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アフターコロナの議論は時期尚早。イントゥ・ジ・アンノウンに備える

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新型コロナウィルスの影響は計り知れず、企業は攻めに転じられない

2020年4月1日現在、新型コロナウィルスが日本で猛威を振るっている。終息する気配が見えないため、リーマンショックの時よりも状況を予測することは遥かに難しい。各企業は、自社にどれだけ影響が及ぶかの限界すら見定めることができない状況にある。
ウィルスの蔓延は全世界で爆発的に起きており、経済は一斉にストップしているような状態だ。体力のない企業や顧客減少の影響を受けやすいB2C企業から倒産し始めている。しかし、遅かれ早かれ全ての企業に影響が及ぶ。B2B企業にも連鎖的に売上激減の波が押し寄せるだろう。我々コンサルタント業界に影響が及ぶのは割と後の方だと予想されるが、それでも時期をずらして甚大な被害が及ぶに違いない。
コンサルタントの仕事はクライアント企業の「今後の戦略を一緒に考える」、「社員の業務を改善する」といった内容が多いが、売上が下がっていく企業が今後もコンサルタントに高いコストを払い続けるとは考えづらい。「コンサルに頼らずに社員だけでやる」と判断する取り組みが増えていくのは必然だろう。

そんな時代に生き残る術は、「いかに高い価値を提供できるか」にこだわることだ。我々の業界の場合、「コンサルに頼まなくても何とかなる」と思われてしまう仕事から無くなっていくだろう。似たようなことが、あらゆる業界で起き始める。

リーマンショック時の最悪から想定する

リーマンショックの時も企業への被害は甚大であった。現在起き始めている内定取り消しも、当時は問題となった。私自身は前職で「1年間ボーナスが出ない」、「給与体系が変わる(無論悪い方に)」という苦しみは味わったが、当然これから起こり得る危機の一部と言える。

しかしリーマンショックを参考に考えるだけでは、企業に所属する会社員はさほど危機感を感じないだろうと予測する。会社の売上が減ろうとも、とりあえずもらえる給与が変わらないからだ。
危機感を感じるどころか、当時の私が感じたように、しばらく経ってからボーナスが出ないという事実を突きつけられた時、きっと会社に対して大きな不満を抱くだろう。「自分は変わらず一生懸命働いている。むしろ能力は上がっているのに」という具合に。

今回の新型コロナウィルスの影響は、リーマンショックの繰り返しであればまだマシで、想像もできない悪い影響が起こると考えておいた方が良い。上述のように会社に不満を募らせるだけで済めば良いが、会社員として残れない状態(解雇になる、会社が倒産する、等)も想定し、一人ひとりが“今できること”を考えていかねばならない。

世の中では“アフターコロナ”という言葉を見る機会が増えている。「いずれ感染はピークを越え、ゆるやかに終息に向かっていくので、世の中の変化を先読みしていこう」というものだ。しかし、まだまだ新型コロナウィルスの影響が収まった後の世界を考えるのは時期尚早と言える。前例のないイントゥ・ジ・アンノウン(未知)の世界では、最悪のシナリオも想定したうえで生き残る術を見出していかねばならないのだ。

イントゥ・ジ・アンノウンで企業が検討しておくべきこと

デジタルの取り組みが加速している昨今、企業はこれまでの「守りのIT」から、DXを目指す「攻めのIT」への転換を急いでいる。しかし新型コロナウィルスの影響で未曽有の危機に備える今、一旦は“守り”一辺倒になることはやむを得ない。
まずは短期視点でしっかり守って、中長期視点で次の攻めに備える準備をしておくことが重要だ。

