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【DXコンサルによる解説】Clubhouseがユーザーを虜にする魅力、それは「部室」のような体験にあった

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Clubhouseを”意識高い系アプリ”と決めつけてはならない

 情報感度の高い人から急速に使われ始めたClubhouse。読者のなかにも、早速利用している方が多いのではなかろうか。

これだけ話題になっているので、試しに利用してみて、すぐにハマった方は多いだろう。しかし、もしかしたら「イマイチ魅力を感じない」という方もおられるかもしれない。
ただ、いずれの場合であっても、今後新たな「Clubhouseで過ごす素敵な体験」が訪れる可能性は高い。その理由と共に、Clubhouseの秘めたる魅力について、この記事ではお伝えしていきたい。

現状、Clubhouseの一般的な使い方は、著名人やインフルエンサーのいるルームに入って、 “話を聴いているだけ”というケースが多いだろう。実際、Clubhouseを紹介する触れ込みでも、「有名人と話せるかもしれない」、「他メディアでは聴けない話が聴ける」とアピールされていることが多い。
この使い方は、Clubhouseがラジオに近い存在であることを意味する。加えて、「リアルタイムである」、「アーカイブされない」という特性によって、FOMO(fear of missing out:取り残されることへの不安)を煽りやすい。ユーザーを上手く刺激することによって、ラジオよりも中毒性のあるサービスとなると言われている。

しかし、「誰かの話を聴く」というユースケースだけでは、Clubhouseが長く使われ続けるサービスとなることは難しいだろう。たしかにClubhouseには「有名人と話せるかもしれない」というチャンスはあるが、ユーザー数が増えるにつれ、その可能性は限りなくゼロに近づいていく。また、「他メディアでは聴けない話」についても、本当に価値ある内容は、自ずと他でも広まっていくものであるからだ。
社会全体で認知され、広く使われ続けるソーシャルメディアとなるには、更なる価値を発揮することが求められる。

それでも、私はClubhouseがLINEやTwitterに並ぶようなソーシャルメディアとなることを信じている。なぜならば、Clubhouseが提供しようとしている体験には、「誰かの話を聴く」というユースケースに留まらず、双方向の会話を楽しめる要素が詰まっているからだ。

Clubhouseの魅力は、学生時代に入り浸った部室に似ている

 App Storeを見ると、Clubhouseは「ソーシャルネットワーキング」にカテゴライズされている。つまり、SNSとしての体験を志向してデザインされたアプリということだ。
上述した「誰かの話を聴いているだけ」という使い方は、確かにClubhouseの大事な側面ではあるが、SNS的とは言えない。Clubhouseが広く普及して、SNSとして使われ始めると、おそらく以下のような体験が生まれていくだろう。
 ポイントは、知り合い同士のコミュニケーションをより活発にさせるということだ。SNSで最も一般的な使い方である「交友関係での利用」が、Clubhouse流のやり方で実現されていく。
Clubhouseアプリを立ち上げてみて、「そこにいる誰かと会話する」という体験は、他のSNSでは味わえない特別感がある。この体験を実現する「安心感」、「ドキドキ感」、「ワイガヤ感」の3要素が、Clubhouseにユニークな価値をもたらすのだ。
「きっと誰かいる」という安心感と、「今は誰がいるだろう?」というドキドキ感が相乗効果となり、そこに集う仲間と共有する時間は会話が弾むきっかけとなるだろう。まるで学生時代に入り浸った部室や、行きつけのバーの扉を開けるときのような感覚に近いものがある。
「誰かの話を聴く」ラジオ的ユースケースに加え、「知り合いとコミュニケーションする」SNS的ユースケースが同居することで、Clubhouseのプラットフォームは真価を発揮する。「知り合い」が誰もいなければ、インフルエンサーのトークルームを開いて楽しめばよい。逆にインフルエンサーの面白い話を聞いている最中に、「知り合い」がログインしてきたら、ルームを作って話し始めてもよい。2種類のユースケースを組み合わせ、ルームを行き来することで、ついClubhouseに”入り浸る”という中毒性をユーザーにもたらしていくこととなる。

