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【DXコンサルによる解説】いよいよ日本にも上陸し、話題沸騰の「Clubhouse」だが、そのポテンシャルはいかに?

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次世代SNS 「Clubhouse」がついに日本に上陸した

 2020年春にアメリカでβ版がリリースされ、シリコンバレーで熱狂的な話題となっていた「Clubhouse」が、ついに2021年1月から日本でも使えるようになり、瞬く間に注目を集めている。まだ話題になって1週間も経っていない1/29の時点で、無料アプリのランキング1位に輝いているほどだ。

参考)無料アプリランキング(1/29時点)

 「Clubhouse」は音声版Twitterとも呼ばれており、音声のみでコミュニケーションを行うのが特徴である。シリコンバレーで最も注目されているサービスと話題になっていたため、我々も最先端デジタルサービスとして注目し、過去の記事でも紹介してきた。
(参照:「外部イベント」で過ごす2020年のクリスマス

ただ、日本ではおそらく、テック界隈の情報感度の高い人から徐々に使い始めるだろうと予想していたのだが、実際はその予想が大きく外れることとなった。SNSに敏感なインフルエンサーを中心に、数日の間に一気に話題となったのは、驚くべきことである。意外にも芸能人や学生などの利用が目立つのも面白い点だ。

多くのユーザーがまだ手探りで試している段階にも関わらず、なぜ日本人にここまで早く受け入れられたのか?そこには音声コミュニケーションの新たな可能性と、「Clubhouse」の人々を惹きつける魅力がありそうだ。ここ数日で一通りの機能を試し、わかってきたことを交えて見解をお伝えしていきたい。

すぐに始められるほどシンプルな「Clubhouse」の機能

 現在はまだβ版の試作段階であるためiOS版しかなく、Androidユーザーは利用できないのだが、それでも「Clubhouse」は圧倒的なスピードで広まり、多くの人が長時間アプリ内に滞在し始めている。そこには、「親指だけで操作できるシンプルなUI(ユーザーインタフェース)」にこだわって設計された使いやすさがある。

誰でもすぐにトークルームを作って会話を始めることができるし、世界中のどのルームにも気軽に入室して視聴することができる。ルームは3種類しかなく、作成する際にいずれかを選ぶというシンプルな仕組みとなっている。

・Open:一般公開。誰でも入室可能
・Social:フォローしている人のみに公開
・Closed:非公開で指定した人のみが参加

 また、ルームの中には3つの役割しか存在しない。

・Modertor:ルームを立ち上げた主催者
・Speaker:話す人
・Audience:聴くだけの人

他の人が作ったルームに参加した時点では発言権のないAudienceだが、Moderatorから招待を受けると、Speakerとなって発言するか選べるようになる。Speakerになる場合は、画面に表示された「Join as speaker」をタップするだけだ。また、一旦Speakerになったとしても、「Move to audience」をタップするだけで再びAudienceに戻ることもできる。

 つまり、知り合いのいないルームに入って、いきなり発言を求められるといった心配はいらないため、思い切って飛び込んでみようという気持ちにもなりやすい。ルームから退出する時も、タップ一つで黙って去れば良いため、極めてシンプルである。
気遣いが不要な仕組みで構成されている点は、SNSに慣れ親しんだ多くのユーザーに指示されやすいであろう。

耳型ウェアラブルデバイスが生活に浸透してきたことが大きな引き金に

 「Clubhouse」がここまで熱狂的な話題となっているのは、アプリが優れているという点だけではなく、音声版SNSが注目されている背景もある。注目されている理由の一つが、耳型ウェアラブルデバイスのニーズが増していることだ。ワイヤレスイヤホン市場で圧倒的なシェアを誇るApple社の「AirPods」は、特にユーザー満足度が高い製品として有名だが、その圧倒的な快適さで24時間つけっ放しでも気にならないという若者が増えている。「常にイヤホンから何かを聞いている」という生活習慣が生まれているというのは、驚くべき事実だ。

また、Bose社から発売されている「Bose Frames」も画期的な製品である。サングラスとスピーカーが一体になっているため、イヤホンのような耳につけている感触が無いのが特徴だ。サングラスのレンズを透明のものに交換してしまえば、普通のメガネとして使えるため、仕事中にかけていても違和感がなくなる。“お堅い職場”であっても、こっそり音楽を楽しみながら働くことすら出来てしまう。

仕事中にかけていても大丈夫という意味では、耳をふさがずに使用できることが魅力の「骨伝導イヤホン」も注目される。頭蓋骨の振動を通して脳に直接音を届けるため、耳をふさぐことがなく、会話が聞こえにくいというイヤホンのデメリットを解消することができる。

 常につけっ放しでも快適なデバイスが登場したことによって、耳型ウェアラブルデバイスは生活に浸透し始めている。仕事をしている時や、移動している時など、“ながら”で何かを聞いていることが多くなった。それと共に、「バックグラウンドでずっと聞いていられる」サービスは徐々にニーズが増えている。このような背景があり、音声版SNSは自ずと求められるようになったのだろう。

また音声版SNSは、リアルタイムで現実社会とつながっていられるという価値も持っている。テレビや新聞などのオールドメディアと、SNSを中心としたニューメディアの決定的な違いは、「お互いにつながることができる」という点であるが、音声版SNSになるとリアルタイムに会話をすることができるので、更に直接的なコミュニケーションが可能になると言えるのだ。

