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【DX入門】企業目線だからわかりにくいDX、私生活で起きる変化を予想しよう

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なぜ、あらゆる企業がDXに躍起になっているのか?

 今や全ての業界でDXが必要とされているといっても過言ではない。その背景にあるのは企業を取り巻く環境の変化だ。

 顧客接点であるビジネスはよりユーザー中心になり、デジタルを使ってサービスに付加価値を付けていかねばならない。社員の働き方は生産性向上が求められ、デジタル活用で結果を出さねば社員満足度が下がっていくことになる。また、業界内にディスラプターという新たな競合が登場してくると、これまでの競争環境が一変してしまう可能性がある。

 つまり、企業を取り巻く環境が全方位的に変化し、生き残るためにはデジタルで企業を変革することが必須になっているのだ。「変わらねば終わる」という危機感が募り、とにもかくにもDXといった状況にある。

           

図1:周囲の変化が、企業にDXを求めている

なぜ、一般消費者にとってDXはピンとこないのか?

 しかし、企業にとっては躍起になるほど重要なDXであっても、一般消費者にとってはまだ身近なものになっていない。DXという言葉を聞かない日はないのだが、自分の生活がデジタルで変化していく様子は実感できないからだ。

 実感できない理由の1つは、世の中のデジタルサービスの多くがまだデジタルネイティブ向けということだ。デジタルディスラプターの代表格である配車アプリの「Uber」、フートデリバリーサービス「UberEATS」、民泊紹介サービス「Airbnb」、動画配信サービス「Netflix」などは、画期的なサービスであることは間違いないが、まだ老若男女問わず利用されているわけではない。デジタルネイティブがコアユーザーであるうちは、変革が意識されることがないということだ。新サービスは当たり前のように生活に浸透していくのであって、既存のトラディショナルサービスとの違いは意識されにくい。

 そして2つ目の理由は、まだ企業のDX活動が道半ばであり、一般消費者にとってインパクトのある結果が出ていないということだ。DXは企業の文化から変革していく長い道のりであるため、ビジネスで目を見張る効果が出るまでには3年以上を要することが多い。ゆえに、一般消費者が体感できるほどの変化には至れていないのだ。

必要なのは、DXが進むと自分達の生活がどう良くなるのかを理解すること

 つまり、ほとんどの一般消費者にとって、DXとは未だ対岸の火事なのである。ということはDXに励む企業の社員であっても、自分自身の生活がこれからどう変革していくのかイメージできているとは言い難い。

 デジタルによってもたらされる変革を想像するためには、私生活をイメージして考えてみると良い。「自分達の生活がどう変わるのか」を具体的に想起できるようになるからだ。また、変革は一気に到来するものではなく、徐々に生活が便利に変わりゆくものと理解しておくことも肝要である。

      

図2:デジタルが生活に溶け込んでいく流れ

 図2は、デジタルが段階的に生活に溶け込んでいく流れをイメージしたものである。

 【Step1】ではまず、これまでリアルで行っていたことが、デジタル化されていく。いわば“置き換え”のようなイメージである。

  “IoT家電” が普及していくと、家の中のあらゆるモノがインターネットに繋がっていく。すると、「スマホで玄関の鍵を開ける」、「朝になったら自動でカーテンが開く」といったリアルからデジタルへの行動変換が起こっていくというわけだ。

 また、コロナ禍で浸透した「UberEATS」や「出前館」のようなデリバリーサービスは、スマホを操作するだけですぐに食べ物が届くという画期的なお手軽さを実現できた。デリバリーの方法が電話からスマホへと置き換わったことで、デジタル化による恩恵を受けられるようになったのである。

 【Step2】では、デジタルで行動したことがリアルにも反映され、より生活が便利になっていく。

 例えばレストランに行く前、事前にスマホで注文しておくと、来店するとすぐに商品が出てくるようになる。実際、コロナ禍の3密を避けるため、迅速にテイクアウトできる仕組みを導入している店舗は増えているが、これはデジタルを上手く使ってリアル店舗の利便性を進化させた結果である。

