デジタルトーク

2021.02.05

共通 DX人材は糸の切れた凧

DX人材になれば、引っ張りだこ。自身のキャリアアップにつながる

「企業は変わらなければならない。」
 これはDXに挑む企業に課せられた至上命題であるが、既存ビジネスを変革していかねば取り残されるという概念は、多くの企業に浸透してきた。猫も杓子もDXといえるほど勃興している現状にあるが、デジタルの力を引き出し、企業を変革に導くことができる “DX人材”は、どこにでもいるものではない。だからこそ大きな目標を掲げてDXに挑んでいる企業は、人材確保が喫緊の課題となっているのであり、“DX人材”の市場価値は急速に高騰し始めているのだ。

 企業が本気になって変革に挑み始めたからこそ“DX人材”のニーズが高まっているわけだが、これまでのやり方を抜本的に変えるための原動力となるには、当然ながら際立った能力と幅広い能力の双方が求められる。そのため、デジタルテクノロジーに詳しいだけでなく、豊富な実績も兼ね備えておく必要がある(図1参照)。
 おそらく、社内を見渡しても適任者はなかなか見つからないだろう。だからと言って、若手人材の育成から始めようにも、多くの時間を要するし、そもそも育て方がわからない。つまり、外部から採用する動きが活発になるのは、当然の流れと言えよう。日本では2020年後半から、“DX人材“の外部採用が加速し始めているように感じる。
 多様な能力が求められる“DX人材”であるが、変革請負人という側面から捉えれば、プロ経営者に近い役割とも考えられる。プロ経営者は社外から「雇われ社長」的に招聘され、会社を立て直すと他の会社へと移っていく人物のことを指すが、“DX人材”も同様に、会社の変革が終われば旅立っていく渡り鳥のような存在になりやすい。もし、長く残って活躍してほしい人材を求めている場合は、会社側としては注意が必要だ。

世の中でどれだけデジタル関連の人材が求められているか

 高いデジタルリテラシーを有する人材は、確実に求められている。

 経済産業省が2018年に発表したDXレポートでは、日本企業のデジタル変革を阻む課題として「2025年の崖」と題して警鐘が鳴らされた。この「2025年の崖」で語られているIT人材不足の問題は深刻で、2025年には人材不足が 約43万人まで拡大すると書かれている。

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」によると、従来型のIT人材は余剰が出る一方で、先端IT人材(いわゆるデジタル人材)の需要は年々増していき、2025年には32万人以上が不足、2030年になると54万人以上も不足すると記載されている。
(参考:情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」)

 このように官や公的機関からも、デジタル人材の必要性が発信され始めているなか、菅政権において大きな期待が寄せられているデジタル庁の動きも注目される。デジタル庁は、デジタル人材を民間から多数採用することを計画している。なぜならば、中央省庁の中にはデジタルに精通した適任者はほとんどいないからであり、外部からの人材採用は必須とも言える状況だからである。

 このことは何も官に限った話ではない。日本企業も同様に、デジタル人材を社内で調達することが難しいため、本気になって変革に挑む企業が、こぞって人材の獲得競争に乗り出しているのは当然の流れなのであろう。

大企業は既にDX人材を招聘し始めている

 デジタルの知見を有する人材の招聘は、数年前から始まっていた。例えばデータサイエンティストなど、高い報酬で採用される事例が増えてきた。アメリカでは、2019年時点のデータサイエンティストの平均年収が約1,200万円となっており、これは全業種のなかで最も高額となっている。オラクルが約6億6,000万円という高額で人材を採用したというニュースも話題となった。
(参考:オラクル、600万ドル(6億円超)を提示。AI人材の獲得競争が過熱。

 日本でもデジタル人材に対する報酬の高騰は話題となっている。富士通、IHI、NTTデータ、東芝、NECなどは、役員並みの好待遇で人材招聘に動き出していることが話題となった。
(参考:いきなり年収2000万円!今アツい仕事の真実IT人材争奪戦(1)年収3000万円の衝撃

