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【今さら聞けないDX】「IT」と「デジタル」と「DX」の違い、明確に説明できますか?

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今さら聞けないITとデジタル、そしてDXの違い

 あなたは、「IT」と「デジタル」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の違いをはっきりと説明できるだろうか。ふだんの仕事でも、上司や同僚との会話で何気なく使っているこれらのキーワード。だが、改めて明確に定義を説明して欲しいと言われたら、言葉に詰まってしまう人も多いのではないだろうか。

 今さら人に聞くのは恥ずかしいと思われるかもしれないが、「ITとデジタルの違いを正しく理解していなければ、DXの成功は望めない」といったらどうだろう。少なくとも、共通言語の認識が社内でずれていないか、一度確認してみた方がよいかもしれない。

 私がいつも行っているDX関連のセミナーでは、序盤の重要ポイントとして、この「ITとデジタルとDXの違い」を説明するスライドが登場する。過去の経験談としても、これらの違いを説明した途端、ハッと気付いたような表情を見せてくれる参加者は多い。この反応からも、DXの取り組みを成功に向かわせる上で、重要な前提となる知識であることが分かるだろう。

ITは失敗の許されない「守り」、デジタルは失敗もあり得る「攻め」

ITは昔からあった言葉、そしてデジタルは最近出てきた言葉。

 この違いは誰もが知っているだろうが、逆にこの程度の理解にとどまっている人からは、「デジタルって、ITを言い換えただけでしょ」という無邪気な言葉が聞こえてきそうだ。正直言って、これからDXを目指すとしたらちょっと頼りないと思ってしまう。

 そんな状態から目覚めるためにも、まず始めに理解しておきたいのは「ITは守り、デジタルは攻めの概念」だということだ(図1)。これまでのITを「守りのIT」、新たなデジタル化の取り組みを「攻めのIT」と表現することもある。例えば、基幹システムを構築・運用するのは「守りのIT」に該当するが、オペレーションを効率化させるための新たなコミュニケーションツール導入や、ビジネスを改善するためのデータ連携の取り組みなどは「攻めのIT」、すなわちデジタルに該当するというわけだ。

 両者は、開発や運用のアプローチが異なっており、考え方が正反対ともいえる要素が多い。これまでビジネスやオペレーションを下支えしてきたITは、常に「ほぼ100%」の完璧さを要求されてきた。業務システムが突然止まることは許されないし、万が一何か起きれば、自社のビジネスそのものに大きなインパクトが生じてしまうからだ。

 一方、積極的に変革を試みるデジタルは、トライ&エラーを繰り返しながら、徐々にスパイラルアップしていくという特性を持っている。デジタルの活動の一つである新規事業の創造は、成功する確率が低いなかでイノベーションにチャレンジする取り組みとなる。

図1:ITとデジタルは似て非なるもの


 その意味では、ビジネスやオペレーションを確実に支える「IT」と、新しい価値創造にチャレンジする「デジタル」と言い換えてもよいだろう。

DXとは抜本的な変革を成し遂げること

 そして、半ばバズワード化している「DX」であるが、一言で言うなら、「デジタルをフル活用した先に実現する抜本的な変革」だ。これを理解する上で重要なのは、デジタルテクノロジーとは「これまでなかった新しいテクノロジー」という点だ。新しいテクノロジーということは、新たな価値をもたらす力があるということであるため、デジタル活用は「今までできなかったことをできるようにする」ものでなければ効果的とはいえない。

 要約すれば、DXとは「今までできなかったことをできるようにする」取り組みを積み重ねていくことで、企業のあり方が変わるほどの変革へと到達できる営みを指す。

 例えば、従来の紙で行っていた出荷伝票をPDF化できたとしても、それはペーパーレス化という一つの「改善」を実現したに過ぎない。だが、そうした小さな改善を積み重ねていった先には、DXにつながるビジネスモデル変革が見えてくるかもしれないということだ。

