子育てにもデジタル化の波が来ている
そこでは、妊活や出産、そして新生児〜小学校入学ぐらいまでの子育て等を支援するさまざまなIoTデバイスやアプリケーションなどが紹介され、盛り上がりを見せている。
そして日本でも2018年、育児に関係するスタートアップが共同して「子育Tech(こそだてっく)」という概念を提唱した。企業が協力して子育て×テクノロジーの普及を推進することで、親が手間をかけてこその愛情という暗黙の文化を徐々に変革し、中長期的に市場を醸成していくことを目指している。
Digital Blogsコンサルタント記事
そこでは、妊活や出産、そして新生児〜小学校入学ぐらいまでの子育て等を支援するさまざまなIoTデバイスやアプリケーションなどが紹介され、盛り上がりを見せている。
そして日本でも2018年、育児に関係するスタートアップが共同して「子育Tech(こそだてっく)」という概念を提唱した。企業が協力して子育て×テクノロジーの普及を推進することで、親が手間をかけてこその愛情という暗黙の文化を徐々に変革し、中長期的に市場を醸成していくことを目指している。
女性の進学率や就業率が高まり、経済的独立性が増す一方で、同時に非婚率の増加や晩婚化が進んでいる。これ自体は先進国に共通で起こっている事象だが、日本の場合はそれに伴う出生率の変化が非常に極端だ。
こういった現象の要因として、日仏両国の経済的支援の手厚さに差異があることは間違いないだろう。フランスでは多子に対する給付金が手厚く、教育費も幼稚園から高校まで無償化されている。ただ、問題は経済面にだけあるわけではない。
以下の調査でも垣間見えるように、結婚や育児に対する自由さや気楽さへの不安が、経済的不安を上回るレベルで存在していることが分かる。
乳幼児は朝から晩まで、とにかく目が離せない。朝は、前日の睡眠不足に関係なく甲高い泣き声で叩き起こされる。そしてオムツとパジャマを着替えさせ、食事はもちろん一人で食べられないので付きっ切りで食べさせてあげる。昼間も四六時中泣きわめくので、おむつを見たり抱っこをしたりミルクをあげたり、試行錯誤をすることに。
また、歩くようになると何をしでかすか分からないので、危険なモノは隠して囲いに閉じ込めておくわけだが、そうすると今度は暇なので構ってくれと泣きわめく。片手間に家事を片付けながら、あっという間に日が暮れてしまう。夜は夕飯とお風呂を慌ただしく済ませ、寝かしつけている内に、親も疲れて一緒に寝てしまう。
・・・なるほど休息の時間など取れない。
そこで、日々のルーチンワークをいかに効率化・自動化できるか、という点がポイントになってくる。
例えば、海外製品で耳にすることも多いおむつセンサーやベビーモニターは、目を離せないという不自由さを少なからず解消してくれる。
また、冒頭の子育Tech提唱企業の一つでもあるファーストアセントは、赤ちゃんの泣き声をAIで分析する「CryAnalyzer」というアプリを提供している。”眠い” のか、”お腹が減っている” のかといった感情を泣き声から推察することができるのである。
ただし、これらのサービスは、ルンバのように自動で掃除を完了してくれるわけではない。命にかかわる以上、機械に何でもやらせるのは難しいにしても、例えば鳴き声だけでなくあやし方まで分析・カテゴライズした上で、個々の赤ちゃんに最適な ”ご機嫌取りコンテンツ” を提供してくれるだけでも、永遠と続く抱っこ地獄からの解放を求めて需要は爆発的に増えるだろう。
かわりに自我が芽生えてきて、一緒に余暇を楽しむ時間が生まれてくるが、同時に子育てとしての様々な選択に悩むことも増えてくるのだ。
例えば休日、朝食を食べ終え、ふと今日は何をしようかと考える。天気がいいから子供を公園に連れて行ってあげようか、それとも暑いから家でゲームでもさせておこうか、といった具合である。
その時には、親と子供、そして子供の将来のそれぞれの満足度を天秤にかけているような気がする。
自らの意思で親になった責任として、「多少の自己犠牲は当然」という考えが脅迫観念となって押しかかってきてしまう。
単純に、親の自由を優先させるのであれば、子供を気軽に預けられる保育サービスを充実させることが求められる。出かけ先での一時預かり施設や、保育のシェアリングサービスが広く普及すれば、親の自由時間は取りやすくなるだろう。
やはり親が子供との時間を一緒に楽しむことも重要だ。
最近道端でも、親子でポケモンGoやドラクエウォークに興じる姿を見かけることがあるが、これだと家で引きこもることもなく、親子で一緒にいる時間を楽しむことができる。昔ながらのスタンプラリーのように、親子で同じ目標に向かって、一緒に達成感を味わえるというのが良いと思うし、そういう位置情報ゲームはこれからも増えてくると思う。
更に、子供の将来を考えるとどうか。
何かしらのスペシャリティを身に着けてほしいと思ったとき、子供が夢中になれるものを探してあげることが重要だ。
例えば子供の興味を惹き付けるきっかけとして、VRやARも役に立ちうるのではないか。連日盛況の職業体験にしても、親の趣味であるゴルフや釣りにしても、よりリアルな疑似体験が手軽にできるようになる。
またそうしたサービスを通じて子供のデータを蓄積することで、わが子の特性を把握した上での最適解の選択が可能となる。
子供がどういうものに興味を持ち、どういう場合に達成感を得られるかといった特性を把握できると、別のものにも置き換えられたり、勉強にも応用したりできそうだ。親子間での趣味の落としどころも見つけられる。
そういう意味では、パーソナルデータを預けて何かしらのレコメンドや対価サービスを受けられる情報銀行も、子供のためなら使ってみたいと思えるかもしれない。
既に子供もスマートウォッチを付けてライフログを収集する時代になってきている。
その不自由さを解消してくれるテクノロジーやサービスが普及していけば、同時に周囲を頼ることへの抵抗感も薄れ、親としての時間的・精神的ゆとりも増えていく。そうして子育てに関するネガティブな印象がなくなっていくと、少子化の歯止めにもデジタルが一役買うかもしれない。
シニアマネージャー吉田 健
デジタル・イノベーション・ラボ所属。
主に保険・金融を中心に、IT、デジタルを活用したサービス企画・導入支援、オペレーション改善等に従事。