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アジャイル”導入”はもうやめよう

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手段が目的化しているアジャイル“導入”

アジャイルに取り組む企業が増えている。 “VUCA*と呼ばれる不確実性が高い現在の環境下において、機動性のあるアジャイルが広がってきたことは必然の流れだ。昨年、経済産業省から公表された『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』の中でも、今後はアジャイル開発が主流になることが言及されており、もはやアジャイル開発はどの企業にも不可欠な存在だ。

弊社もクライアントから、アジャイルに関する相談を受ける機会が年々増えているが、アジャイル開発を始めるためのプロセス作りやツール導入が目的化しているケースが多いことを危惧している。経営層からの「アジャイルを“導入”せよ」という号令のもと、ScrumやXPなどのフレームワークを開発プロセスへ当てはめることに躍起になっている企業は、今一度アジャイルに取り組む目的を整理した方が良い。
VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、現在のビジネス環境を表す言葉としてよく用いられる。

Don’t just do Agile, be Agile

そもそもアジャイルとは、2001年にソフトウェア開発の思想的リーダー達によって公表された『アジャイルソフトウェア開発宣言』を起源にしており、全部で12の原則が存在する。アジャイル開発のフレームワークとして知られるScrumやXPには、これらの一部を体現するためのプラクティス(スプリント・朝会など)が定義されている。
「スプリントサイクルを回している」、「朝会を開催している」という変化をもって、アジャイルを“やっている”風に言われがちだが、ただプラクティスを実施すれば良いという訳ではなく、価値・原則に沿った“状態”になっていることがアジャイルなのである。このことは「Don’t just do Agile, Be Agile」と表現される。12の原則は、前述の通り2001年に公表されているものであるため、現在の自社を取り巻く環境に読み替える必要がある。例えばリリースサイクルは、テクノロジーが発展した現在では2-3週間でも遅いかもしれない。多少の読み替えは必要であれ、この価値・原則は現在にも通ずるものであり、アジャイルに取り組む上では必要不可欠だ。

アジャイル”導入”はもうやめよう

アジャイルはビジネスの成功のための手段だ。特に現在のVUCA時代では、ビジネスを成功させるための正解が明確ではない。一時的に正しかったとしても、すぐに状況は変わっていくため、アジャイルを使って対応し続けなければならない。そのため12の原則にあるように、「ビジネス側の人と開発者は日々一緒に働き」、「顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供する」ことが必要なのであり、「定期的に振り返る」ことで状況変化に対応していくのだ。

しかし特に大企業では、アジャイルの価値・12の原則への共感を置き去りにし、間違った解釈で進めているケースが多い。例えば「ドキュメントは作らなくて良い」、「要件はいつでも変えて良い」といった都合の良い理解をしている話をよく聞く。ドキュメントを作らずに後々の保守性や拡張性が低下してしまっては、顧客に価値あるソフトウェアを早く継続的に提供することはできないし、検討不足による要件変更は生産性を低下させるだけである。
このような誤った理解でアジャイルを始めると、ユーザー部門は要件定義に真剣に取り組まなくなる。その結果、「リリース直前に要件変更が多発する」、「品質も生産性も劣化し、継続改善しようにもソースコードを読みこむことから必要となる」、なんてことに陥りがちだ。

冒頭に述べた通り、多くの大企業は経営層からの号令のもと、アジャイル”導入”に踏み切る。ミッションを与えられたIT部門は早期に結果を出すために、開発プロセスの整備を急ぎ進める。アジャイルについて深く理解することも、アジャイルに取り組む目的を定義することもなく、“導入”している事実を形成することに重きが置かれる。こうしてアジャイルプロセスを“導入”することだけが目的化していく。
プロセスを整備し、目に見える行動から変えることは悪いことではない。むしろ、凝り固まった組織を変えるために、わかりやすい変化を与えることは有効なアプローチであるが、そもそもの目的を見失っては本末転倒である。プロセスを実行する”Do“で帰結してしまうのであれば、アジャイル”導入” という号令はやめるべきだ。PDCAサイクルを回すことを意識させるため、アジャイル”浸透”と言い換えてもらうと良いだろう。

あなたの組織にはアジャイルが“浸透”しているか?

さて、改めてあなたの組織はアジャイルと言えるだろうか。IT部門のみならず、ビジネス部門のメンバーも巻き込んで、アジャイルの目的を共有できているだろうか。そしてその要件の変更は、顧客のため、自社の競争力を引き上げるために考え抜かれているだろうか。
「アジャイルがうまくいかない」と悩む企業は、ほとんどが上記を実現できていない。自分達の行動や意思決定が、アジャイルの価値観・12の原則に沿っているかどうかを振り返ってみて頂きたい。確認する方法としては、「顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供できているか?」といった具合に、価値観・12の原則に沿って自問してみると良い。
自問自答した結果、半分も答えられない場合は、あなたのアジャイル“導入”は見直した方がよいだろう。真の“アジャイル”になるには、全ての原則を漏れなく組織に浸透させる必要があるのだから。

執筆者 Profile

シニアマネージャー/ デジタル・イノベーション・ラボ所属加藤 秀樹

専門分野
顧客体験設計、デザインシンキング、アジャイル

大学卒業後、ベイカレントに入社。
金融・製造業を中心に、DX戦略、CX向上、新規サービス立上げなどの領域で、企画立案から実行支援までの幅広い領域のプロジェクトを支援。
特に顧客体験を起点としたサービス・オペレーション・組織構築を得意とする。

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