 そのためには、PDF化した出荷伝票を 、この先どう生かしていくかが問われる。「オンラインで瞬時に本社へ集約できる仕組みをつくろう」、「集約したデータを全国の拠点でリアルタイムに共有しよう」といった施策の積み重ねが次の変革アイデアを生み、いずれ新しいビジネスチャンスが見えてくる。当初は考えもつかなかったようなビジネスモデルにたどり着いたとき、DXという抜本的な変革に向かっていくことになるのだ。

 もちろん「数撃てば当たる」とばかりに、無計画にデジタル活用を重ねても、DXに結びつくことはない。目指す目標が聖域なき変革であるほど、「変わりたくない」という社内の反発に阻まれるケースに数多く遭遇することだろう。

 そこで私たちベイカレント・コンサルティングでは、DXという最終的な目的を実現するための方法論を提唱している。社員の思考・行動様式を意識レベルから変えていく「マインド変革」、働き方やITの再構築にも着手する「社内変革」、ビジネスモデルを抜本的に見直す「ビジネス変革」を実現した先に、最終的な目的実現が目指せるようになるのだ(図2)。

図2:DXという最終的な目的を実現するための方法論

「IT」と「デジタル」を明確に区別することで、DX推進は成果を出し始める

 守る「IT」と攻める「デジタル」では全く異なるアプローチになるため、それぞれに関わる社員の考え方や行動スタイルが違ってくるのは当然ということになる。

 この前提に立つと、「ITを担当しているCIOにDXも委ねてしまおう」といった考えが危ういと理解できるはずだ。まったくベクトルの異なるアプローチを一つの組織で行おうとすれば、当然メンバーの取り組み方に無理が生じてくる。サッカーに例えるなら、これまでディフェンダーとして活躍してきた選手に、これからは1試合ごとにディフェンダーとフォワードを交互にやってくれというようなものだ。よほどのオールラウンダーでなければ、この二刀流は難しいだろう。DXの取り組みも同じだ。これまでもデジタル活動で十分にトライ&エラーの経験を積んだ実力者集団なら、一つの組織で兼任させても大丈夫だろうが、初めから両立させようとするのは無謀と心得た方が良い。

 ただし、認識しておく必要があるのは、いずれは既存のIT組織が守りと攻めを両立しなくてはならない時が来るということだ。デジタル化によって構築されたシステムが、ある程度社内に定着してきたら、それ以降はIT組織がしっかりと守っていくことになる。しかし、いざその時になって急に、「あとはよろしく」と任されても無茶ぶりとなってしまう。従ってデジタル組織は、DXの取り組みを進める過程を通じて、IT組織を上手に巻き込んでいく工夫をする必要があるのだ。

 ITとデジタルは似て非なるものであるが、同時に切り離せない関係にあることも理解しておくことが、全社一丸でDXを推進するうえで大切なポイントとなる。そして、DXが「抜本的な変革」であるという意識が浸透することで、「守りのIT」と「攻めのIT(デジタル)」を区別して取り組めるようになる。 その考えに立ったときに初めて、企業のDX活動は旗印となる最終的な目的を掲げ、着実な成果を出しながら推進力をつけていけるはずだ。

執筆者 Profile

チーフエバンジェリスト / デジタル・イノベーション・ラボ所属八木 典裕

専門分野
DX戦略、DX人材育成、デジタル部門創設、新規事業立案、デザインシンキング、ブロックチェーン、ドローン

当サイト編集長。大手IT企業を経て現職。
2016年のデジタル・イノベーション・ラボ創設時からデジタルの専門家として活動し、DX関連の様々なプロジェクトを主導。R&Dの調査・研究、DX戦略立案、DX人材育成、新規ビジネス創出などのテーマに携わる。ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』、『 3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』、『データレバレッ ジ経営』(共著/日経 BP 社)、『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)などがある。

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