一見、利便性は高そうだが、いまだに残る数々の問題点
遠隔診療を実行する際の基本的な流れは、以下のようなプロセスをたどる。
①アプリをインストール
②アプリで診察の予約
③ビデオ診察
④カード決済
⑤処方箋の送付 or 薬の配送
上記のプロセスを見ればわかるように、例えば、毎年同じ時期に同じ薬を飲めばいい花粉症の患者などにとっては非常に魅力的である。オンラインで手軽に受診し、なおかつ薬を家まで届けてもらえるのだから。
だが、一般的に普及するには、まだまだボトルネックがある。まず、遠隔診療だけで治療を完結することが認められていないのだ。そのため、必ず1度は外来を訪れ、対面での診療を受ける必要がある。また、遠隔診療の仕組みを導入している医療施設の数も、少しずつ増えているとはいえ、まだまだ少ない。全国に約18万もある医療施設の内、多く見積もってもせいぜい1000施設程度に過ぎない、というのが現状だ。つまり、遠隔診療を受けたいと思ったら、その仕組みを導入しているクリニックを探し出し、近くになければ、遠くのクリニックまで出向かなければならないという事態になる。受診の手間を軽減するための遠隔医療だというのに、わざわざ遠出をしなければいけない。これでは本末転倒だ。
医師サイドの目線で見た場合にも問題点が存在する。既存の診療報酬制度の上では、遠隔診療をすることにメリットがない。「対面で診察した方が儲かる制度」になっているからだ。また、「どんな疾患だと安全にオンライン診察できるか」を研究し、明確な方向性を示すような成果がまだ十分に揃っていない、という実情もある。そのため、「遠隔医療では安全な診療ができない」と考える医師も多いのだという。