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今年のGWの自粛具合はどうだったのか?一部地域では去年の3倍以上の人手も見られたが

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GWの街は人であふれていた? 去年と今年で比較してみると意外な事実が見えてきた

 令和3年4月25日に3回目となる緊急事態宣言が出され、今年も自粛ムードのなかで迎えたGWであったが、各種メディアでの報道は厳しく、人々の気のゆるみが指摘されていた。東京都の主要エリアのなかには、去年と比べて3倍以上もの人の動きが見られたとのことであったが、実際はどれほど“ダメ”だったのだろうか?
緊急事態宣言は果たして、人々の“足を止める”効果はあったのだろうか?

その答えを探るべく、ドコモ社が公開しているモバイル空間統計のデータをもとに主要エリアの人の動きを考察してみた。去年と今年のGWを比較し、コロナ前の2019年に対してどれほど人の動きが戻ったのかを整理したので、解説していく。
 ※2019年の人の動きに対する割合(前年同月比)をもとに分析
※2019年から2021年まで、3年間全て休日・祝日であった5月2日から5月5日を対象

考察1-1:緊急事態宣言のなか、GWを迎えた東京都、京都府、大阪府、兵庫県
まずは東京都の主要エリアを整理してみたのが図1である。どのエリアも2021年は人手が増えているが、羽田空港に至っては去年の3倍を超える日もあったようだ。ただ空港を除いては、多くても去年の2倍程度、コロナ前の2019年に比べると50%程度にはおさまっていることがわかった。
 では次に、東京都と同様に緊急事態宣言のなかでGWを迎えた大阪府、京都府、兵庫県のデータを見てみよう。図2を見てみると、ほとんどのエリアが去年に近い数値でおさえられており、東京都よりも自粛の傾向が強かったことがわかる。4月から大阪府の感染拡大が問題となっていたため、人々の努力が顕著に表れたのではないだろうか。ただし、こちらも空港だけは例外で、比較的多くの人が動いたことがわかる。
 これら主要エリアのグラフをもとに考察すると、「緊急事態宣言下にある都市から地方に移動した人が多かった」ことが予想できるだろう。
考察1-2:まん延防止等重点措置でGWを迎えた各都市
次の考察は、“まん防”(まん延防止等重点措置)の対象としてGWを迎えた都市である。
図3は、4月から“まん防”の対象となった沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛媛県である。この5県はGWが終わった後も“まん防”が継続しており、感染者数が減っていない状況にある。果たしてGW中には自粛の傾向は見られたのであろうか?

まず沖縄に関して見てみると、やはり「那覇空港」の人の多さが目立つ。おそらく観光で沖縄に訪れた人が多かったのであろう。一方、「国際通り」は昨年とあまり変わらない少なさであったが、こちらは国際通りの店舗が閉鎖されていたからだと予想できる。
次に関東圏の埼玉県、千葉県、神奈川県を見てみると、総じて昨年よりも多くの人が動いていることがわかる。“まん防”の対象であったのだが、自粛の意識は少なかったことが懸念される。特に神奈川県の「横浜駅」と「みなとみらい」は昨年とのギャップが大きく、非常に多くの人で賑わっていた様子がうかがえる。
最後に愛媛県だが、こちらは関東圏とは対照的に昨年とほぼ変わらない数値であった。“まん防”が効果的だったという見かたもできるが、去年も今年も自粛の度合いは変わらなかったと見る方が自然だろう。

 以上、“まん防”エリアからの考察でわかったことは2つある。1つ目は、やはり飛行機を使って観光に行った人が多かったということ。そして2つ目は、首都圏の“まん防”は人の動きを止める効果が見られなかったということだ。
考察1-3:GW後に緊急事態宣言が出された都市
最後は、GW後にステージ4となり、追加で緊急事態宣言が出された都市である。GW中は宣言が出されていなかったために、人々に気の緩みがあったかもしれないという仮説をもとに確認していく。

まず感染拡大が報道されていた愛知県、福岡県、北海道に関しては、昨年より多くの人が溢れていたことがわかる。そしてここでも、福岡空港と新千歳空港の人の多さは目立つ。
岡山県と広島県についても、ある程度の人の多さが見て取れた。すぐ東の緊急事態宣言にあった京都府、大阪府、兵庫県と比べると、自粛ムードはあまりなかったのかもしれない。

 ここでの考察でも、やはり空港は例に漏れず人の動きが増えていたことがわかった。また主要エリアは概ね昨年よりも多くの人が動いていたことがわかる。
やはり今年のGWは気が緩んでいたのだろうか?人々は遊びたい欲求を“ガマン”できずに街へと繰り出してしまったのだろうか?この仮説に結論を出す前に、もう一つの切り口での分析結果をご覧いただきたい。

GWだけでなく1年間の推移で見てみると、新たな仮説が浮かび上がってきた

 2020年4月7日に最初の緊急事態宣言が発表されてから、これまで計三回の緊急事態宣言に加え、まん延防止等重点措置の対応が取られてきた。しかし、徐々に自粛の緊張感は薄れてきているようにも感じられる。これが世論の反応だ。
最初の緊急事態宣言では自粛を促す効果があったものの、三回目となる今回はどれほどの効果が出ているのだろうか。上述したように去年のGWと比べると、たしかに今年のGWは人の動きが増えていた。しかし、今年のGWもなるべく家で過ごしたという人が大半であったとも思われる。

