デジタル庁は世論を味方にできるか?
情報操作が功を奏した本能寺の変だが、これは孫子曰く「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」に通ずるものがある。敵の実情を把握し、味方の実情も把握していれば百戦したとしても危険はないという意味だが、大きな物事を成功させるには情報力が力を発揮するということだ。
では現代に目を向けると、新たに発足した菅政権において、目玉施策であるデジタル庁が成功するかどうか、これから大きな局面を迎えていくことになる。菅総理は2020年9月16日、総理就任を受けての記者会見で、デジタル庁を新設することを発表した。そして、その基本方針をまとめる役割は、デジタル改革相のポストに就任した平井大臣が務めることになり、現在急ピッチで検討が進められている。2020年中に基本方針を定める方針とのことだから、政府の取り組みとは思えない驚きのスピード感であり、このままいけば世間に幸先の良い情報を伝えられそうだ。
ただ正直、まだまだ国民の期待値は高くないように思える。平井大臣が会見で”DX”や”CX”といったデジタル用語を使っただけで、「国民が理解できないフレーズを連発している」と否定的な報道をされたこともあった。デジタルに慣れていない国民にとって、デジタルアレルギーは想像以上に大きい。政府としては、よほど戦略を練らないと世論を味方につけるのは難しいだろう。
また、多くの国民にとって、デジタル庁が具体的に何を実現してくれるのか、想像がつかないことも期待が持てない理由であろう。「我々の生活を便利にしてくれる」というイメージが湧けば、自ずと期待は高まっていくため、情報操作も重要になってくる。
2000年のe-Japan戦略からIT革命に取り組んできたものの、未だ大きな成果を出せていない政府にとって、今回こそはと意気込むデジタル庁とはいえ、その成功確率は正直高くない。それでも、政府の打ち出す資料や平井大臣の講演を見聞きすると、期待を抱いてしまう条件が揃っている。その主な理由を2点、ご紹介したい。