コロナ禍で自粛が続くなか、リモートワークであれば音声デバイスをつけっ放しでも、誰にも文句を言われない。この状況も追い風となって、音をテーマにしたサービスは今後の大注目市場と言えるのであり、先陣を切って登場した「Clubhouse」は、その期待を一手に担う存在となっているのだ。

完全招待制という希少性も話題に拍車をかけている

 Clubhouseは現在、完全招待制となっているため、利用するためには他のユーザーに招待してもらうしかない。しかも、基本的に招待できるのは1ユーザーにつき2人までと限定されているため、その希少性がブランド価値を高める効果にもつながっているようだ。(厳密には、利用を続けていると、招待枠が追加される仕組みではある)
なお、招待されていない人がアプリを導入した場合は、下の画像のような状態となる。

参考)招待されていない人がアプリを導入した画面

たった2人しか招待できない限定ルールであれば、ユーザーがなかなか増えていかない懸念もありそうだが、実際にはそんなことはなく、しっかり芋づる式にユーザーが拡散していく仕組みになっているようだ。

例えば仮に、招待できる2枠のうち1枠は、自分が最も頻繁に話すコミュニティの中で誰か一人を選ぶとする。すると、そこからリレー方式でコミュニティの内の招待ループが生まれるだろう。
そして残ったもう1枠は、会社の同僚や時々会う友人などに使えば、また別のコミュニティ内で招待ループが生まれていく。これを繰り返すことでユーザーが拡散していくというわけだ。

 たった2枠しかないため、「使い切ってしまうのはもったいない」という精神が働くかもしれないが、知人から「枠が余っていたら招待してください」と直接頼まれると断りづらいのも実情だ。おそらくは、この限定ルールの中でも、指数関数的にユーザーは増えていくのではないだろうか。

「Clubhouse」は新たな巨大市場を生み出す魔法の杖か?

 TwitterやInstagramのような既存SNSは、確実に目を奪われるため、“ながら”で利用するには限界があった。しかし、耳だけを貸せば良い「Clubhouse」の場合は、“ながら”での利用に適しているため、何時間でも使っていられる。この点が何よりのストロングポイントであろう。
ただでさえスマホの利用時間は年々増えており、なかでもSNSの利用時間は平均1時間を超えるほど利用されている現状にある。暇さえあればSNSを見るという人が確実に増えているわけだが、この傾向が「Clubhouse」によって更に加速することは間違いない。

「Clubhouse」が先陣を切った音声SNSによって、今後恐ろしいほどの可処分時間が消費されていくことが予感される。
この膨大な時間をマネタイズすることに繋げられれば、一大市場が形成されていくだろう。ただ、広告費で稼ごうにも、企業側としてはどう広告を入れ込むべきか検討が必要になりそうだ。耳で聴いているだけなので、他のSNSのような視覚的に訴える広告は打てない。また、Youtube方式でルーム内の視聴を遮って広告を流すことも難しい。 「Clubhouse」はリアルタイムで視聴するものであるため、広告によって大事なポイントを聞き逃すとクレームを引き起こしかねないからだ。

 なお、「Clubhouse」の発信内容を見ると、マネタイズ方法に関しては、現状一般ユーザーからの課金のみ言及しているようだ。チップ、チケット、サブスクリプションといった方法で、会話の主催者に支払いができる機能を開始するといった旨が記載されている。
「Over the next few months, we plan to launch our first tests to allow creators to get paid directly—through features like tipping, tickets or subscriptions.」

(参照:https://joinclubhouse.com/welcoming-more-voices

華々しいスタートを切った「Clubhouse」だが、新たな市場を独占できるかは未知数である。競合である既存SNSが同じような機能を始めてしまうということも十分に想定されるからだ。
そこでポイントとなるのは、「Clubhouse」が音声SNSとしてのポテンシャルを上手く引き出すことができるかどうかであろう。現在は「リアルタイムなのでずっと聴いてしまう」、「自分も会話に参加できてしまう」、「ログが残らないから思い切った発言ができる」といった特徴が目立つが、いかにユーザーを惹きつけ続けるサービスとなっていくか、しばらく注視しながら使ってみたい。
 また、日本での使われ方がどうなっていくかも大きな論点だ。今後、海外と同じような使われ方となっていくのか、はたまた日本の文化に合わせたガラパゴス化が進むのか、さっそく日本では、フォロワーを増やすことだけが目的の「無言部屋」が乱発し始めている。特殊な使い方の先に、どんな変化が待ち受けているのか、こちらも注視していきたい。

執筆者 Profile

チーフエバンジェリスト / デジタル・イノベーション・ラボ所属八木 典裕

専門分野
DX戦略、DX人材育成、デジタル部門創設、新規事業立案、デザインシンキング、ブロックチェーン、ドローン

当サイト編集長。大手IT企業を経て現職。
2016年のデジタル・イノベーション・ラボ創設時からデジタルの専門家として活動し、DX関連の様々なプロジェクトを主導。R&Dの調査・研究、DX戦略立案、DX人材育成、新規ビジネス創出などのテーマに携わる。ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』、『 3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』、『データレバレッ ジ経営』(共著/日経 BP 社)、『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)などがある。

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