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「偉人たちが残したデータサイエンスへのヒント」

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データに関わる人へ問いかけます

あなたの役割はブラーエ?ケプラー?それともニュートン?

 かつて望遠鏡が発明される以前、ティコ・ブラーエ(1546-1601年)というデンマークの天文学者がいました。当時は、それまで信じられていたプトレマイオスの天動説(地球中心説)に対し、ニコラウス・コペルニクスが地動説(太陽中心説)を唱えてから半世紀が経過した頃でした。ブラーエは、コペルニクスの地動説を発展させた論文を発表しました。これは、すべての惑星は太陽の周りを回っているが、地球が宇宙の中心であるという、天動説と地動説を折衷したようなものになります。
 ブラーエはデータに基づいた理論を重視しており、天動説も当時の地動説もデータで証明できなかったため、独自の結論に至ります。事実、当時としては最高精度の観察技術で40年間の惑星観測記録を残していました。つまり、大量かつ高品質なデータを集め、そのデータに基づいた提言をしたのです。

          

 ブラーエの死後、助手だったヨハネス・ケプラーが惑星運動の三法則、いわゆるケプラーの法則を発見します。1609年に発表した第一法則は、惑星は太陽を1焦点とする楕円軌道を描く。同じく1609年に発表した第二法則は、惑星と太陽を結ぶ直線は一定の時間に一定の面積を描く。1619年に発表した第三法則は、惑星の太陽からの平均距離の3乗と公転周期の2乗の比は一定である、というものでした。

 このケプラーの法則は天動説やブラーエの論文を否定し、地動説を裏付ける決定的なものとなりました。ただし、ブラーエの集めたデータなくしては、ケプラーの快挙はあり得なかったのです。しかし、ケプラー自身はなぜこの法則が成り立つのか、その背景にある理由まで解明することはできませんでした。太陽と惑星の間になんらかの力が働いていることには気付いていましたが、それが地上の重力と同一であることまでは分からなかったのです。

 そして、これを解明したのがアイザック・ニュートンです。1687年、「物体にはかならず引力が生じ、その力は物体の質量に比例し、かつ物体相互距離の2乗に反比例する」という、すなわち万有引力の法則を発表しました。この法則を見出す時に利用したのがケプラーのルドルフ表(天文表)であり、ケプラーの功績なくしてニュートンの快挙はあり得なかったということです。

  

 ブラーエ、ケプラー、ニュートンに至る系譜によって、西洋の近代物理学は誕生していきました。そして、この3人の偉人が積み重ねた発見は、現代のデータサイエンスにおいて、忘れてはならない視点を与えてくれているのです。

データサイエンスのヒントとなる3つの視点

  • 視点:精密に記録しデータに基づいて提言する

 言うまでもなく、正確なデータがなければデータサイエンスは始まりません。

 ブラーエが残したデータは、現代から見ても驚くほど正確なものであり、量においても先人を超えたものでした。そのデータをもとに、天動説でもコペルニクスの地動説でもない、独自の体系を打ち立てたのです。既存の考えを覆す反論をすると、教会を敵に回す恐れもあった時代ですから、よほどデータを拠り所にしていたのだろうと想像できます。

 現代においても、企業には勘と経験に頼った意思決定が根強く残っています。たとえば、法人営業担当者はAIが推薦した商品の提案よりも、自分が長年売ってきた商品を提案します。すべての営業が経験則を優先していたとしても、精密に記録することにこだわり、データに基づいた提言をする重要性をブラーエが教えてくれています。

  

  • 視点:アブダクションで規則性を発見する

 データをただ眺めているだけでは、その現象の奥にある規則性を発見することはできません。そこで重要になる考え方が、アブダクションです。

 アブダクションとは観測された驚くべき事象に対して、最も適切に説明できる仮説を導き出す推論法です。

 もし、ケプラーが帰納法で仮説を導き出していたとしたら、毎日東から太陽が昇っているデータを見て、「太陽は東から登る」というありきたりな結論に至っていたことでしょう。しかし、ケプラーはアブダクションによって毎日太陽が昇る位置が違うことに気付き、「惑星は楕円軌道を描く」だろうという説明仮説を立て、ブラーエが残したデータを説明したのです。

 現代においても、帰納法で導き出した分析結果は散見されます。たとえば、この商品は高齢者が多く購入していることがわかったので、「高齢者をターゲット層にしよう」といった具合です。帰納法で導き出した仮説を論理展開しても、他社との差別化は成し得ません。顧客自身も自覚していなかった要因をアブダクションで推論する重要性をケプラーが教えてくれています。

 

  • 視点:問題解決の4箱方式で解決策のヒントを得る

 ニュートンは、りんごの実が落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見したという逸話があるように、ちょっとしたヒントが偉大な発見には欠かせません。では、いかにしてヒントを得るのか、そのヒントからどのように推論するのかという問いが生まれます。

 その問いに対する解の1つが「問題解決の4箱方式」です。問題解決の4箱方式とは、具体的な問題を抽象化し、モデルで解決した上でそれを具体化する発想方法になります。

 ニュートンの万有引力の法則は、すべての物体は互いに引力を及ぼし合っているというものです。ケプラーが説明できなかった「なぜ惑星は楕円軌道を描くのか」の理由は、万有引力の法則を使えば説明できるようになります。また、万有引力の法則は定式化したモデルですから、星の軌道であれ、潮の満ち引きであれ、地上で見られる現象は一律説明することができます。

 現代においても、問題解決の4箱方式は有用な考え方です。例えば物流の配達員は、いかに早くすべての荷物を配達するかが大きな課題となります。この具体的な問いから、「各配達先を一回だけ通った上で、総距離の最小化を求める」という定式化したモデルへ抽象化していくのです。これであれば数学の問題として解くことができます。

 ブラーエ、ケプラー、ニュートンの逸話から、現代でも有用な3つの視点を紹介しました。どれが優れた視点かということではなく、3つの視点を併せ持つことがデータサイエンスには必要なのだと思います。

 

 もしご自身に欠けている視点が見つかったのなら、3人の偉人を思い出してみてはいかがでしょうか。必ずやあなたの仕事にヒントを与えてくれることでしょう。


執筆者 Profile

チーフデータサイエンティスト/ デジタル・イノベーション・ラボ所属小峰 弘雅

専門分野
データ戦略、AI、データガバナンス

大手IT企業を経て現職。
製造、通信、メディア、エンターテイメント、金融、公共業界において、アナリティクスを活用した新規事業の立ち上げやオペレーション改革などのテーマに従事している。日本ディープラーニング協会の活動にも参画。ベイカレントのAI人材開発も担当。

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