つい入り浸ってしまうUI(ユーザーインターフェース)が秀逸

 ずっと入り浸ってしまう体験を実現している所以は、Clubhouseの考えられたUI(ユーザーインタフェース)にある。特に秀逸なのが、「オンライン中かどうか?」、「どのルームに入っているか?」という相互フォローしている人の“現状”が分かる点だ。
これにより、今誰に話しかければ会話できるかが判別可能となる。
 この観点に照らすと、対照的なのがLINEである。LINEの場合は、送ったメッセージが未読か既読かの判別はできるが、友だちが今オンライン中なのか、誰かと電話中なのかといった“現状”まではわからない。
相手の状況がわからないなか、いきなりLINE通話を発信することには、ややハードルが高いと感じる人が多い。少なくとも、相手の状態がわかっているうえで声をかけられるClubhouseの方が、気楽であることは間違いない。

実は過去にも、Clubhouseと同様のUIを持つWebサービスは存在していた。15~20年前にネット住民の間で人気だったメッセンジャーアプリである。例えば、『Yahoo!メッセンジャー』、『MSNメッセンジャー』といったサービスが該当するのだが、これらを懐かしく感じる人もおられるだろう。(もし、久々に使おうと思われた場合は悲報がある。いずれも2014年にサービス終了してしまった)

 メッセンジャーアプリでは、友だちの“現状”がわかり、“今いる人”にすぐチャットや通話で話しかけられた。上述したClubhouseの魅力と類似した体験価値を、まだスマートフォンが普及する前、今ほどSNSが普及していなかった時代から提供できていたのだ。
これはつまり、“現状がわかる”という魅力が恒久的な価値であることを意味している。Clubhouseのもたらす価値が一過性のものではなく、将来に渡ってニーズがあるものと予測できるのだ。

ただ、デバイスの進化に合わせて、ユーザーが求める価値は変化していくということだ。かつてのチャットは、スマートフォンの普及を機に『LINE』へと姿を変えた。そして今、音声デバイスの進化を機に、『Clubhouse』が普及していくことになる。サービスの姿かたちは違えど、恒久的な価値はいつの世も、ユーザーに魅力を提供できる可能性を秘めている。

【よりリアルタイムに】今すぐ人と繋がれるのが、新たなSNSの最大の特徴だ

 「LINEがClubhouseと同じような音声コミュニケーション機能を追加したらどうなるのか?」という質問を受けることがある。LINEとClubhouseの観点の違いについては上述した通りだが、既に社会に浸透したプラットフォーマーであるLINEが、Clubhouseの体験価値も真似してしまえば、よりユーザーを囲い込めるのではないかという意見であった。

しかし、「おそらく難しい」というのが筆者の回答だ。

例えば、もしLINEが「今誰がオンラインか」をわかる機能を追加した場合、おそらくLINEの体験価値は大きく毀損することになるだろう。LINEは、相手の“現状”が分からないがゆえに、「今すぐ返事がくることを過度に期待されない」コミュニケーションツールであるからだ。もし、オンラインであることがわかってしまうと、「返事することを急かされる」非常に息苦しいツールと化してしまうであろう。

ユーザーがLINEに求めている体験と、Clubhouseが提供し始めた”リアルタイム性”にこだわった体験は、似て非なるものである。つまり、これらサービスは、すみ分けられる運命なのだ。
Clubhouseは“よりリアルタイムに”がキーワードとなる。更に、音声でコミュニケーションすることは、人とのつながりがより強く感じられるという効果もある。部室や行きつけのバーにいるかのような魅力を感じられる点が、我々にとって新たなプラットフォーム(居場所)を提供してくれるである。

執筆者 Profile

マネージャー中原 柊

大学卒業後、現職。
メディア、Webサービス、通信、商社、消費財などの業界を中心に、 DXや新規ビジネスの企画・立ち上げなどのテーマに従事。 デジタル・イノベーション・ラボと協力し、デジタル技術やデータを活用するプロジェクトを多数手掛ける。

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