コロナ禍におけるデジタル活用~今年のクリスマス商戦に向けて~「外部イベント」で過ごす2020年のクリスマス

2020.12.10

例年通りとはいかないなか、デジタル活用で価値を見出す外部イベント

 2020年は、夏に予定されていた野外フェスや花火大会など、様々なイベントが中止されてきた。秋以降は徐々に人の集まるイベントが開催されつつあるとはいえ、クリスマスはどれほど例年通りのイベントが開催されるであろうか。それを占う意味でも、10月末のハロウィンの状況は参考となった。
 ハロウィンで人の集まりやすい渋谷では、渋谷区が「2020年のハロウィンは、渋谷に集まらないように」と呼びかける方針を決定したことで話題となった。そんな中、バーチャル空間での人集めを狙う「バーチャル渋谷」のイベントが登場し、芸能人がゲストで登場するなどの影響で、テレビでも盛んに取り上げられた。アクセス集中によるシステムダウンなど、色々問題を抱えながらの船出とはなったが、話題性は上々であったと言えるだろう。今後も類似のイベントは続くと予想されるため、クリスマスでも注目されるサービスとなるだろう。

 今年の外部イベントで想定されるビジネスチャンスは、このようにリアルとオンラインを融合したイベントが考えられる。そして、リアルで楽しむという点で考えると、ソーシャルディスタンスに気を付けたうえでインスタ映えを狙ったものが注目を浴びそうだ。
 今回も「従来のクリスマスの楽しみ方」と「今年のビジネスチャンス」を掛け算したマトリクスを使って、アイデアを創出した。このなかで、今年特に注目したいアイデア(図内のオレンジ色の文字)について、具体的な内容をご紹介していく。

アイデア①:リアルタイムにアーティストが巡るオンラインイベント

 オンラインで芸能人が参加するイベントは着実に増えている。一世を風靡したゲーム「あつまれ どうぶつの森」では、芸能人の島に行けるようなイベントも出てきた。2020年8月には、人気ミュージシャンの米津玄師氏がインターネット上のバトルロイヤルゲーム「FORTNITE」のゲーム画面内でライブを行ったことも話題となった。
 コロナ禍の影響から従来通りのコンサートやライブが実施できない中、無観客ライブを行うアーティストが増えており、複数のアーティストが集うようなオンラインイベントに参加することも重要な露出機会となっているのだろう。

 この状況を踏まえると、今後ますますオンラインで有名人と接するチャンスは増えていくだろう。そして、その手段として特に注目されるのが、耳を使った次世代SNSの存在だ。2020年5月にβ版をリリースした「Clubhouse」は、音声チャットのSNSプラットフォームであり、現在シリコンバレーで熱狂的に注目を集めている。
 ルームと呼ばれる空間には誰でも気軽に入ることができ、芸能人同士が話す空間などにも入室できる。音だけなので、“ながら”で楽しめることもメリットだ。TwitterやInstagramのような既存SNSは、確実に目を奪われるが、耳だけを貸せば良い「Clubhouse」は、何時間も使っていられると話題になっている。

 「Clubhouse」が話題になる背景には、耳型ウェアラブルデバイスに注目が集まっていることが挙げられる。Apple社のAirPodsが人気だが、24時間つけっ放しでも気にならないという若者も増えているというのは驚きだ。Bose社が出した、サングラスとスピーカーが一体になったBose Framesも、イヤホンと違って付けている感触が無い点が注目される。
 音をテーマにしたサービスは、今後のチャンスにつながる大注目市場と言えるだろう。

アイデア②:デジタルイルミネーションをリアルに融合

 多くの人が集まりやすいクリスマスイルミネーションは、その多くが今年中止される可能性が高いため、デジタルを組み合わせたバーチャルイルミネーションが注目を集めるだろう。
 ハロウィンでは「バーチャル渋谷」が話題となったが、11月1日からは新たに「バーチャル東京タワー」のサービスが開始された。有名人が応援大使となっている点も注目だが、特筆すべきは100年後の東京タワーをテーマにしていることだ。オンライン空間でないと得られない価値が顧客に認められていけば、クリスマスでも話題になる可能性がある。

