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デジタル時代はメガバンクとネット銀行、どちらと付き合うべきなのか?

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メガバンクの収益改善施策が炎上。しかし、実は顧客にメリットのある施策も進んでいる

デジタル・トランスフォーメーション(DX)を強力に推進しているメガバンク各行は、収益改善施策を相次いで発表してきた。

こういったDXの取り組みは、基本「守り」と「攻め」に分類されるものであり、どちらも並行して進めるものである。しかし、どういうわけか直近のメガバンクの取り組みは次のような「守り」の施策ばかりが悪目立ちしているようだ。

「店舗統廃合」、「紙通帳有料化」、「休眠口座有料化」といった守りの施策は、一部の消費者には受け入れられず、「解約する」、「もう行かない」などの否定的なコメントによってニュースサイトやSNSでプチ炎上してしまった。

 一方で、利便性向上など消費者にとってメリットのある攻めの施策も、実は徐々に進み始めているのだ。各行はダイレクトアプリを拡充する「ネットバンキング」、ペーパーレスの「次世代店舗」、提案力を強化する「コンサルティング」など、顧客がより便利なサービスを受けられる施策に力を入れている。これらはいずれも数年以内に順次ローンチされていく予定となっている。

 では「守り」と「攻め」両輪の変化が進んだ将来のメガバンクは、消費者にとって今後も付き合い続けるべき存在となるのだろうか?

これまでは「イケてないメガバンク」と「スマートなネット銀行」の構図

 思えば、これまでのメガバンクの顧客体験はイマイチだった。

 支店に行くと、番号札を引いて待たされ、窓口では紙の伝票・印鑑・通帳・免許証等を持参して取引する。おまけに支店は15時には閉まってしまうため、時間的な制約もついてくる。残念ながら先進的でもなければ、利便性もない体験である。インターネット・バンキング(IB)はあるものの、あくまで“リアル店舗のオマケ機能“であり、2020年度の利用率は3割程度といまいち普及していない。
 金利は驚きの低さで、定期預金(1年)は約0.002~3%程度が相場である。これは100万円を10年間複利運用したとしても、約200円しか金利がつかないという水準になってしまう。

 一方でメガバンクには安心感がある。資産を扱う社会の公器として、店頭に行けば銀行員が付きっ切りで色々案内してくれるので、どんな商品でも相談できる。高齢者や障がい者向けの専任サポートや有資格者を配置するなど、誰もが丁寧な対応を受けられるサービスの手厚さはメガバンクの強みだ。


 対してネット銀行は、比較的スマートな選択手段であったといえる。

 生命線であるIBに早くから力を入れており、比較的使い勝手が良い。窓口に行く必要がない体験、夜間でも取引可能な点などがターゲット顧客に刺さっている。

店舗や人件費が少なくて済む分、金利が高いことも魅力の一つだ。各行のWeb上には、年利0.13%~0.20%(メガバンクの30倍~100倍程度)といった金利が並んでいる。ATM手数料などの無料回数も多い。「スマートなネット銀行」は、メガバンクよりも金銭的メリットが大きいというのが、これまでの特徴であった。

 そして、さらに特筆すべきなのが、一部のネット銀行が持つ“ポイント経済圏”の存在だ。例えば楽天銀行の場合、金利とは別に楽天スーパーポイントがリワードとして付与されるため、オトク感が強い。PayPay銀行やイオン銀行なども然り、日本人のポイント好きな国民性も相まって、差別化要因として有効に機能している。

 ただネット銀行の弱点は、ターゲット顧客の裾野の狭さにある。そのビジネスモデルの特性上、ITリテラシーの低い人はあまり相手にしていない。もちろん郵送での取引や電話でのサポートも行っているが、万人に対応できるサービスとはいえない。また、ある程度の金融商品を揃えているとはいえ、メガバンクに比べると選択肢が少なく、店頭で気軽に相談することもできない。

これらに鑑みて、メガバンクとネット銀行の相違点は、次のように3つの項目で整理できる。
① 顧客利便性:顧客体験(UX)、場所・時間柔軟性
② 機能多様性:商品・相談網羅性、バリアフリー成熟性
③ 経済合理性:手数料・金利、ポイント経済性

このうち「機能多様性」については、これまでのメガバンクの強みであったといえるだろう。

新たな存在となる「デジタルメガバンク」、強みと弱みはどう変わる?

