宇宙ビジネスビッグバン宇宙ビジネスにおける将来ビジョン

2018年3月3日に国際宇宙探査フォーラムの第2回会合(ISEF2)が開催され、宇宙探査の範囲を今後より拡大してゆくことについて多数の国が合意した。

国際的に宇宙探査分野への注目が高まってはいる一方で、民間企業の投資判断に資するビジョンを描ききれていないため、積極的な投資にはなかなか結びついていない。宇宙ビジネスにおける喫緊の課題がここにある。

解決するためには、政府と民間企業のどちらもが「本気」で宇宙産業に取り組む仕組みを用意し、維持してゆく必要がある。そして、そのなかでもっとも重要になるものが、明確な将来ビジョンである。
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2018.09.11

ISEF2の開催と東京原則の確認

 2018年3月3日に国際宇宙探査フォーラムの第2回会合(ISEF2)が、開催された。(図表1)
 同会合には45カ国の機関が参加。月や火星、その先にある太陽系惑星への探査拡大を国際協力して目指すことで基本合意した。

 また、国際宇宙探査の共通原則として、持続的、効果的、効率的な国際協働を促進し、全人類に利益をもたらすものとして、参加国は東京原則(図表2)について確認をした。
 また、ISEFのサイドイベントとして民間事業者がセッションを行ったI-ISEFでは、宇宙探査を経済的に有益な分野であることを位置づけ、宇宙探査における将来構想の策定、実現化に向けた技術標準、量産化への投資、新規参画企業への投資を民間主導で実施すべきであることが確認された。

ビジョンを描ききることが最重要

 今後の宇宙探査における重要なポイントは、投資を呼び込むための魅力的なビジョンを掲げることにあると言える。たしかに宇宙探査分野への注目は、国際的にも高まってはいるものの、民間企業の投資判断に資するビジョンを描ききれていないため、積極的な投資へ直結できているとは言い難い。宇宙ビジネスにおける喫緊の課題がここにある。

 民間企業が投資を行う場合、なによりも重視するのは、明確な投資対効果だ。しかしながら、宇宙ビジネスにおいては市場やサービスがまだ具体化されていない。その中で、民間企業が宇宙ビジネスに投資を行うためには、何らかのインセンティブが必要となってくる。
例えば、Google Lunar X Prizeでは“一定の投資を行うことで、税制の優遇措置を受けることができる”、あるいは“宇宙を題材にしたテレビ番組や映画において、優先的なスポンサーとなり、その興行収入を受けることができる”等というように、投資企業サイドのメリットがわかりやすく描き出されている。賞金レースとしてのインセンティブの有り様をしっかりと打ち出したGoogle Lunar X Prizeは、上記課題への対応策の成功例と言えるのではないだろうか。
ただし、インセンティブによって引き出される投資はあくまで一過性のものだと考えられる。
政府としては、民間企業の投資を継続的かつ長期的に促進する措置を実行に移し、宇宙産業に対する本気度を見せなくてはならない。例えば、長期購入契約(アンカーテナンシー)や官民連携(PPP)などにより、民間の活力を積極的に活用する取組みが重要となってくる。
一方、企業としては、政府の措置に依存するのではなく、宇宙産業の発展を視野におきながら、自社の研究・開発部門を強化するように取り組まなければならない。過去の取り組みを振り返ると、政府の助成金等の優遇措置が出るという名目で民間企業が参画しても、優遇措置期間が切れるタイミングで民間企業が事業から撤退してしまうことがあった。例えば、再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT)は、その典型ではないだろうか。

 それゆえに、政府は企業の本気度を確認できる仕組みを作る必要がある。たとえば、CSBO(Chief Space Business Officer)といった役職を置かせて、責任者を明確にするのも一つの策だ。中途半端な取り組みにならないよう、この役職は経営層でなければならない。

 また、CSBOは宇宙事業を本格的に展開していくために、明確なビジョンを描かなければならない。

月、火星におけるビジョン

 当社は、第2回記事にてご紹介した宇宙ロードマップより月、火星におけるビジョンを策定した。このように人が住み、活動する具体的なビジョンを事業の責任者が策定し、推進することが必要なのではないか。
 なお、上記は当社が提言した宇宙ロードマップにおけるステージVの具体的なイメージである。

図1:「ISEF2」Webページよりベイカレント・コンサルティング作成
図2:国際宇宙探査に関する東京原則(仮訳)
図3~5:ベイカレント・コンサルティング作成