  • 方針を示し、明かりを灯す
    企業はこれまで通りのビジネスを続けることは困難になる。企業体力と向き合い、複数の最悪シナリオに対してリスク対策を徹底していくことが必要となる。リスクへの対策方針を打ち出し、社員や株主に安心を届けなければならない。重要なのは想いのこもった方針を打ち出すことだ。不安にさせたくないという考えで情報発信を限定的にすれば、場当たり的な対応をしているように映る。あたかも現状の日本政府のように。
  • 社員を守り、味方につける
    一時的な報酬減はやむを得ない。しかし行き当たりばったりな対応と捉えられると、社員は不満を募らせる。特に世の中が混乱している状況においては、感情的になった誹謗中傷も起こり得るため、社員の不満は会社のレピュテーションリスクにも直結すると考えた方が良い。社員をいかに保護するのか。保証と安心を与えるガイドラインを整備することが重要となる。
    例えば保証に関しては、報酬減は一時的なものであることを伝え、将来復活していく信頼できるシミュレーションシナリオを提示しなければならない。安心に関しては、リモートワークでも十分働ける環境を用意し、社員を孤独にさせてはならない。これまで以上にコミュニケーションの頻度を上げ、オンラインだが“繋がっている”ことを実感してもらう仕掛けが必要だ。
  • 顧客を守り、感謝を受ける
    コアクライアントが離れていくと、中長期目線で大打撃を受けることになるため、しっかりと顧客に寄り添う必要がある。今こそCX(顧客への提供価値)が重要な時期となる。
    顧客のニーズは刻々と変化するため、俊敏な対応を心掛ける。例えばサブスクリプションサービスの場合、料金支払いを先延ばしにすることも考えた方が良い。なぜなら経済が止まっている状況では、顧客がサービスを利用できていない状況にあるかもしれないからだ。
    こんな状況だからこそ、顧客に寄り添うことで感謝を受けるサービスを投入したい。家を出られないのであれば、TV会議を使ったサービスやこちらから出向くデリバリーサービスを始めるべきだ。重要なのは、これまでよりも顧客と接する頻度を上げることだ。やはり“繋がっている”ことを実感してもらう仕掛けは効果を発揮するであろう。

デジタル化が進む現在は、イントゥ・ジ・アンノウンに直面しても準備できることはある。「リーマンショックの時の過去事例データを集める」、「新型コロナウィルスで起きている影響をデータ化する」、「顧客の行動変化をウォッチし続ける」といったデータ分析の取り組みが、価値を生み出していく。
過去と現在のファクトデータを集めることで、様々な可能性をシミュレーションできる。デジタル技術を駆使してリスク対策していけば、リーマンショックの時のような場当たり的な対応を避けることができ、企業の俊敏な対応につながっていくだろう。

一人ひとりが意識改革すべきこと

個人としては自分の価値を見出すことが求められる。「あなたは誰にどんな価値を提供できるんですか?」と聞かれた際に、主張できる準備をしておくことが重要だ。
誰にも真似できない必殺技を持てということではない。「私は○○の業務においては、徹底的にお客様の声を聞いてきた」というように、プライドを持っておくのだ。

これは、業務の自動化が進むデジタルの世界では既に言われ始めていることでもある。デジタル技術を駆使することで、今後業務の生産性は遥かに進化していく。今まで業務に忙殺されていた状態が改善し、既存業務が半分の時間で片付くようになった場合、社員がやるべきことは昼寝ではない。より付加価値の高い仕事にシフトしていくことだ。そのためには、自分が本気になってチャレンジできる仕事を選ぶことも、価値を高める重要な要素となる。

新型コロナウィルスの影響に関係なく、遅かれ早かれ社員は付加価値の高い仕事にシフトしなければ生き残れない時代はやってくる。突如イントゥ・ジ・アンノウンの世界がやってきたが、社員の働き方改革が進むという観点においては好機と捉えることもできる。
一人ひとりが「私はこの仕事に魂を込めて取り組んでいる」、「私はこんな素晴らしい価値を提供できている」と誇れるよう意識改革をしていくことが、企業体力を高め、いずれ企業の暗中模索を照らす光にもなっていくだろう。

執筆者 Profile

チーフエバンジェリスト / デジタル・イノベーション・ラボ所属八木 典裕

専門分野
DX戦略、DX人材育成、デジタル部門創設、新規事業立案、デザインシンキング、ブロックチェーン、ドローン

当サイト編集長。大手IT企業を経て現職。
2016年のデジタル・イノベーション・ラボ創設時からデジタルの専門家として活動し、DX関連の様々なプロジェクトを主導。R&Dの調査・研究、DX戦略立案、DX人材育成、新規ビジネス創出などのテーマに携わる。ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』、『 3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』、『データレバレッ ジ経営』(共著/日経 BP 社)、『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)などがある。

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