宇宙ビジネスビッグバン日本企業の組織変革を推進しうる宇宙ビジネス

民間企業の宇宙ビジネス進出を加速させるためには、リスクマネーを投資する環境が必要だ。米国ではVCやエンジェルなどが宇宙ビジネスへ投資しているほか、Googleなどの膨大な資金力を持つIT企業などが投資を行い、また買収を通じて宇宙ビジネスへの参画を果たしている。一方、日本では宇宙ビジネスに供給される資金は十分とは言い難い。日本に資金がないわけでない。宇宙ビジネスへ投資する投資家が少ないことが問題なのである。

しかし、日本企業がデジタル変革を実現するきっかけに宇宙ビジネスを活用することはできないだろうか。恐らく、どんな企業においても宇宙ビジネスは、新規事業と位置付けられるし、市場自体も国内ではなく、最初からグローバルである。もちろん、いきなりロケット事業に参画するのではなく、身近なところから段階的に始める。例えばGPS、リモートセンシング等の宇宙データの活用からスモールスタートとしていくことも一案ではないか。

ただし、トップマネジメントの本気度は示す必要がある。CSBO(Chief Space Business Officer)を置くのも一つの手だ。また、CSBOをサポートする宇宙事業チームを立ち上げることも必要だ。このチームは宇宙への感度を向上させ、国内外の動向をモニタリングし、実際の事業を企画・実行し、組織に浸透させる役割を担う。宇宙ビジネスへの取り組みを通じて、日本企業がデジタル時代に求められる姿が見えてくるのではないだろうか。
2018.09.25

宇宙は “金のなる木” 積極的な投資がリスクを軽減

欧米を中心に民間企業の宇宙ビジネスへの進出が加速していることは、これまで述べてきた。日本企業もその流れに乗り遅れるべきではない。

米国では、リスクの高い投資を行うリスクマネーの供給が盛んである。宇宙ビジネスという事業においてもその流れは変わらない。VCやエンジェルなどが宇宙ビジネスへ投資している。そのほかにはGoogleなどの膨大な資金力を持つIT企業などが投資を行い、また買収を通じて宇宙ビジネスへの参画を果たしている。では、日本では宇宙ビジネスの資金はどうなっているだろうか。前回の記事で記載したとおり、政府関係機関がS-machingの下、1000億円のリスクマネーを5年間で供給するとしたが、宇宙ビジネスの本場米国では、1年間で約2000億円ものリスクマネーを供給している。年換算で比較すれば、約10倍の差となる。
一方で、日本に資金がないわけでない。宇宙ビジネスへ投資する投資家が少ないことが問題なのである。あくまで参考ではあるが、日本における大企業の内部留保の額は、財務省の法人企業統計調査によると47兆6,085億円(2016年度)である。この資金の1%でも宇宙ビジネスに供給されれば、約4000億円の資金が宇宙ビジネスに流入することができるのである。

このような状況を捉えると、日本においては、大企業に宇宙ビジネスへ目を向けてもらい、ニューフロンティアとして位置づけながら、真剣に取り組むことが重要になるのではないかと筆者は考える。当然、ステークホルダーからは “本当にビジネスになるのか?” という意見が出てくると思うが、太陽系にある惑星には地球では希少価値が高いレアアースでできているものもある。また、月では常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目もされている。つまり、“金のなる木” はいくらでも存在し、発想次第でなんとでもなるのだ。そして、大企業が積極的に投資すれば、リスクはいくらでも軽減される。

日本の組織文化を変革するために宇宙を活用し、宇宙ビジネスの活性化を図る

現在の新潮流は、IoT、AI、ビッグデータ等のデジタルビジネスである。日本はこの新潮流に乗り遅れた感は強い。一例ではあるが、Forbesが発表している世界の有力企業2000社ランキング(グローバル2000)のIT企業の上位10社のうち、8社が米国企業であり、のこり2社はサムスン電子(韓国)、鴻海精密工業(台湾)である。
今のビジネスの潮流であるデジタルは米国を中心に動いているといっても過言ではない。

では、日本はデジタルビジネスに何故乗り遅れたのか。“もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった” 、“新規ビジネスが苦手” 等の様々な理由はあるが、その根本には“リスクを避ける組織文化”にあるのではないかと筆者は考える。つまり、国内市場が潤沢であるため、新たなビジネスの展開や海外展開に打って出るよりも既存ビジネスの延長上にのみ視点を向ければ、基本的にはリスクを最小限にすることができる。もちろん国内市場は人口減少に入っているため、中長期的な視点に立てば、潤沢ではない。しかし、そこまでの視点を本気で考えているトップマネジメントがいるか、というと少ない。それは、トップマネジメントが現役のうちに既存事業に脅威となるようなことが起きないからだ。

では、どうしていけば日本の大企業が宇宙ビジネスへ参入できるのだろうか。一度確立してしまった組織文化を一気に変革することはできない。だから、少しずつ変革していく必要がある。そのきっかけに宇宙ビジネスを活用するのはどうだろうか。恐らく、どんな企業においても宇宙ビジネスは、新規事業と位置付けられるし、市場自体も国内ではなく、最初からグローバルである。もちろん、いきなりロケット事業に参画するのではなく、身近なところから段階的に始める。例えばGPS、リモートセンシング等の宇宙データの活用からスモールスタートとしていくことも一案ではないか。

宇宙への本気度 スモールスタートでもトップマネジメントの覚悟だけは示す

前回記事にて紹介したとおり、トップマネジメントの本気度は示す必要がある。CSBO(Chief Space Business Officer)を置くのも一つの手だ。

また、CSBOをサポートする宇宙事業チームを立ち上げることも必要だ。このチームは宇宙への感度を向上させ、国内外の動向をモニタリングし、実際の事業を企画・実行し、組織に浸透させる役割を担う。
加えて、事業の企画・実行で必要となるスキルを持つ人材を活用することが不可欠となる。もちろん、これまで宇宙 = “科学技術” であったため、技術面をリードする “エンジニア” の存在は必要となる。それ以上に必要なのが、ビジネス環境を整備し、具体的なビジネスをデザインする “ビジネスーアーキテクチャ” である。また、具体的な実行プランや業務プロセスをデザインする “オペレーションデザイナー” の存在も重要だ。

人材バンクから宇宙人材を獲得

しかし、人材をどこから獲得すればよいのか? 特に、エンジニアやオペレーションデザイナーについては、携わる事柄が専門的すぎるため、社内の人材を活用することは困難だと予想される。そのため、政府が運用を予定している宇宙ビジネス専門人材プラットフォーム「宇宙人材バンク “S-Expert(仮称)”」を活用することをお勧めする。この宇宙人材バンクでは、企業の人材ニーズと、JAXA や大企業等(宇宙産業に限らず、他産業の大企業等を含む)のOB人材・現役人材の専門性のマッチングのためのプラットフォームである。宇宙産業の裾野拡大を図るため、宇宙産業内の人材流動性を向上させ、また他産業から宇宙産業への人材の流入を目指すものである。

宇宙人材バンクへ人材を提供するJAXAや大企業のメリットとしては、OBへの雇用機会の提供や、現役人材に対する人材有効活用、リテンションなどがある。また、登録する個人としては、OBであれば再雇用機会の獲得、現役人材であれば、柔軟な働き方の実現や、自身が持っている経験・知見を活かした挑戦などが可能となる。

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