目的密度の最大化
いくつか具体的に紹介しよう。
JPN Taxiの「タクシーの支払い予約」サービス
都内のタクシーに乗ると、かなりの割合で、助手席のヘッドレストの裏側にモニタが付いていることに気づくだろう。
JPN Taxiが展開するサービスでは、QRコードをモニタに表示させ、スマホアプリで読み取ることにより、支払いをあらかじめ予約できる。
初めて目にしたときには、その価値を理解できなかった。「支払料金が確定していないのに、支払いを予約するなんて、なんかコワい…」それが、今や乗るたびに必ず使っている。
タクシーに乗るのは、目的地へ移動して何かをしたいからだ。タクシーに乗ること自体は目的ではない。到着してからそそくさと財布から小銭を取り出すよりも、乗っている間に支払いを済ませておいたほうが、目的をより速く実現できるわけだ。つまり、目的密度が高い。
メルセデス・ベンツの「プレオーダー」サービス
車を新しく購入する場合には、販売店へ出向き、カタログを広げながら営業担当の話を聞き、見積を取り、試乗をして…と、実際に購入するまでには長い長いカスタマージャーニーが存在する。
一生に何度もない買い物だから、慎重に検討するのは当たり前。確かにそうだが、ここでの論点は、検討の質を下げずに、新車を購入するという目的を手早く実現する方法はないか、ということである。
メルセデス・ベンツのプレオーダーサービスは、見積をスマホで取るサービスだ。販売店で見積をとる場合、待ち時間が発生する。販売店側にとっては、見積業務は車を販売する上で必須だが、消費者にとって、その待ち時間は目的に対して付随的なものに過ぎない。販売店へ出向く前の、任意の時間に見積をできるようにしておけば、見積作業が、新車購入までのクリティカルパスから外れ、目的密度が高くなる。