宇宙ビジネスにおける将来ビジョン
Featruesテーマ別特集


また、国際宇宙探査の共通原則として、持続的、効果的、効率的な国際協働を促進し、全人類に利益をもたらすものとして、参加国は東京原則(図表2)について確認をした。
ビジョンを描ききることが最重要
民間企業が投資を行う場合、なによりも重視するのは、明確な投資対効果だ。しかしながら、宇宙ビジネスにおいては市場やサービスがまだ具体化されていない。その中で、民間企業が宇宙ビジネスに投資を行うためには、何らかのインセンティブが必要となってくる。
例えば、Google Lunar X Prizeでは“一定の投資を行うことで、税制の優遇措置を受けることができる”、あるいは“宇宙を題材にしたテレビ番組や映画において、優先的なスポンサーとなり、その興行収入を受けることができる”等というように、投資企業サイドのメリットがわかりやすく描き出されている。賞金レースとしてのインセンティブの有り様をしっかりと打ち出したGoogle Lunar X Prizeは、上記課題への対応策の成功例と言えるのではないだろうか。
ただし、インセンティブによって引き出される投資はあくまで一過性のものだと考えられる。
政府としては、民間企業の投資を継続的かつ長期的に促進する措置を実行に移し、宇宙産業に対する本気度を見せなくてはならない。例えば、長期購入契約(アンカーテナンシー)や官民連携(PPP)などにより、民間の活力を積極的に活用する取組みが重要となってくる。
一方、企業としては、政府の措置に依存するのではなく、宇宙産業の発展を視野におきながら、自社の研究・開発部門を強化するように取り組まなければならない。過去の取り組みを振り返ると、政府の助成金等の優遇措置が出るという名目で民間企業が参画しても、優遇措置期間が切れるタイミングで民間企業が事業から撤退してしまうことがあった。例えば、再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT)は、その典型ではないだろうか。
それゆえに、政府は企業の本気度を確認できる仕組みを作る必要がある。たとえば、CSBO(Chief Space Business Officer)といった役職を置かせて、責任者を明確にするのも一つの策だ。中途半端な取り組みにならないよう、この役職は経営層でなければならない。
また、CSBOは宇宙事業を本格的に展開していくために、明確なビジョンを描かなければならない。
月、火星におけるビジョン
図1:「ISEF2」Webページよりベイカレント・コンサルティング作成
図2:国際宇宙探査に関する東京原則(仮訳)
図3~5:ベイカレント・コンサルティング作成