デジタルトーク

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2017.12.12

製造 AIスピーカーはディスプレイと組み合わせて真価を発揮する

ついに日本に上陸したGoogle Home

アメリカではアマゾンの「Amazon Echo」が2014年11月に発売され、他社に先駆けて発売したことで一気に市場を独占できた。2017年5月時点では約7割ものシェアを誇っている。
ITビッグ5のうちGoogle、Apple、Microsoftなども参入し、音声アシスタントの機能を持つAIスピーカーの市場は盛り上がりを見せている。「Amazon Echo」の独占を阻止すべく対抗策を打ち出しているが、まだまだその差は大きいというのが現状だ。

一方、日本では2017年10月6日にグーグルが先んじて「Google Home」の発売を発表し、市場に導入され始めた。アマゾンも「Amazon Echo」の発売を2017年11月8日に発表したが、消費者の手に届くまでまだ少しの猶予がある。Googleがここで一気に日本でのシェアを伸ばすことができるかが見所だ。
私自身も「Google Home」を購入して試してみたが、まず感じたのはさすがGoogleのAI技術は高性能だということだ。音声認識の精度が高く、ほとんど聞き間違えることがない。少しうるさめの居酒屋の中でも実験してみたが、周りの雑音に邪魔されることなく問いかけを正しく聞き取ってくれた。呂律の回っていない酔っ払いの問いかけに関しては、さすがに例外であったが。

また、スピーカーの音質の良さも特徴的だ。発売前の評判通り、音楽スピーカーとしての用途も大いに期待できる。「Google Home Mini」は音質が劣るとされているが、こちらは家庭に複数台置く場合の用途を想定されているからであり、音楽を聞く際の音質を求めるのであれば、「Google Home」を選択しておくと良いだろう。

使い勝手はまだまだ

しかし、1ユーザーの観点からは、使い勝手という意味ではまだまだと感じる。日々の生活に溶け込むようなユースケースはそれほど多く出てこない。確かに天気を調べたり、わからない単語の意味を調べたりといった、簡単な点では正確に任務を全うしてくれる。ただ、インタラクティブな会話ができないため、一問一答に過ぎない対応となってしまう。

また、他サービスとの連携もまだまだ整備されていない。「宇多田ヒカルの音楽をかけて」とお願いしても、全然違う音楽が流れてしまう。これは決して「Google Home」の性能が悪いわけではない。AIで確実に音声認識が出来ているにも関わらず、連携先のサービスが対応し切れていないのだ。この点は要注意で、グーグルのAIがどれだけ優れているとしても、連携先の影響で「Google Home」は使えないという評価に陥りかねない。使えないというレッテルが貼られないよう、如何に便利なユースケースがあるかを消費者に届けていくことが大事であろう。

一方で、アマゾンはユースケースの多さで大きく先行している。「Amazon Echo」にはAI音声アシスタント「Alexa」が搭載されており、Alexa用に開発されたアプリがスキルと呼ばれている。このスキルの量が、いわば「Amazon Echo」で出来ることの数になる訳だが、アメリカで現在150,000スキルを超えていると言われている。この数からしても、ユースケースが圧倒的であることがわかるのだが、日本でも最初からいきなり250以上のスキルを備えると言われている。もし日本での発売後すぐに、「Google Home」より圧倒的に「出来ることが多い」と見せつける結果となれば、一気にアマゾンのシェアが膨れ上がるかもしれない。

アマゾンが日本に上陸する前に、グーグルは少しでも影響力を高めたいところであろう。グーグルの強みは「AIの精度」と「音質の良さ」だ。弱みは「出来ることの少なさ」であろう。強みを活かし、弱みを保管する戦略を立てられるか、その取り組みに待ったなしの状況にある。

音声だけでは限界がある、ディスプレイ付きが本当の価値をもたらす

アマゾンにしてもグーグルにしても、現在のAIスピーカーの主流は音声で受け答えするものである。しかしアメリカでは「Amazon Echo Show」というディスプレイとカメラが搭載された製品が出ており、さらに快適なカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を提供してくれている。

音楽を再生する時には歌詞が表示され、カラオケとしての機能も加わった。銀行口座の入出金記録の確認も可能で、音声で聞くよりもディスプレイに表示してもらったほうがゆっくり確認しやすいというメリットがある。
更にEchoにはDrop Inという相手が通話に応答しなくても回線をつなげられる機能があるのだが、カメラ機能と組み合わせれば「見守りサービス」が可能になる。田舎にいる両親の見守りを行うこともできるし、職場から自宅の様子を確認するのもできるようになる。
今後はディスプレイが付くことによって、アシスタント機能としての進化が広がるに違いない。Googleも先日、スピーカー付きの製品を開発中と発表している。これからはディスプレイを活用したAIスピーカーがユースケースを拡大させていく。その時まで業界内の覇権争いから目が離せない。

パートナー 八木 典裕

大手IT企業を経て現職。デジタル・イノベーション・ラボ所属。
金融・製造・通信を中心に、IT戦略立案、ITコスト最適化、全社システム刷新など多数のプロジェクトに従事。
直近ではデジタルを活用した新規ビジネス創造などに携わっており、社内ブロックチェーン研究会やAI研究会の リーダーとして事例調査や技術研究を推進中。
共著書に「デジタルトランスフォーメーション」、「デジタル化を勝ち抜く新たなIT組織のつくり方」など。