増え始めたことにより、洋服の購入ニーズも高まっていると考えられる。緊急事態宣言が明け、徐々にオフィスワークに戻している会社は多い。巣ごもり中でオシャレから遠ざかっていた人は、溜めていた貯蓄を利用して仕事用の洋服を新調した人も多いのではないだろうか。自粛期間で断捨離をした人が多いことが話題になっていたため、外出解禁に合わせて新たな洋服が必要となった人は多いかもしれない。(参考:「コロナ断捨離」で大混乱、中古衣料のリサイクルが麻痺/朝日新聞GLOBE+)

<仮説の検証結果>
まず、経済産業省の調査から家電の売上データを確認したところ、自粛期間中にも関わらず、5月以降は前年と比べて増加していることが判明した。支出は減っているにもかかわらずだ。やはり仮説で想定した通り、“おうち時間”を大切にした購買が増えているということだろう。5月から急激に増えたことから、給付金を使って家電を購入した可能性も高いだろう。

図8. コロナ禍の大型家電販売店売上げ推移
出典:経済産業省『METI POS小売販売額指標〔ミクロ〕』(2020/9/7時点)
 また、小売全般の売上データで見ても、経済産業省の調査によれば6月以降は前年に近い売上まで回復していることがわかった。やはり洋服を始めとした購買が回復しているということだ。オフィスワークに戻るなど、生活がコロナ前に戻りつつあることの証明と言えるだろう。
図9. 小売業販売額の推移
出典:経済産業省『商業動態統計速報 7月分』(2020/8/31)

分析してみた結果、金が貯まり、ストレスも溜まった人々が多い事実が浮き彫りに

 以上4つの仮説にもとづいて分析してみたが、結果としては、いずれも裏付けと捉えることができるデータが見つかったと言える。この結果から考察できるのは、お金が貯まった人が多くいる一方で、ストレスも溜まっている可能性があるということである。
人々はお金が貯まり、ストレスも溜まっている。このような背景もあって、徐々に街は活気を取り戻しつつあるのだ。これを念頭に置いたうえで今年のクリスマス商戦に狙いを定めると、どのようなサービスが勝ち筋となるのであろうか。次回からは、ビジネスの考え方について触れていきたい。

執筆者 Profile

チーフエバンジェリスト / デジタル・イノベーション・ラボ所属八木 典裕

専門分野
DX戦略、DX人材育成、デジタル部門創設、新規事業立案、デザインシンキング、ブロックチェーン、ドローン

当サイト編集長。大手IT企業を経て現職。
2016年のデジタル・イノベーション・ラボ創設時からデジタルの専門家として活動し、DX関連の様々なプロジェクトを主導。R&Dの調査・研究、DX戦略立案、DX人材育成、新規ビジネス創出などのテーマに携わる。ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』、『 3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』、『データレバレッ ジ経営』(共著/日経 BP 社)、『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)などがある。

マネージャー関口 夏葉

専門分野
BPR、IT戦略策定、新規事業立上げ

慶應義塾大学卒業後、入社。
金融、消費財、産業財、ハイテクなどの業界を中心に、DX、オペレーション改革、システム刷新などのテーマに従事。クライアントと良好な関係を構築し、共創型でプロジェクトを推進することを得意としている。

シニアコンサルタント金澤 佑依

専門分野
デジタルマーケティング、デジタル人材育成

大手小売店を経て現職。
金融、通信、ユーティリティなどの業界を中心に、オペレーション改善や新規事業立案といったデジタル関連テーマに従事。 デジタル・イノベーション・ラボと協力して国内外のデジタル事例調査・研究、ベイカレントのデジタルマーケティングも担当。

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