コロナ禍におけるデジタル活用~今年のクリスマス商戦に向けて~「店やホテル」で過ごす2020年のクリスマス

2020.12.08

自粛生活もそろそろ限界、年末は豪勢に過ごしたい

 第1回でお伝えした分析結果の通り、コロナ禍の生活で人々はお金が貯まり、ストレスも溜まっている。外出自粛も半年以上が経過した今、外に出かける機会は着実に増え始めていたが、11月に入っての感染拡大第三波の到来もあり、予断は許されない状況である。飲食店としては去年と同じ数の集客まで回復できる見込みは、未だ立っていない。
 この状況下でクリスマスを迎える店やホテルとしては、去年よりも少ない客数で同等の売上を狙わなければならない。単純計算すると、仮にクリスマスの集客数が半分になるならば、一人当たりの単価を倍にしなければ去年と同じ売上を維持できないということだ。店舗としては、単価を倍にしても顧客に受け入れられるサービスへと高めていく考えが求められる。
 そして、サービスを高める糸口となるのがデジタルである。デジタルテクノロジーを活用し、普段では体験できないような非日常のサービスを提供する。またはデータを蓄積し、顧客一人ひとりに合ったOne to Oneのサービスを提供することで、心に残るクリスマスを演出していくのだ。

 顧客側としては、特別な演出が待っていると思えば、店やホテルで過ごすクリスマスを選択したくなるだろう。顧客を引き込むことに成功しそうなビジネスアイデアとは、どのようなものだろうか。
 前回と同様、「従来のクリスマスの楽しみ方」と「今年のビジネスチャンス」を掛け算したマトリクスを使って、アイデアを創出した。このなかで、今年特に注目したいアイデア(図内のオレンジ色の文字)について、具体的な内容をご紹介していく。

アイデア①:一人ひとりに合わせた特別メニューを提供

 コロナ禍の影響で苦しい状況にある飲食店は、ソーシャルディスタンスを保つための工夫を強いられている。スペースを空けた座席配置へ変更、座席間に透明の仕切りを付ける、消毒液を設置する、店内をこまめに換気する、といった感染対策は必須となる。
 感染対策によって、一度に店内に入れる顧客数が減るのであれば、その代わりに顧客単価を上げる検討をすべきだと言える。ただし、その単価に見合った価値だと実感してもらうためには、何らかの対策が必要。だからこそ先ほども示した通り、非日常のサービスやOne to Oneのサービスを提供することが重要となってくる。

 その施策として、例えば来店前に事前に Web でアンケートを取り、「あなただけの特別コース」を提供するサービスはどうだろうか。店内の顧客数が減れば、レストランのシェフが顧客一人ひとりを回って話す時間も増やせる。有名店のシェフが、「あなたのための料理は、こんな考えで創作しました」と説明しながら談話すると、顧客にいつもとは違うプレミアムな価値を感じてもらえるだろう。
 また、アンケートに答えてもらうことで顧客の趣味嗜好データを蓄積できる点も大きい。今年のクリスマスばかりでなく、今後のサービス向上に生かしていけることが利点となる。

 入店客数を制限し、価値の高いサービスを提供している好例として、「été(エテ)」というレストランがある。1日一組の顧客に限定し、マンションの一室で営業しているのだが、予約の取れないレストランとして圧倒的な人気を誇る。1日10個限定のケーキも人気だが、ケーキを購入した人はレストランの予約権も付いてくるという点がブランド価値を更に高める結果へと結びついている。
 「été(エテ)」の例を参考にすると、One to Oneのサービスを提供することがいかに重要か理解できる。店のブランド価値を高めることができれば、単価を上げることも狙えるだろう。

 ”あなただけ”をテーマにしたサービスを提供することで、顧客にとっては思い出に残るクリスマスとなる。そのためにデジタルを活用し、データに基づく演出を行うことが重要な観点となるであろう。

アイデア②:プロジェクションマッピングでイルミネーションを投影

 今年は、クリスマス恒例のイルミネーションの多くが中止になるかもしれない。イルミネーションが中止になると、夜景見物帰りの集客を見込んでいた店舗としては、顧客を確保できない恐れがある。

