映画「マトリックス」の世界はもうすぐそこに!?
「マトリックス」のストーリーでは、同時進行する2つの世界が描かれている。一つは、それが仮想であることを誰も疑わないほど精巧に作られたVR(バーチャル・リアリティ)の世界。もう一つは、カプセルのような容器の中で、人類の生命がマシンによって完全制御された現実(リアル)の世界だ。映画の公開当時、おそらく多くの人が「この2つの世界はSF映画上の作り話だ」と感じただろう。しかし、改めて映画を観た私の感想は「これは、もう実現している」だったのだ。
Digital Blogsコンサルタント記事
「マトリックス」のストーリーでは、同時進行する2つの世界が描かれている。一つは、それが仮想であることを誰も疑わないほど精巧に作られたVR(バーチャル・リアリティ)の世界。もう一つは、カプセルのような容器の中で、人類の生命がマシンによって完全制御された現実(リアル)の世界だ。映画の公開当時、おそらく多くの人が「この2つの世界はSF映画上の作り話だ」と感じただろう。しかし、改めて映画を観た私の感想は「これは、もう実現している」だったのだ。
最近、某ゲーム機メーカーが「We can do it! (できないことができるって最高だ)」というメッセージをテレビCMなどで発信しているが、まさに我々はこのメッセージ通り、「(リアルワールドでは実現)できないことができる」もう1つの世界、すなわちVRの世界を手にしようとしている。
先日も、あるプロジェクトで再生医療に関するリサーチをする機会があった。そこで出会ったのがLonza社とOctane Biotech社が共同開発中の細胞・遺伝子治療製品自動培養装置「コクーン (Cocoon)」。Lonza社の方から直接お話を伺う機会に恵まれたのだが、聞けばこのコクーンでは、カセットのようなものを交換するだけで様々な細胞を自動で培養することができるとのこと。こうした技術が確立されていけば、量産の妨げとなっていた細胞培養の難しさを克服し、細胞医薬品や遺伝子治療薬のコスト低減と普及に寄与するものとなるだろう。コクーンは「繭(まゆ)」という意味で、デジタル制御された繭の中で細胞が自動培養されるわけであり、まさしく「マトリックス」で描かれた世界を想起させる。実際、Lonza社の公表している写真 はSFの世界そのものだ。
人類はこれまでにも高度な技術の利活用によって、それまで手にできなかったものを次々に手中に収めてきた。これからも、あくなき探求心や挑戦欲によって、いわば「神」の領域に近づいていくだろう。しかし、人間が神の領域に近づけば近づくほど倫理的な観点で様々な議論が生まれ、また、映画「マトリックス」のような世界に陥ってしまうリスクも、ただの夢想と片づけられなくなる可能性もあるのではないだろうか。
ちなみに、主人公の名前であるNEO(ネオ)は、「選ばれし者」「神」といった意味があるThe ONEのアナグラムなのだそうだ。