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スーパーシティとは何か?スマートシティとの違いから読み取れる日本の未来

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なぜスーパーシティ構想は発案されたのか?

 スマートシティの取り組みは世界的にも急速に進展しているが、生活全般をスマート化した「まるごと未来都市*」は未だ実現できていない。そこで世界に先駆けて、日本型の最先端スマートシティを実現するために「スーパーシティ構想」は発案された。

 この“スーパーシティ”という用語は日本独自の言葉であるが、何もスマートシティを否定するために作られたのではなく、おそらくスマートシティを急ピッチに進めていこうという想いが込められたものである。

   

 ※まるごと未来都市とは、以下の条件を満たすものを指す

  ・エネルギーや交通などの個別分野にとどまらず、生活全般にわたるもの

  ・最先端技術の実証を一時的に行うのではなく、暮らしに実装するもの

  ・技術開発側や供給側の目線ではなく、住民目線で未来社会を前倒して実現すること

スーパーシティ法案が成立していくまでの流れ

1.世界でスマートシティの取り組みが始まる

 地球温暖化・エネルギー問題、人口増加による都市問題を克服するという観点、更にはスマートシティ関連事業に対する成長可能性への期待により、スマートシティが2010年前後から注目されるようになった。スマートシティではエネルギーをはじめとして、特定分野を対象とした「個別分野特化型」の手法を用いて成立した取り組みが多く行われてきた。

  

2. 国家戦略特区法が制定

 規制改革による地域活性化の施策の一つとして、国家戦略特区法が2013年に制定された。「①規制改革の実験場として突破口を開くこと」、「②世界で一番ビジネスをしやすい環境を作ること」を目的としており、地域や分野を限定することで大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度である。この法案成立によってスマートシティを推進しやすくなったと考えられる。

  

3. 日本で「スーパーシティ構想」が成立

 スマートシティをより迅速・包括的に推進するためにスーパーシティ構想が生まれた。内閣府が提唱する構想であり、生活全般にまたがる「複数分野の先端的サービスの提供」、「複数分野間でのデータ連携」、「大胆な規制改革」を3本柱とし、2030年頃に実現される未来の生活の先行実現をめざす取り組みである。

  

4. スーパーシティ法案成立(改正国家戦略特区法の成立)

 スーパーシティ構想を推進する為には複数のサービス間でデータを収集・整理・提供するデータ連携基盤が必要となる。そこで2020年5月27日に国家戦略特区法を改正。この法改正によって、従来の国家戦略特区制度を基礎としつつ、より迅速・柔軟に域内独自で規制特例を設定できるようになった。具体的にいうと、データ連携基盤の整備事業を法定化し、事業主体が国や自治体などに保有データの提供を求めることができるようになったのだ。

スマートシティとスーパーシティの違いを定義から読み解く

 スーパーシティは後から日本独自の言葉として生まれたわけだが、スマートシティとの違いをより明確に知るためには、両者の定義から整理していく必要がある。

 まずはスマートシティの定義だが、内閣府の資料によると「ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場である」と記載されている。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/20201029/pdf/shiryou1.pdf

   

 一方、スーパーシティについては正式な定義は記載されていないが、内閣府地方創生推進事務局の資料には「住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す」と記されており、そのために以下3点をポイントとしている。(https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf

   

1.生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供:AIやビッグデータなど先端技術を活用し、行政手続、移動、医療、教育など幅広い分野で利便性を向上

2.複数分野間でのデータ連携:複数分野の先端的サービス実現のため、「データ連携基盤」を通じて、様々なデータを連携・共有

3.大胆な規制改革:先端的サービスを実現するための規制改革を同時・一体的・包括的に推進

  

 内閣府の記載を見ても類義語のように見えてしまうが、違いとして言えるのは、スーパーシティはより踏み込んだ内容になっているということだろう。「住民が参画し、住民目線で」という言葉が入っていることから、より住民主導を強調したいという意図が見える。

 またデータ連携基盤をより意識していることも特徴だ。個別の分野でデータを蓄積しても、できることには限りがあるため、より包括的に都市のデータを蓄積していく必要がある。そのためには規制に囚われない特例を設ける必要があり、国家戦略特区法の改正を行ったということだろう。

スーパーシティの背景や定義から見えてきた、その大きな特徴とは?