 では、DX推進を標榜しているメガバンクは、今後どのように変わっていくのだろうか。程度の差はあれ、デジタルメガバンクへと変革を遂げることにより、現状の強みである「機能多様性」を維持したまま、「顧客利便性」が大幅に高まっていくことは間違いない。

 デジタル化を進めるメガバンクでは、ダイレクトアプリが刷新されていく。例えば、りそな銀行や三菱UFJ信託銀行のIBスマホアプリは、豊洲やお台場にデジタル・ミュージアムを展開していることで著名なチームラボ社が手掛けている。こうした新進気鋭のデジタル企業と大手銀行がコラボレーションすることは業界では珍しいことであり、各行のUX改善に向けた本気度が伺える。先進的なUI/UXデザインを実現することで、“脱・古い銀行”に向かう潮流が盛んになっていきそうだ。
 そうなるとITに抵抗がない顧客層は、デジタルデバイスを介して店頭に準ずる多彩な金融商品を、いつでもどこでも優れたUXで取引できる。これまでオンライン取引が不便なために、仕方なく来店していた顧客にとっては、利便性が高まることとなるだろう。

 また、ITが苦手な顧客層であっても、次世代のリアル店舗サービスで恩恵を受けられるだろう。銀行員に店舗のタブレット操作をサポートしてもらうとか、顧客のスマホ操作を教えてくれるアプリ教室などが開かれるとかが実現すれば、少しずつデジタルデバイスに慣れていくことができる。加えて、高齢者に被害の多い特殊詐欺(オレオレ詐欺)を防ぐための水際対策としても、リアル店舗における銀行員の目が安心感につながる。

 このように守りの施策で効果を出しつつ、デジタルメガバンクは攻めの施策の一環として、コンサルティング機能を強化していく。IBスマホアプリや次世代店舗に導入されるとみられるビデオチャットを使えば、どこでも気軽に顧客のライフステージに応じたお金の相談を、生涯にわたって受けることができる。
 「万人に開かれた駆け込み寺」、「人生に寄り添うセーフティネット」といったキーワードが、デジタルメガバンクの新たな二つ名となっていくのかもしれない。

 では最後の「経済合理性」についてはどうなるであろうか。現時点では各行から明確な発信はなく、直近の施策から推測せざるを得ない。そもそも現状の利差では、仮に100万円を10年間複利運用しても、せいぜい1~2万円程度しか差が出ない “どんぐりの背比べ”状態であり、差別化要因にはなりにくい。
金利や手数料については、ネット銀行にかなわない蓋然性が高いだろうが、メガバンク各行は、そもそも金利で勝負をする気がないともいえる。

となると、別の価値で勝負することが重要な要素となっていく。

「デジタルメガバンク」の成功に必要な2つの条件

 そのカギとなるのが、ポイント経済圏を形成することである。
 だが、メガバンクが一朝一夕で楽天やPayPayのような自前の経済圏を築くことは難しい。従って、異業種と共創関係を築き、エコシステム(生態系)でポイント経済圏を組成していく考えが必要となる。

 例えば、三菱UFJ銀行はすでにPontaとの連携に着手している。みずほ銀行はLINEと協業し、LINE銀行の設立準備を進めている。すでに兆しとなる取り組みは始まっているが、これらが成功するための条件は2つある。

 第一に、 “開かれたエコシステム“の形成だ。閉じられた銀行グループ企業だけで連携していては利用シーンが限られ、消費者が経済合理性を感じにくくなる。多くの異業種企業と手を携え、ポイント付与とポイント利用シーンを広げることが肝要となる。その副次効果として蓄積できるデータも多様化し、データ分析の価値も高まっていくことになる。

 第二に、世論の理解を得て個人情報を共有していくことだ。エコシステムでは企業間でデータ連携することが宿命であるが、日本では特に個人情報に対する心理的な抵抗が強い。最近ではLINEの社内データが中国のサーバーに保管されており、中国企業が閲覧できる状態であったことに強い嫌悪感が示された。

 さまざまな業界プレーヤーと個人情報を共有していくことは容易ではない。だからこそ、メガバンクのように多くの企業と信頼関係を構築しやすく、サイバーセキュリティレベルや社会的信用力の高い企業であれば、実現に向けて強い優位性があるといえるのだ。

 そのためにも、まずはこの先数年のDX推進が、メガバンクの勝負の分かれ目となる。「守り」と「攻め」の施策で相乗効果を発揮し、各行2,000~3,000万アカウントといわれる膨大なアクティブ個人口座をデジタルシフトしていくなかで、大きな価値が創出される可能性があるからだ。メガバンクが“デジタルメガバンク”へと変革(DX)を成し遂げたとき、ネット銀行とは違う新たな競争力を生みだせるかどうか、期待を持って見守っていきたい。

 例えば普通預金や外貨預金など、絞り込んだ金融商品で頻繁にオンライン送金するような方は、ネット銀行をメインに使い続けても良いだろう。独自の経済圏にどっぷり浸かっている場合もネット銀行を選ぶかもしれない。
しかしそうでない場合は、様々なライフステージで層の厚いサービスを提供し、「顧客利便性」、「機能多様性」、「経済合理性」の3つを兼ね備えたデジタルメガバンクを選ぶと良いのではないだろうか。

執筆者 Profile

シニアマネージャー山田 航介

専門分野
銀行、Fintech

15年以上の経営コンサルティング経験を有する。メガバンク法人企画、メガベンチャー経営企画、外資系戦略コンサルティングファーム等を経て現職。
主に大手銀行、大手金融機関、大手通信業などに対する、デジタル戦略立案、dX実行支援、イノベーション創出支援等に係る実績多数。
プロジェクトマネージャーを務めた3案件において、メガバンクCIO副社長賞を受賞。経営学修士(MBA)

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