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企業目線で考察 Clubhouseビジネス活用の勝ち筋を探る

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留まるところを知らないClubhouseの勢い。企業に活用の道はあるか。

 2021年1月下旬、SNSに敏感なインフルエンサーを中心に、数日の間に一気に話題となったClubhouse。一時期の熱狂ぶりは落ち着いてきており、2/20までは無料アプリランキング1位を継続していたが、ここにきてランキングが落ちてきた。
ただし、米国でも同様に一度落ち込んだが、モデレーターがルームを回す力を身に着け、そのような人がフォロワーを増やしたことでClubhouseの人気が再燃した。日本でも同様の流れを汲む可能性がある。
また、現在はiOSアプリのみであり、Androidアプリも準備が進められていることから、今後もユーザー数を拡大させていくことであろう。

音声版Twitterとも呼ばれているClubhouseだが、“ながら”で聴いていられるため、アプリをずっと立ち上げっぱなしで楽しむユーザーも多い。1ユーザーあたりの1日の利用時間は、Twitterの1.5倍もあるというデータが出ている。今後ユーザー数が拡大していくに連れて、多くの可処分時間がこのサービスに投下されることとなるだろう。

新たな可処分時間が生まれるということは、そこには新たなサービスを投入するビジネスチャンスとなり得るわけだが、果たして企業はClubhouseを活用できる可能性があるのだろうか。
既存のSNSのように効果的な広告を打ちだすことができるか?ECサイトに誘導させるためのプラットフォームとして活用できるか?新たなマーケティングの可能性について、当記事では考察していく。

TwitterやInstagramにないClubhouseの強み

 企業の活用可能性を考えるにあたって、まずは他のサービスにないClubhouseだけが持つ強みは何かを考えていきたい。

Clubhouseは「SNS」と「音声コンテンツ」という二つの要素があるが、「SNS」であればTwitter、Facebook、Instagram、「音声コンテンツ」であれば日本のVoicyなどが代表格となる。これら他サービスと比較してみると、Clubhouseだけの特徴は、”音声のみでログが残らず、リアルタイムで進行する”ということになる。

音声のみでログが残らないということは、”ここだけの話”がしやすくなる。実際にClubhouseのルームには、いわゆる“ぶっちゃけトーク”が展開されているものが多く存在する。”ここだけの話”が多いということは、よりFOMO(fear of missing out:取り残されることへの不安)を煽っているということだ。

一方、リアルタイムであるという特徴は、ユーザーの時間を拘束することになるため、一見ウィークポイントのようにも思われる。しかし、Clubhouseを単体のコンテンツと捉えるのではなく、他のリアルタイムで楽しむ体験と合わせて使うものと捉えれば、付加価値としての使い方が考えられる。
例えば、「テレビを見ながらClubhouseで副音声を楽しむ」といった使い方だ。具体的なユースケースについては後述する。

 このようにClubhouseだけの特徴は、独自の強みとなり得る。しかし逆に、従来のSNSのように広告を表示したり、EC購入まで一気に誘導してしまうパルス消費につなげたりするような使い方は向いていない。

そもそも耳で聴いているだけなので、音声のみの広告になってしまうということもあるが、リアルタイムの視聴を遮って広告を流してしまうと、顧客体験の質を下げることになってしまう。(私もかつて、プロ野球中継の終盤の盛り上がる場面で、CMに切り替わる瞬間は憎らしかった)

また他のSNSと違い、アプリ間の流動性が低く、ECサイト等への動線を確保できないためパルス消費にも向いていないといえる。ユーザーがClubhouseで話を聞いて、ある商品を欲しいと思ったとしても、アプリからECサイトへのリンクが設置できないため、即座に購買行動へ繋げられず、購買意欲が冷めてしまうからだ。

つまり、企業のClubhouse活用の勝ち筋は、従来のSNSマーケティングのような使い方ではないということだ。ポイントは、リアルタイムに価値がある体験と組み合わせる事で、その体験価値を向上させることにあるだろう。