 スーパーシティ構想が成立されてきた経緯や、スマートシティとの定義の違いから読み解いていくと、「スマートシティとスーパーシティの違い」が整理できてきた。簡単に言うと、スーパーシティは日本独自の言葉であり、スマートシティよりも思い切って推進できるものである。これをもう少し詳細に説明すると以下のようになる。

   

スーパーシティは日本独自の言葉である

 “スーパーシティ”は世界最先端の丸ごと未来都市を作るために誕生した言葉であるが、このように日本独自で作った言葉は他にもある。例えば、スマートシティの定義にも出てきた“Society5.0”であるが、こちらはドイツ発祥のindustry4.0を参考として日本独自に提唱された言葉である。

 Socirty5.0とはサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会であると定義されている。(もう少し説明すると狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱された言葉である。)そしてSociety 5.0では2050年頃の社会が“あるべき姿 ”とされており、そこに向けて2030年を目途に具体化していくのが1つの目標となる。スーパーシティは2030年頃に実現させることを目指しているため、「Society5.0をより確実に実現するためにスーパーシティ構想を打ち出した」という考え方もできるのだ。

   

 このように日本独自の言葉である“スーパーシティ”と“Society5.0”の共通点から考えてみると、大いなる未来に向かって日本が国をあげて一丸となって取り組む必要があるとき、あえて日本独自の言葉を作って提唱しているということだ。

   

スーパーシティ実現のために国家戦略特別区域法が改正された

 改正国家戦略特区法では、下記3点の特別な手続を整備することで複数分野の規制改革を同時に実現できるようになった。先端的なサービスの開発・実現をサポートすることができるため、これまでのスマートシティの取り組みでは難しかったことも推進できるようになる。

   

A.内閣府令で定めるところにより(住民合意を証する書面、必要に応じ条例による規制改革の案を添付)、規制の特例措置の整備を「求め」ることができる

B.内閣総理大臣は、当該規制の所管大臣に規制の特例措置の検討を要請する。規制所管大臣は、特例措置を講ずるか否かについて、特区諮問会議の意見を聴いた上で、遅滞なく通知・公表する

C.特区諮問会議は規制所管大臣に対し勧告することができる

( 太字部分を抜粋:https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf

より強力に推進できる”スーパーシティ”がもたらす日本型デジタル社会の夜明け

 改めてまとめると、“スーパーシティ”はスマートシティをより強力に推進するために作られた日本独自の言葉であり、これまで日本で行われてきたスマートシティの取り組みをより加速させていくことが期待されるものだ。つまり、この2つの言葉は相対するものではなく、概念的にはスマートシティの中にスーパーシティがあるという整理がしっくりくる。そしてスーパーシティを強力に推進することによって、スマートシティの取り組みにも波及効果があるものなのだ。

 国家戦略特区法の改正によって、これまで規制されてきた様々なデータの収集が可能になり、迅速・包括的に都市のデジタル化を進めることができるようになった。ただし、データの収集が可能になるということは、より個人情報の取り扱いについて注意が必要となる。個人情報を保護する仕組みをしっかりと整備しつつ、スーパーシティの取り組みを一気に進め、世界に誇れるモデルを創り上げてほしいところである。

 “スーパーシティ”は政府が覚悟を持って取り組んでいるものであり、日本型デジタル社会が一気に実現されていくことが期待される。そしてこの先、国民全体を巻き込んで「丸ごと未来都市」を実現していく役割は、これから立ち上がるデジタル庁が担うことになるはずだ。現状はまだ、デジタル庁が見据える取り組みは、行政のオペレーションを変革する「守りのデジタル化」に関するものが多い様相だが、最先端の未来都市を創っていく「攻めのデジタル化」についても、自治体を強力に推進する役割を担っていくと良いだろう。

執筆者 Profile

デジタルマーケティング / デジタル・イノベーション・ラボ所属遠藤 理沙

専門分野
デジタルマーケテング、BPR

メガバンクを経て現職。
金融、通信業界を中心に、業務プロセス改善や大規模システム開発におけるUATなどのテーマに携わる。
現在はデジタル・イノベーション・ラボに所属し、デジタルサイト編集やSNSマーケティングといったデジタルマーケティング施策に従事。

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