 それならば、いっそのこと店の中でイルミネーションを楽しんでもらおうという逆転の発想によるサービスはどうだろうか。例えば部屋の壁一面に世界各国のイルミネーションを投影するのだ。顧客は世界のイルミネーションを見ながら過ごし、気に入った映像があれば”いいね”を押していく。すると、好みに合った映像を絞り込むことができるため、顧客の満足度は高まっていく。満足した顧客がSNSに投稿してくれると、更なるブランディング効果も期待できるだろう。

 このアイデアのポイントとなるのは、顧客自身にリアクションをさせることだ。”いいね”を押すシステムを導入すれば、顧客の趣味嗜好データを取得できるため、店舗側にとっても大きな価値がもたらされる。
 顧客一人ひとりを理解することができれば、One to Oneのコミュニケーションが取れる。定期的にメッセージを送ることで、次回の来店を促す営業活動も容易になるだろう。どのようなシーンが好まれるのか、顧客の傾向をつかむことができれば、店内の雰囲気やサービス方法を変えるなど、店内の改善活動にも生かせるだろう。

アイデア③:デジタルカタログで事前予約し、自分好みにカスタマイズ

 一人ひとりのニーズに合わせたサービスを提供するために、顧客自身に選ばせるという方法もある。例えば、予約の時に自分で選択し、自分好みにカスタマイズできる仕組みを用意できれば、One to Oneのサービスが実現できるというアイデアだ。

 クリスマスはそもそも準備することが多い。大切な人と過ごす場合であれば、事前にクリスマスプレゼントを購入、ここ一番のオシャレ着を用意、レストランを予約といった準備作業が発生する。レストランもただ席を予約するだけでなく、席の雰囲気や食事の細かい内容まで顧客の好みに合わせてカスタマイズできるとより一層喜ばれる。
 もちろん手間のかかる準備だが、それらをお店の予約時にまとめて出来てしまえば歓迎されるのではないだろうか。ディナーコースに加え、テーブルセット、装花、ケーキといった様々なものを事前に選択できるようにしてしまうのだ。更に、クリスマスプレゼントまで事前予約できれば、レストラン協力のもとサプライズまで演出できてしまう。コロナ禍においては、繁華街にプレゼントを買いに行くのはためらわれるため、レストランが百貨店と提携して、お好きなプレゼントまで予約できるなら、多くのニーズを拾えるだろう。

 こういった事前予約の仕組みを構築することで、前述のアイデアと同様、顧客の趣味趣向データを蓄積できることが、店舗にとって貴重な財産となっていく。また顧客にとっても、好きなようにカスタマイズできれば、きっと思い出に残るクリスマスを過ごすことができるに違いない。
 以上3つのビジネス案をお伝えしたが、これらに共通して言えることは、いかに心に残るクリスマスを演出できるかがポイントになるということだ。そのためには、デジタルを活用し、顧客自身で選択できる仕組みを構築すると効果を見込みやすい。
 また、顧客自身が選択することによって蓄積されるデータが、これからの店舗運営にとっても貴重な財産となる。今年だけでなく、来年以降もより良いサービスに進化させ続けるために、デジタルを活用したサービスを検討してみると良いだろう。

 次回の第5回が最終回となるが、最後は「外部イベントで楽しむクリスマス」について、ビジネスチャンスをお伝えしていく。ぜひ、このまま読み進めていただきたい。

チーフエバンジェリスト 八木 典裕

大手IT企業を経て現職。金融・製造・通信などの業界を中心に、IT 戦略立案から実行まで幅広く支援。直近は、DX、新規ビジネスの創造などをテーマとしたプロジェクトを主導。
ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』『3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』『データレバレッジ経営』(共著/日経BP 社)などがある。

マネージャー 関口 夏葉

大学院卒業後、現職。金融、消費財、産業財、ハイテクなどの業界を中心に、DX、オペレーション改革、システム刷新などのテーマに従事。
クライアントと良好な関係を構築し、共創型でプロジェクトを推進することを得意としている。

デジタルマーケティング担当 金澤 佑依

大手小売店を経て現職。デジタル・イノベーション・ラボ所属。
金融、通信、ユーティリティなどの業界を中心に、オペレーション改善や新規事業立案といったデジタル関連テーマに従事。 デジタル・イノベーション・ラボでは国内外のデジタル事例調査・研究、ベイカレントのデジタルマーケティングを担当。

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