こうして強く共感を覚えた私は、面白半分な気分も少しあって、8つのプラクティスに対し、現時点の自分にスコアをつけることにした。「8つだから80点満点にしよう。10点がベスト」とルールを決めたのだが、その結果を見て、意気消沈。自分が思っていたよりもずっとスコアは低かった。8つのプラクティスに重要さの順位をつけるとすれば、私は6番、1番、4番、8番、(この順番)だと思ったのだが、あなたならどうだろうか? 8つのうちどのプラクティスをあなたなら重要視するだろう? 私の中でベクトルとなったのは、自分が「未だ不十分な個所」であった。
特に今日から取り入れたいと思ったのは6番の「They were focused on opportunities rather than problems(問題よりオプチュニティへフォーカスをした)」のテーマだ。実はここでドラッカーは良いリーダーの例として日本企業全体を挙げている。「日本では優秀な人材を最高のオプチュニティと引き合わせるグレートな習慣がある」と言及している。「日本の人事部はこのタスクを大きな役割とし、6か月ごとに、2つのリストを作成、マッチアップ。それが日本のビジネスの強みだ」とドラッカーは認識している。
当時のドラッカーの視点が現在の日本企業に当て嵌まるか否かはさておき、コンサルタントがリーダーを目指す上で、オプチュニティにフォーカスすることこそが大事だと思う。そして、更に一歩踏み込んで、2017年末の現時点の日本こそ「日々の問題解決に追われる考えからオプチュニティにシフト」したほうが効果的なのでは、と感じた。
次に、気になったのは「What needs to be done?(これからなにをやるべきか?)」の点。事業を行う上で、リーダーが必ず直面するのが、以下の二つの対峙である。
1)「私がこの組織とビジネスのためになにをやりたいのか」
2)「この組織やビジネスは私になにをやって欲しいのか」
真正面から突き進んでしまいがちなのが、前者。「さぁ、リーダーになったぞ、これからは自分のやりたいことをするぞ!私の世界を作り、天下統一をはかるんだ」というわけだ。しかし、ドラッカーはここでGEの旧CEOのジャック・ウェルチなどを例に挙げ、彼の成功理由はまさに後者にあったと述べる。当初から、ウェルチ氏の場合、やりたいことが海外市場の拡大にあった。しかしGEが必要としたのは業績がNo.1、No.2になれないビジネス市場からの撤退。彼は、考えたあげく、GEとして自分にしかできないことにフォーカスすることにした。他のことは別の幹部に任せることにしたのである。
3つ目に挙げたいのが「They took responsibility for decisions(決断に対する責任を取った」である。決断をした結果、アクションを起こす。その際に見落としてしまいがちなのが、「だれが」、「いつまでに」、「どの組織の人を巻き込んで/コミュニケーションを通して」だ。明確にすることであいまいな役割や責任逃れを防ぐ:「Very often it shows them that their decisions didn’t produce results because they didn’t put the right people on the job(決断が結果を生まなかったよくある理由として、その仕事に最適な人を当てなかった)」。この一文で、ドラッカーはリーダーになるべき人は常に「適材適所」を深く理解しなくてはならないと一貫して言っている。
4つ目は”I”ではなく”We”の重要性。”We”はリーダーには必要不可欠の言い回し。最終的な責任はリーダーが取るものの、組織を引っ張る上で、その全社員の信頼が必要になってくる。その場合、自分のニーズより前に、組織や社員のニーズを置くことが信頼へと直結する。”We”に含まれる意味はそこだ。
ドラッカーは、ルール(原則)として「リーダーはまず聞く」、そして「最後に喋る」と述べた。ドラッカー自身コンサルタント、著名大学教授、ビジネス界の長老として65年間あらゆる経営者の言葉を聞いてきた。また、亡くなる約1年前、限られた時間の中で上梓したこのリーダーシップ論の記事は彼の最後の喋りの一つになった。
結局、人生には難しい構図を描く必要などなく、シンプル且つマインドフル(Mindful)に行動を起こすことこそが成功への道なのかも知れない。ドラッカーの博識に感謝の意を込めて、今日も切磋琢磨して、一所「賢明」に励もうと思う。