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今なお進化を続けるメインフレームは、希少かつ魅力的なレジェンドだ!

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“クラウド化”と“脱クラウド”、相反する二つの動き

 メインフレームは1960年代に登場したレガシー技術であり、進化を続けながら現在もなお、多くの企業で使われ続けている。大量データの高速処理を並列で行うために、全ての機器(CPU、入出力コンポーネント、暗号モジュール等)が最適に構成されており、高可用性を実現できている。連続稼働などの非機能要件を満たすために、60年近くも改善を続けてきた結果が、多くの企業に使われ続ける要因となっているのであろう。

 一方で、メインフレームを使ったオンプレミス環境を捨て、クラウドへ移行する企業が多いのも事実である。ただし、メインフレームと同様の処理性能をクラウドで担保しようと検討しても、様々な要因で行き詰るケースが後を絶たないことは知っておいた方が良い。実際に、「QCD(品質・費用・期間)いずれかの理由で断念した」、「設計や運用の考慮漏れによる事故リスクがある」、「クラウドへのデータ持ち出しが企業セキュリティ上難しい」といった声をよく耳にする。

 たしかに2000年代から登場した“クラウド化”の動きはますます増えている状況にあるが(図1)、実は相反する動きとして、2010年代になってから“脱クラウド”の動きも出てきているのだ。“クラウド化”と“脱クラウド”、真逆の動きが並行しているのは実に面白いのだが、どちらを選択するにせよ、正しく設計するためにはオンプレミスとクラウドの十分な理解が不可欠となることに変わりはない(図2)。

 そして、この“脱クラウド”の動きに合わせるかのように、現在のメインフレームはレジェンドな要素を継承しつつ、新たにクラウドの利点を盛り込むことでパワーアップしているのだ。

現在のメインフレーム = 何でもできる + オープン技術に接続できる

 かつて技術革新により様々なシステムが乱立していた1960年代に、“1台でなんでも処理できる”ことを目的としたメインフレームが開発された。IBM社はメインフレームをより長く使ってもらうために、60年以上にわたってコマンドを一つたりとも削除することなく、今なお互換性を担保し続けている。安心・安全・安定にシステムを稼働させるという信念は、メインフレームの揺るぎない価値として根付いているのである。

 直近では2019年頃からNEC、IBM、日立などの企業が、続々と新しいメインフレームを発売し、オープン技術に接続する多くの機能を実装している(図3)。例えばIBM z15は、コンテナやDevOps機能に加え、マルチクラウド接続も可能になった。量子コンピュータでも解読困難な高度な暗号化技術を保有しており、仮にクラウド上にデータを配置したとしても、データ強度を維持できる点は画期的である。この技術によって「災対環境はクラウド上に配置する」といったことが現実的となり、安価に環境を構築できるようになった。

 また、データの価値創出に注目している日立やNECは、クラウドを支えるオープン技術と接続する機能を追加した。メインフレームで分析を行う場合は、蓄積されたデータをクラウドに送る必要がないため、データアップロード中の事故や設定ミスなどによる機密情報漏洩リスクを大幅に低減させられる。さらにメインフレームであればハードウェアレイヤで暗号化する機能を保有しているため、データ分析を行う場合に暗号/復号処理をソフトウェアで考慮しなくても良いというメリットがある。

 現在、メインフレーム上で動作するCOBOLやPL/Iなどのプログラミング言語は、扱える技術者が減少傾向にあるため、市場のニーズが高まっている。Java等の言語と比較すると、変数の型や桁数に補完機能がないなど、コーディングを行う上で注意は必要となるが、書籍などの教材は豊富に出版されているため、技術獲得のハードルは決して高くない。

“脱クラウド”の兆しとなった「Dropbox」 の事例

 2008年に正式サービスを開始した米Dropbox, Inc.は、膨大な容量のデータを管理するオンラインストレージサービス「Dropbox」を展開しており、1日に同期されるファイルは10億件以上にものぼる。「Dropbox」は当初、クラウドでサービスを展開していたが、オンプレミスとクラウドのメリデメを比較した結果、“脱クラウド”に踏み切る決断をした。2012年までに“脱クラウド”に向けた方針を固め、2015年にオンプレミスへの移行を実現したのである。

