閑話休題、そんな閉塞感の中でも、個人的に特徴があり、今後に期待したくなるシェアリングエコノミーのサービスを2つ取りあげ、紹介しておきたい。
1つは、株式会社ポップコーンシアターの提供する、”popcorn”というマイクロシアターのプラットフォームだ(https://popcorn.theater/)。マイクロシアターとは、一定以上の広さの場所を用意するだけで誰でも映画の上映会を主催できるサービスだ。空間をシェアするという意味では民泊や会議室のシェアリングと同様だが、今までハードルの高かった映画の上映というイベントに一般消費者がリスクなくチャレンジできるように、権利処理の代行や上映機器の貸出等をプラットフォームとして提供することで、単なる空間とイベントの仲介とは異なる、付加価値の向上を実現している。昔ながらのミニシアターが少なくなり、大手のシネコンで大作だけがスクリーンに掛かるようになっている近年において、新たな映画体験を作り出そうとしているシェアリングエコノミーなのだ。
もう1つは、今やデジタルサービスの事業者として知らない人はいないであろうDeNAが運営する、”Anyca”というカーシェアリングのプラットフォームだ(https://anyca.net/)。オーナーは無料で自分の車を登録することができ、利用者に車を貸し出すことで料金の一部を収入として得ることができる。アイデアとしてはシンプルに感じるが、ユーザーが利用しやすい様に保険(東京海上と連携)や決済等、細かい部分で様々な機能をプラットフォームとして提供している。車の貸し借りでユーザーが最も心配するであろう、安心安全の部分を確実に担保しているのだ。
両方に共通するのは、ユーザーが最も気にするであろうポイント(シアターであれば権利処理、カーシェアであれば不慮の事故に備えた保険)に確実に対応する機能をプラットフォームとして備えているということだ。前述の通り、新しい体験に踏み込みづらい日本人向けにシェアリングエコノミーを広めるためには、プラットフォームとして単なるマッチングに留まらない機能の提供が求められると言えるだろう。先行きに不安があると述べた民泊においても、専用の保険がスタートしている(https://minpaku-hoken.jp/)。ユーザーの囲い込みよりも、プラットフォーム機能の拡充がシェアリングエコノミーを成功させる鍵になるのかもしれない。上記の2サービスを始めとして、日本ならではのシェアリングエコノミーの誕生と拡大に期待したい。