では、どのような組み合わせ方が考えられるか。ここからは具体的なユースケースを例にとって考察していきたい。
ユースケース①:テレビの放送時間に合わせた副音声
リアルタイムに価値がある体験のひとつにテレビがある。YouTubeと違って放送時間が決まっているため、多くの人が同じタイミングで視聴する。録画ができるとはいえ、好きな番組はリアルタイムで見ないと、次の日学校で話についていけないと思うような子供も多い。このFOMOの気持ちが、Clubhouseによる副音声が組み合わさることによって、さらに煽られるのではないだろうか。
例えば、2/7に放送された日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」では、副音声の可能性を感じさせる体験ができた。この日は、放送時間に合わせてClubhouseにルームが作られ、番組スタッフによって収録時の苦労話などが語られていた。その中で、出演していたジャニーズのタレントについての話になったのだが、その人となりの良さが言及され、番組スタッフに好かれている様子が伝わったことで、ファンの間では歓喜の話題として広がった。
まさに”リアルタイムにここだけの話”を聞くことによって、ファンは通常のテレビ視聴だけでは得られない体験を得ることができたのである。
副音声の可能性として、他にもスポーツ観戦でのユースケースなどが考えられる。例えば特定の選手にフォーカスした副音声や、初心者のためのルール解説をする副音声などは効果的だろう。ゴルフ中継などがイメージしやすいが、スポーツ観戦の多くは、“全集中”で視聴するものではないので、副音声との相性が良いと言えるだろう。
ユースケース②:自社商品・サービスのファンミーティング
企業は自社の特定商品やサービスについて、Clubhouseでファンミーティングを行うことも効果的だと考えられる。CX(顧客体験)を向上させるためには、コアユーザーとの接点を強化することが重要であるが、ファンミーティングはその良い手段となる。商品誕生の裏話や苦労話を聞くことで、消費者はその商品のことをより好きになるだろう。この双方向性はテレビCMや広告では作り出せない価値である。
また、消費者の声を聞くことで、次なる改善のネタが見つかる可能性もある。実際にClubhouseで、ある老舗酒造店が自社商品について相談するトークを開き、そこで出たアイデアから新商品を誕生させた例もある。
従来の対面でのファンミーティングとは違い、音声のみでどこからでも参加できるので、参加者の裾野を広げることができることもClubhouseの利点となるだろう。
このような”リアルタイムでここだけの話を届ける”をプロデュースすることができれば、顧客のロイヤリティ向上や自社のブランディング向上が見込める。エンタメ企業等であればClubhouseを活用して自社サービスの体験価値向上を図れるし、その他の企業にとってもスポンサーになることでブランディグを向上させるチャンスがある。テレビと連動させるような副音声等のエンタメ的要素は、一般ユーザーではスピーカーのマッチアップ等に限界があるため、企業レベルで番組企画することで差別化が図れるだろう。
以上のようにビジネスチャンスについて考察してきたが、まず企業としては、インフルエンサーのようにClubhouse実際に使ってみて、どのように活用できるかを思考錯誤してみる必要がある。
急速に拡大していく新たな可処分時間を、企業は自社ビジネスに取り込むことができるのか。黎明期の今だからこそ、初動を速めて検討に乗り出した企業から勝機を見出すことができるかもしれない。