 「Dropbox」は事業の拡大に比例して管理するデータ容量が増えていくため、運用コストが膨大に膨れ上がっていくのが大きな課題であった。またクラウドサービスだと、自社の事業特性に合わせてカスタマイズすることが難しく、この点も“脱クラウド”を後押しする要因となったのである(図4)。

 現在ではユーザ企業の多くが、セキュリティ上、国外にデータを保管できないルールを設けていることから、「Dropbox」は各国のリージョン上でサービスを展開している。更に、セキュリティの壁を越えやすくするためにISO27001、SOC2/SOC3、HIPPA、ISO27017、ISO27018等の様々な認定を取得して円滑なネットワークを形成しているのだ。

 そして2022年現在では、北米、アジア、欧州のそれぞれで、複数キャリアを使って自社の専用回線を接続しており、米国以外でも“脱クラウド”でのサービス最適化が実現可能となりつつある。

レジェンドとなったメインフレームは技術者にとっても魅力的

 これまでメインフレームを保有してきた企業であるならば、ビジネスとアーキテクチャの最適な構成が整理されているはずなので、もし盲目に“クラウド化”を選択しようとしているならば踏みとどまって考えた方が良い。メインフレームを最新機器に刷新すれば、これまでのサービスを維持しながら先端技術を活用できるため、オンプレミスを継続する選択肢を簡単に捨ててしまうのは得策ではない。

 もちろんクラウドを活用した方が良いケースも多い。例えばグローバルでビジネスを展開している場合、その国や地域によって法律やルールが変わるため、臨機応変に準拠しつつも、サービスの敏捷性を確保できるクラウドの方が適しているだろう。しかし「Dropbox」の事例のように、一定のレベルを超えた場合、オンプレミスでサービスを提供した方が安価となり、サービス品質を向上できるケースも出てくる。

 オンプレミスとクラウドを正しく比較検討するために、ビジネスの指標として、コストとサービス品質を可視化できる状態にしておくことが望ましいだろう。私はこれまで、多くのクライアント先でアーキテクチャ検討を行ってきたが、クラウドだけでなく、メインフレームを含めたオンプレミスも合わせて比較できなければ、最適なビジネスを提供するためのアーキテクチャ検討はできないと感じている(図5)。

 これから到来するSociety5.0のスマート社会では、生活者が利用するモノやサービスにてあらゆるデータが活用されていくこととなる。データの取り扱いは、より高いレベルのセキュリティ管理が求められることになり、情報漏洩の事故は顧客から離反されるレピュテーションリスクをはらむ。人もサービスも同様に、信頼関係は長い時間をかけて少しずつ積み上げていく必要があるが、逆に信頼を失うのは一瞬なのである。

 レジェンドであるメインフレームは、高性能、高信頼性、堅牢性を満たした希少な存在である。このメリットを手放して“クラウド化”するということは、メインフレームで築き上げてきた高セキュリティを、一から設計し直すことを意味する。そして、もし設計ミスがあれば、これまで築いた信頼を一瞬で失うことにもなりかねない。

 現在のメインフレームはクラウドの良さを吸収し始めており、海外では既にクラウドの対抗馬として位置づけられているのだ。ここに気付いた多くの大企業は、メインフレームを継続利用する方針に切り替えている。

 60年以上経っても、今なお進化を続けるメインフレームかつては限られた技術者しか操作できなかったものだが、現在では容易にふれて試すことができるため、多くの技術者にとって魅力的な存在となっているのではないだろうか。

執筆者 Profile

シニアマネージャー渡邊 喬律

専門分野
IT戦略立案、サイバーセキュリティ、IT人材育成

TISを経て現職。
金融・通信・小売りを中心に、IT戦略立案、業務改革、サイバーセキュリティ、IT人材育成、大規模PMOなど多数のプロジェクトに従事。
セキュリティや技術研修を実施。

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