企業の勝ち筋は、リアルタイムに届ける“ここだけの話”をプロデュースすること

 では、どのような組み合わせ方が考えられるか。ここからは具体的なユースケースを例にとって考察していきたい。

ユースケース①:テレビの放送時間に合わせた副音声
リアルタイムに価値がある体験のひとつにテレビがある。YouTubeと違って放送時間が決まっているため、多くの人が同じタイミングで視聴する。録画ができるとはいえ、好きな番組はリアルタイムで見ないと、次の日学校で話についていけないと思うような子供も多い。このFOMOの気持ちが、Clubhouseによる副音声が組み合わさることによって、さらに煽られるのではないだろうか。

例えば、2/7に放送された日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」では、副音声の可能性を感じさせる体験ができた。この日は、放送時間に合わせてClubhouseにルームが作られ、番組スタッフによって収録時の苦労話などが語られていた。その中で、出演していたジャニーズのタレントについての話になったのだが、その人となりの良さが言及され、番組スタッフに好かれている様子が伝わったことで、ファンの間では歓喜の話題として広がった。
まさに”リアルタイムにここだけの話”を聞くことによって、ファンは通常のテレビ視聴だけでは得られない体験を得ることができたのである。

副音声の可能性として、他にもスポーツ観戦でのユースケースなどが考えられる。例えば特定の選手にフォーカスした副音声や、初心者のためのルール解説をする副音声などは効果的だろう。ゴルフ中継などがイメージしやすいが、スポーツ観戦の多くは、“全集中”で視聴するものではないので、副音声との相性が良いと言えるだろう。

ユースケース②:自社商品・サービスのファンミーティング
企業は自社の特定商品やサービスについて、Clubhouseでファンミーティングを行うことも効果的だと考えられる。CX(顧客体験)を向上させるためには、コアユーザーとの接点を強化することが重要であるが、ファンミーティングはその良い手段となる。商品誕生の裏話や苦労話を聞くことで、消費者はその商品のことをより好きになるだろう。この双方向性はテレビCMや広告では作り出せない価値である。

また、消費者の声を聞くことで、次なる改善のネタが見つかる可能性もある。実際にClubhouseで、ある老舗酒造店が自社商品について相談するトークを開き、そこで出たアイデアから新商品を誕生させた例もある。

従来の対面でのファンミーティングとは違い、音声のみでどこからでも参加できるので、参加者の裾野を広げることができることもClubhouseの利点となるだろう。

このような”リアルタイムでここだけの話を届ける”をプロデュースすることができれば、顧客のロイヤリティ向上や自社のブランディング向上が見込める。エンタメ企業等であればClubhouseを活用して自社サービスの体験価値向上を図れるし、その他の企業にとってもスポンサーになることでブランディグを向上させるチャンスがある。テレビと連動させるような副音声等のエンタメ的要素は、一般ユーザーではスピーカーのマッチアップ等に限界があるため、企業レベルで番組企画することで差別化が図れるだろう。

以上のようにビジネスチャンスについて考察してきたが、まず企業としては、インフルエンサーのようにClubhouse実際に使ってみて、どのように活用できるかを思考錯誤してみる必要がある。
急速に拡大していく新たな可処分時間を、企業は自社ビジネスに取り込むことができるのか。黎明期の今だからこそ、初動を速めて検討に乗り出した企業から勝機を見出すことができるかもしれない。

執筆者 Profile

シニアマネージャー/ デジタル・イノベーション・ラボ所属加藤 秀樹

専門分野
顧客体験設計、デザインシンキング、アジャイル

大学卒業後、ベイカレントに入社。
金融・製造業を中心に、DX戦略、CX向上、新規サービス立上げなどの領域で、企画立案から実行支援までの幅広い領域のプロジェクトを支援。
特に顧客体験を起点としたサービス・オペレーション・組織構築を得意とする。

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