 ただし、話題性だけでなく、ビジネス商戦もつかみ取るためには、バーチャルとリアルを融合させたサービスに昇華させることが重要となるだろう。ECを始めとした多くのサービスでは、オンライン完結のCXが有利に働いているが、イルミネーションのような実際に見てこそ楽しめるものは、バーチャルからリアルへと顧客を誘導させてこそ、真の価値を発揮できるものだ。
 バーチャルイベント元年とも言える2020年、リアルまで融合させたサービスに昇華できた企業は、今後の市場をリードする存在になるかもしれない。
引用:「バーチャル東京タワー」製作委員会

アイデア③:リアルのイルミネーションにデジタルを投影

 上記のビジネス案②はバーチャルのサービスをリアルに融合させるものであったが、こちらはリアルのイルミネーションにデジタルを上手く活用させていこうというものだ。今年は例年のような煌びやかなイルミネーションを実現しにくく、中止にする街や電飾を減らすイベントも増えるだろう。だからこそ、デジタル空間で補おうという動きは受け入れやすい。
 例えば、チームラボが手掛ける「Message Pillar」は、アプリからメッセージを投げ込むと、スマホの画面上に浮かぶツリーにメッセージが描写されるサービスだ。リアルでクリスマスツリーの装飾を行わなくても、アプリ上では浮遊するメッセージがツリーを形作る。
 コロナ禍で迎えるクリスマスは、派手な装飾を施すことは厳しく、現地に集客させることがなかなか難しいが、デジタルを駆使して現地に来させる工夫を凝らせば、チャンスが見出せる可能性がある。
 「Message Pillar」のようなサービスは、去年のクリスマスに行っても話題性は乏しかったであろう。「今年であればチャンスがある」という意気込みで挑めば、新たな価値に気付けるかもしれない。
引用:チームラボ株式会社

本特集を通しての総括

 第1回でお伝えしたが、今年のコロナ禍で続いていた自粛期間も一定期間が過ぎ、徐々に街は活気を取り戻しつつある。そのような中で迎える年末のクリスマスは、今年最も集客の見込めるイベントとして期待される。このチャンスをつかむためのポイントは、いかに特別感を演出できるかだ。
 特別感を演出するためには、デジタル活用が必須と言える。なぜならば、デジタルはこれまで出来なかったことを出来るようにしてくれるものだからだ。ただし、今年の取り組みはある程度、場当たり的なデジタル活用になっても仕方がないと心得ることも重要だ。なぜならば、時間の猶予がないからである。大掛かりなデジタル活用には時間がかかるため、今年は場当たり的にならざるを得ないが、それでもデジタルを使うことでデータが流れ込んでくるという恩恵を受けることができる。そのデータを活用することが、今後のビジネスを大きく左右することになるのだ。

 つまり、「今年はデジタルをまず使ってみて、新たな価値創出を試みる」というテーマで挑むことが重要だろう。コロナ禍で迎える今年のクリスマスだからこそ、消費者はデジタルに対して抵抗感が薄れている。これまでデジタルに否定的であった消費者層を巻き込むには最大のチャンスと捉え、先行者利益をつかみ取るビジネスチャンスを検討してみると良いであろう。

チーフエバンジェリスト 八木 典裕

大手IT企業を経て現職。金融・製造・通信などの業界を中心に、IT 戦略立案から実行まで幅広く支援。直近は、DX、新規ビジネスの創造などをテーマとしたプロジェクトを主導。
ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』『3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』『データレバレッジ経営』(共著/日経BP 社)などがある。

マネージャー 関口 夏葉

大学院卒業後、現職。金融、消費財、産業財、ハイテクなどの業界を中心に、DX、オペレーション改革、システム刷新などのテーマに従事。
クライアントと良好な関係を構築し、共創型でプロジェクトを推進することを得意としている。

デジタルマーケティング担当 金澤 佑依

大手小売店を経て現職。デジタル・イノベーション・ラボ所属。
金融、通信、ユーティリティなどの業界を中心に、オペレーション改善や新規事業立案といったデジタル関連テーマに従事。 デジタル・イノベーション・ラボでは国内外のデジタル事例調査・研究、ベイカレントのデジタルマーケティングを担当。

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