 このように、人材招聘の動きは加速し始めているが、今後はデジタルに詳しいだけではなく、変革実現にも寄与できる“DX人材”が求められるようになる。既存の文化や仕組みと向き合い、それをどう抜本的に変えていけるか。様々な反発に目をそらすことなく、一つずつ壁を越えていける人材こそが重宝されるだろう。
 具体的には、図2のように取り組みを推進できる人材こそが“DX人材”ということだが、そのために求められる能力は、例えば以下のようなものが挙げられる。

・高いデジタルリテラシー
 ・デジタルテクノロジーに詳しい
 ・アジャイルやデザインシンキングといった新たな手法に詳しい
 ・データサイエンスの知見がある

・デジタルの実績が豊富
 ・デジタルを活用した経験が豊富にある
 ・DXに向かうための戦略を立案できる
 ・デジタル案件の成功と失敗の経験を持つ

・変革を推進するための経験とノウハウ
 ・気付きと発見を繰り返し、変化を生み出せる
 ・ユーザー視点でビジネスを変えられる
 ・オペレーション視点で業務を改善し、生産性を向上させられる

・変革を必達させるためのコミュニケーション能力
 ・既存部署と上手く連携できる
 ・新たな目標に向かうための潤滑油となり、一致団結させる接着剤ともなる
 ・熱いパッションを持つ

 これらをより多く兼ね備えた人材が、DXという抜本的な変革に向かう推進リーダーとなっていくが、該当する人材は極めて稀有な存在と言えるだろう。企業としては、招聘できる外部人材がいるのであれば、三顧の礼で迎えたくなるものだ。

市場価値を高めるDX人材の歩む道とは?

 “DX人材”とは、会社が目指す変革へと導く役割を担うため、能力や経験において高いハードルが課されるだけでなく、高度なマインドセットまで要求されることになる。「企業価値を高める」、「社会課題を解決する」といった確固たる目標に対し、自ら挑戦できる人材こそがふさわしい。また、絵に描いた餅で終わらぬよう、取り組みを完遂するための課題発見力や課題解決力も備えている必要がある。加えて、周囲をDXの渦に巻き込み、推進していく能力まで求められる。

 マインドセットを兼ね備えている人材であれば、かねてより自らの意志をもって行動に移してきたに違いない。つまり、やらされ仕事では満足できない人材と言えるため、企業変革の取り組みに区切りが見えたとき、やり甲斐のある新たな仕事が見当たらないと、次の職場を探しに行ってしまう可能性が高い。

 つまり、“DX人材”に首輪をかけて飼いならすことは困難なのであり、いわば「糸の切れた凧」のような存在なのだ。企業としては活躍できる場を提供し、DX人材とともに変化し続ける考え方が重要となるだろう。新たな文化を創っていく覚悟が人材を留めおくことにつながり、次なる変革リーダーを育成し続けるサイクルを築けるようになる。
 せっかく高い報酬で高度な人材を招聘するのだ。変革を一過性で終わらせるのではなく、会社にとってもDX人材にとってもメリットのある、Win-Winの関係を構築していきたい。

 「企業は変わらなければならない」から「企業は変わり続けなければならない」へ。このチャレンジ精神が、“DX人材”を活躍させ続けるポイントとなるだろう。

チーフエバンジェリスト 八木 典裕

大手IT企業を経て現職。金融・製造・通信などの業界を中心に、IT 戦略立案から実行まで幅広く支援。直近は、DX、新規ビジネスの創造などをテーマとしたプロジェクトを主導。
ブロックチェーン、AIの技術研究や実証実験もリード。
主な著書に『デジタルトランスフォーメーション』『3ステップで実現するデジタルトランスフォーメーションの実際』『データレバレッジ経営』(共著/日経BP 社)などがある。

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