そこで次は、これまで1年間の推移で人の動きを並べ、どのように増減してきたかを分析していく。

考察2-1:緊急事態宣言でGWを迎えた各都市
まずは緊急事態宣言が出されていた東京都、京都府、大阪府、兵庫県の主要エリアをピックアップした考察だ。図5は1年間の人口推移をグラフにしたものだが、各エリアにおける2020年4月30日の人の動きを100とした時に、そこから日々どのように増減していったかを表したものである。

17エリアを載せているので複雑なグラフにはなっているが、全体を俯瞰して見ていただくと何となく傾向が見えてくるのではないだろうか?まず昨年の5月以降、徐々に街に行く人が増えていることがわかる。若干だが100を下回る数値を示す都市が見えているが、ほとんどが「週末のオフィス街」であるため、自粛影響とは言い難い。
そして特筆すべきは緊急事態宣言の効果だ。2回目の緊急事態宣言にあたる2021年1月8日から3月7日までを見ると、人の動きが抑制されていたことがわかる。また3回目の2021年4月25日以降も、明らかに人の動きが止まっている。程度の差はあれ、人々の自粛の努力は垣間見える。

この17エリアのうち、歓楽街とオフィス街のみをピックアップすると、また違った気付きを得られるため、後述しているグラフでご確認いただきたい。

 図6が歓楽街のグラフであるが、やはり街に人が増えている様子が一目でわかる。唯一、少ない数値を示しているのが銀座であるが、これは百貨店等の店舗が軒並み閉まっていたためと予想できる。
 そして図7がオフィス街をピックアップしたものである。こちらは1年を通して安定的に人の動きが抑えられていることがわかる。今年のGWも顕著に数値が下がっており、自粛の効果があったといえるだろう。
考察2-2:GW後に緊急事態宣言が出された都市
次の考察は、GW後に緊急事態宣言が出された都市である。感染拡大した背景として、GWあたりに人の動きが増えていた可能性があるが、実際はどうだったのかを見ていきたい。

図8がその結果であるが、総じて1年を通して人の動きが激しくなかったといえるだろう。また今年のGWもなだらかに人の動きが減っており、このグラフからは感染拡大につながるような兆候は見られなかった。
つまり、地方都市は緊急事態宣言が出されるかどうかに関わらず、人の動きを抑えられるということだ。ということは、GW後に緊急事態宣言の対象となった都市は、果たして更なる自粛を期待できるのだろうかと疑問に感じてしまう。これらの都市の動きには今後も注目していきたい。

考察2-3:主要エリアの空港
最後の考察は空港のみをピックアップしたものである。上述したように今年のGWは、多くの人が飛行機を使って地方に移動した様子が伺えた。昨年から飛行機の乗車率は激減していたはずだが、空港に訪れる人の動きはどのように変遷してきたのだろうか。

図9のグラフを見ると、明らかに今年のGWは人の動きが増えていたことがわかる。緊急事態宣言が出されている都心では自粛の傾向が見られた反面、自粛から逃れるかのように飛行機で地方へ飛んだ人が一定数はいたということだろう。

分析してみると、メディアで報道されているほどヒドイ結果ではなかった

 「去年と今年のGW比較」、「1年間を通しての人口増減」の2つの切り口で分析してみたが、判明したことをまとめると以下のようになる。

  • 今年のGWは総じて、去年のGWよりも人の動きが増えていた
  • ただし1年間を通して人の動きを考察してみると、今年のGWも自粛していた傾向は伺えた
  • 緊急事態宣言が出されていた都市は自粛の傾向が見られた
    - 東京都の歓楽街はある程度の増加が見られたが、オフィス街は減少していた
    - 4月から感染拡大が問題視されていた大阪府と、隣接する京都府・兵庫県は、特に人の動きが抑えられていた
  • 一方、まん延防止等重点措置が出された都市は、自粛の効果は希薄であった
    - 特に神奈川県の横浜駅やみなとみらいは顕著に人が増えていた
    - その他の都市も、“まん防”の効果があったとは言い難い
  • 空港に関してはGW前よりも明らかに人が動いており、都心から観光地に移動した人が多かったことがわかった

メディアの報道では、GWは人々の気が緩み、街に人が増えていることを懸念するような内容が多かったが、単純に鵜呑みにしてはいけないということはいえるだろう。データで見ると「自粛していた都市」と「気が緩んでいた都市」が如実にわかれていることは発見であった。やはりデータが示す事実に従い、仮説を立証していくプロセスは重要であり、そこから気付きを得られる可能性は高い。

最後に、今回の分析対象となった各都市(緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出された都市)について、考察の結果を図10にまとめているので、参考にしていただければ幸いである。

執筆者 Profile

チーフエバンジェリスト / デジタル・イノベーション・ラボ所属八木 典裕

専門分野
DX戦略、DX人材育成、デジタル部門創設、新規事業立案、デザインシンキング、ブロックチェーン、ドローン

当サイト編集長。大手IT企業を経て現職。
2016年のデジタル・イノベーション・ラボ創設時からデジタルの専門家として活動し、DX関連の様々なプロジェクトを主導。R&Dの調査・研究、DX戦略立案、DX人材育成、新規ビジネス創出などのテーマに携わる。ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』、『 3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』、『データレバレッ ジ経営』(共著/日経 BP 社)、『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)などがある。

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