この、データの取得と分析の応用が、最近ではこれまでテクノロジーとは縁遠かった領域でも使われ始めている。例えば、農業にIoTとデータ分析を利用するAgritech(Agriculture×tech)がある。
農業は、これまで長年の経験によって培われた肌感覚や暗黙知に基づく技術に頼ることが多かった。その年の天候や土の状態などにより、肥料の量や与えるタイミングなどを変える必要があるからだが、そこで決め手となる知恵やノウハウは、経験を豊富に持たない層には共有しづらい面があった。しかし、IoTやドローンなどを活用すれば、集められるデータ量は長年農作物を育ててきた人が蓄積してきたものにも勝る。それらのデータを過去のデータと突き合わせて分析すれば、どんなタイミングで何をすればいいのかが可視化でき、誰にでもわかるようになる。
少子高齢化問題と共に、労働生産人口の減少が危惧されているが、その中でも農業に従事する人の数は減少のスピードは速い。5年おきに政府が実施している調査によると、2015年は20年前と比較して約半分、5年前と比較しても20%減少しているのだ。時間をかけて職人を育てる時間は残されていない。それよりも、デジタル化を促進して生産量を維持することが喫緊の課題となるのではないだろうか。
実際、圃場(田畑・農園etc.)の気温や湿度、日射量、CO2濃度、土壌水分などの環境をスマートフォンでモニタリングできるシステム「みどりクラウド」や農家の定量的なノウハウを可視化する目的で開発された農業センサーシステム「SenSprout」など、新しいサービスが実際に提供され、使われ始めている。政府もAgritechを推進しており、今後の普及が期待される。