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コロナ禍で見えたデジタルの強みを見逃すな

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コロナ禍における働き方の変化

1カ月以上続いた緊急事態宣言の中で、多くの方が在宅勤務を経験されたと思う。当初は「リモートワークでは効率が悪くて仕事が回らない」、「自分の業務はオンライン環境では到底出来ない」と考えていた方も多かったはずだ。しかし、難しいと思われていた業務でも、意外とオンライン環境で出来ると気づく場面があったのではないだろうか。コロナ以前から多くの企業がリモートワークにチャレンジし、既にその土台ができていたため、「なんとか業務を継続できる」状態に押し上げたということも言えるだろう。
しかし、せっかく構築できたリモートワーク環境を、これまでのオフラインと同様のパフォーマンスを出す目的に留めるのはもったいない。コロナ禍において体験できたオンラインのメリットを見極め、アフターコロナにおける新たな働き方やビジネスチャンスを見出すべきである。
「制約を克服するためにいろいろ工夫をするところにイノベーションは起きやすい」といった言葉もあるように、制約を楽しむマインドが新たな価値の源泉になる。

やってみることで見えたオンラインの強み

私自身、コロナ禍において様々な業務をオンラインで体験することになった。当然オフラインの方が便利なこともあったが、逆にオンラインならではの良さを体験できたことも多かった。具体的な例を2つご紹介しよう。

1つ目は、研修である。今年2020年4月、弊社に入社してきた多くの新入社員に対し、私はオンライン研修の講師を担当した。受講者全員が自宅からリモート参加していたため、いつもの研修との違いに序盤は戸惑ったが、慣れるに従って様々なことを試していった。
例えばチャットを使った意見収集や質問受付。「●●についてどう思うか?」といった意見をチャットで収集し、面白そうな回答があれば深く聞いていくというやり方をすると、意外なほど盛り上がった。オフラインの場合、一人ずつ意見を聞いていくと時間がかかるし、紙に書いてもらうと回収に時間がかかる。一方、チャット形式の場合、講義をしながら同時並行で質問を受ければ、リアルタイムに答えていけるので効率が良いのだ。全員のコメントに目を通すことができる点も、参加者の理解度を測りながら進めることに役立った。
他にも、講義内容に関連する参考記事があれば、URLをチャットで共有するなど、オンラインならではの便利な方法が多く見つかった。ただし、講師と参加者、または参加者同士のネットワーク作りという点では、オフラインが勝る。オフラインの場合は、会場の大きさに合わせた人数制限があるが、その分臨場感も演出できる。今後のアフターコロナにおいては、おそらく私の研修はオフラインで集まる形式に戻るが、オンラインで発見したチャット等の便利ツールも併用したスタイルに変えていくであろう。

2つ目は、生活者インタビューである。プロジェクトで新たに企画しているサービスのターゲットとなるペルソナを検討するために、生活者インタビューを予定していたのだが、コロナの影響でオンラインインタビューに切り替えて実施することにした。このオンラインインタビューでも、いざやってみると様々なメリットを発見できた。
例えば場所の制約がないため、わざわざ移動することなく地方の方にもインタビューすることができた。介護や育児でなかなかまとまった時間の取れない方に対しては、ちょっとした隙間時間で対応してもらえるため、数多くの被験者を集められた。結果、コロナ前に想定していた納期を大幅に短縮することができたのだ。
またオフラインの場合だと、議事録だけの共有ではインタビュー中の様子までは伝わらないため同席することが多かったのだが、オンラインではツールの機能によって録画もできてしまうため、同席せずともありのままを共有してもらえるようになった。録画だと倍速再生で確認することもできるため、時間の短縮にもつながった。
さらには、オンラインインタビューの場合は自宅から参加される方が多いため、背景の様子からペルソナの理解を深める効果もあった。背景に写りこんだ住環境や私物から、その人の趣味嗜好まで垣間見えることもある。そこから生活レベルを想像できた事例もあった。

このようにオンラインでのインタビューは様々なメリットがあることを実感できた。もし、被験者にサービスやプロダクトの使い勝手を評価してもらいたい場合は、オフラインの対面インタビューの方がより良いインサイトを得られるため、オンとオフを上手く使い分けることが重要というわけだ。アフターコロナにおいては、クイックに顧客を理解したい場合はオンライン、プロダクトの使用感等の深い洞察を得たい場合にはオフラインといった使い分けを考えている。

コロナの谷を越えて行け

以上、私がコロナ禍で体験したことの一部をご紹介したが、皆さんもリモートワークの中でオンラインの強みに触れる機会があったはずだ。上述した生活者インタビューの例では、オンラインインタビューを初めて経験される被験者の方が多かったが、「今後は営業マンにオンラインで会うことに抵抗を感じなくなるだろう」というコメントが多かった。この流れは、あがり症の営業マンにとってはチャンスだ。オンラインでの商談となれば、パソコン上のウィンドウを最小化してしまえば、相手の顔は見えない。画面にトークスクリプトを表示しながら説明したとしても、相手には分からないのだから、手慣れてくれば饒舌にも映るだろう。
今後のアフターコロナの世界においても、生活者のオンラインに対する受容性は維持されていくだろう。つまり企業の活動は、「コロナが収束したから元通り」となってしまってはナンセンス。withコロナの経験から学び、after コロナの働き方やビジネスチャンスに生かしていかなければならない。
昨年は経済産業省から、『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』と題されたレポートが公表され、「2025年の崖」は日本企業に待ち受ける大きな課題として話題になった。そして今年は、コロナ禍の影響が日本企業に更なる課題を突き付けた。「2025年の崖」の前に突如として現れた「コロナの谷」。これを好機と捉えて越えることができれば、より切り立った崖を越えていくための、大いなる跳躍力を身に着けた企業へと変貌を遂げられるはずだ。

執筆者 Profile

シニアマネージャー/ デジタル・イノベーション・ラボ所属加藤 秀樹

専門分野
顧客体験設計、デザインシンキング、アジャイル

大学卒業後、ベイカレントに入社。
金融・製造業を中心に、DX戦略、CX向上、新規サービス立上げなどの領域で、企画立案から実行支援までの幅広い領域のプロジェクトを支援。
特に顧客体験を起点としたサービス・オペレーション・組織構築を得意とする。

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