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目標なきデータ統合プロジェクト

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デジタル変革最大の武器はデータ分析!

日本企業は、デジタル変革の主役として、データ分析に目を向けている。事実、2019年に入ってから、データ分析組織を立ち上げる企業が増えている。そしてこのデータ分析組織は、データサイエンティストがデータ分析という武器を使って、企業の課題解決に取り組んでいる。

データ分析は、目標設定から始める

データサイエンティストがデータ分析に取り組む際、一般的な課題を解くのと同じように、どのように問題を解くのか定式化することから始める。重要になるのは、何を目標とするのか、最大化または最小化したい定量指標を決めることだ。たとえば、売上の向上やコスト削減などが定量指標となる。そして、目標を達成するために、仮説を立て、どのように問題を解くのか考えていく。一方で、データ分析は、分析技術ばかりに目を向けられ、定量指標の設定を軽視されることがある。定量指標を設定せずに分析を始めるのは、地図を持たずに山に登るくらい危ないことだ。

しかし多くのデータ分析者は、目標を設定していない

図で示した通り、ベイカレントの調査の結果、データ分析者が定量指標を設定していない割合が約8割を占めることがわかった。企業に属する者であれば、会社からなんらかのミッションを与えられているもの。データ分析者であれば、そのミッションをクリアすべくデータ分析という手段を講じているはずである。もし本当に定量指標を設定しないまま、データ分析に臨んでいるのであれば、そのデータ分析はまず失敗に終わるだろう。どれだけデータ分析から優れた解を得たところで、何の指標も動かしていない分析は無意味である。

実際にあった”目標なき”データ統合プロジェクト

筆者が実際にクライアントと議論したエピソードを紹介しよう。
このケースではまず、データについて課題があるということでヒアリングに伺ったのだが、そのクライアントはデジタル変革を成し遂げるべく、データ統合プロジェクトを推進していた。長年オンプレに蓄積していたデータをクラウドに移行しつつ、全社に散乱したデータを統合しようというものだ。ところが、長年蓄積してきたデータが膨大なため、データコピーが夜間バッチで処理しきれないという課題を抱えていた。

その課題がどうしても解決できず、納期遅延、スコープ縮小、予算追加を繰り返していた。そこでヒアリングを重ねていくと、ようやく課題が見えてきた。膨大なデータを処理することが分かっていたので、分散処理フレームワークを採用したというのだが、その分散処理フレームワークを扱える技術者が社内はおろか、ベンダーにもいなかったのである。ベンダーを選定したときは、なんとかなるだろうと思い、いつも付き合いのあるベンダーにお願いしたとのこと。しかし、分散処理フレームワークの扱いを甘く見積もっていたようだ。今さら、ベンダー選定の話をしても前には進まないので、筆者は解決策としてHadoop経験者を招集し、プロジェクトの立て直しを提案した。加えて、次の質問を投げかけてみると、さらに解決すべき課題が浮き彫りとなった。

「データを統合したら、何をしたいのですか?」
そう問いかけてみたところ、驚く答えが返ってきた。
「まだ決まっていないです。」

手段が目的になっている典型例である。聞くところによると、BIツールのライセンスは購入したものの、使っているのはごく一部の部署に留まっているという。機械学習を使ったアイデアどころか、アドホック分析するアイデアも洗い出していなかった。このデータ統合プロジェクトは目標に達することができるだろうか。

目標を立てる前にデータを集めるな!

データ分析は、まず定量指標を設定する。次に、目標を達成するための仮説を立てて、どのように問題を解くのか考える。そこで考える問題の解き方は、具体的でなければいけない。例えば、製造工程における不良率低減を目標として、どのデータを用いて、故障発生の10日前に的中率70%以上で予測する、くらいの粒度まで具体的にする。そこまで解き方を考えることで、どのデータをどのくらい用いるか決まるのである。

「このデータはいつか使う」という人は、いつまで経っても使うことはない。データ分析に携わる人は、目標を立てているか、改めて確認してもらいたい。

執筆者 Profile

チーフデータサイエンティスト/ デジタル・イノベーション・ラボ所属小峰 弘雅

専門分野
データ戦略、AI、データガバナンス

大手IT企業を経て現職。
製造、通信、メディア、エンターテイメント、金融、公共業界において、アナリティクスを活用した新規事業の立ち上げやオペレーション改革などのテーマに従事している。日本ディープラーニング協会の活動にも参画。ベイカレントのAI人材開発も担当。

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