 このようにデジタルの進化がリアルにまで影響を及ぼすのがStep2の大きな特徴だ。これからはリアルとデジタルの境界線が薄れていき、両者の融合が始まっていく。このことをOMO(Online Merges with Offline)と呼ぶのだが、このキーワードを見聞きした人は多いのではないだろうか。

 そして【Step3】に到達すると、デジタルでの行動履歴が十分に蓄積され、自分に必要な情報が選別されるようになる。いわば、「自分だけのデジタル体験」ができるということだ。

 例えば、ニュースは何でもかんでも速報が伝えられるのではなく、自分の関心あるものだけを選んでプッシュ配信されるようになる。「もう見飽きた」と思うような芸能人のゴシップネタなど、煩わしいと思うものは配信対象から除外することができるようになるだろう。「LINEニュース」などは既に、ユーザー属性に合わせて表示する内容を変える仕組みを整えているのをご存じだろうか。先進的なサービスを注意深く見ていれば、このような変化にも気付きやすくなる。

 また、過去に行ったことのある飲食店は、いつ誰と行って、何を注文したかなど、自分の知りたい情報を振り返ることができるようになる。特に感動的だった料理などは、「この料理はどういう理由で美味しかったのか」というエピソードと共に記録できると、自分だけの役立つデータとなるだろう。何でもデータ化されるということは、消したい過去は自由に消せるというカスタマイズ機能も付与されることになる。例えば昔の恋人と行った店など、人にはあえて消したい履歴も存在するため、自分自身で情報を管理できることが大事な要素となっていくというわけだ。

   

 ポイントは、「もっとこんな情報があったら良いのに」や、「こんな情報はもういらない」という具合に、自分で自在に情報の取捨選択ができるようになるということだ。個人情報に対して盲目的に批判するのではなく、どう使われると自分自身にとって有意義であるかを考えることが重要である。

個人情報は確実に蓄積され、自分のデータを自分で確認するようになる

 このように段階的に生活が変わっていく流れを理解すると、DXがもたらす未来を予測しやすくなる。Step1はまだ「単なるデジタル化」に過ぎないともいえるが、Step2からは人々の生活を一変させる領域に踏み込んでいくことになる。

 そして、そんな未来を手繰り寄せるために必要なのがデータ活用である。個人データがどんどん蓄積されていけば、消費者に合わせた最適なサービスへと進化していく。世の中では個人情報を取ることに対して批判的な反応が多いが、確実に情報は蓄積され始めていることは知っておいた方が良い。例えばGoogle Mapsを使っていれば、知らないうちに自宅の場所が認識されていることに気付くはずだ。

 多くの人々は、知らないうちに自分の情報が使われることを嫌う。しかし、自分のデータを自分のスマホの中だけで見るのであれば許容できる可能性が高まるのではないだろうか。そして既にそのようなサービスは始まっていることは把握しておいた方が良い。

    

 言い換えるならば、ご自分のスマホの中で着々と起きている変化に注目してみてほしいということだ。例えば、愛用しているアプリやWebサービスのどこで「自分データ」が活用されているのかを探り当ててみる。そうすることで「DX進展の兆し」を確認できるかもしれない。

執筆者 Profile

チーフエバンジェリスト / デジタル・イノベーション・ラボ所属八木 典裕

専門分野
DX戦略、DX人材育成、デジタル部門創設、新規事業立案、デザインシンキング、ブロックチェーン、ドローン

当サイト編集長。大手IT企業を経て現職。
2016年のデジタル・イノベーション・ラボ創設時からデジタルの専門家として活動し、DX関連の様々なプロジェクトを主導。R&Dの調査・研究、DX戦略立案、DX人材育成、新規ビジネス創出などのテーマに携わる。ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』、『 3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』、『データレバレッ ジ経営』(共著/日経 BP 社)、『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)などがある。

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