デジタルトーク

2020.10.30

小売 新たな消費行動「パルス消費」へのアプローチ

何気ないスマホ操作から一気に購入まで完了させる新たな消費行動

“パルス消費”という言葉を聞かれたことはあるだろうか。Googleが2019年に提唱した新たな消費行動であり、「スマホ操作中に瞬間的に物が欲しくなり、商品を見つけ、購入まで終わらせてしまう」ものである。
何気なくスマホを操作する時間が増え、移動中や就寝前などの隙間時間をインターネット上で過ごす人は多くなった。SNSやECの普及によって、気になった商品はいつでも情報を取得できるし、購入まで済ませることもできる。このような背景から、AIDMAやAISASといったマーケティング用語で説明されてきた「顧客が興味を抱いてから、じっくりと購入に至る」というカスタマージャーニーが当てはまらない消費行動が増えているのだ。スマホ操作中に、たまたま見つけた知らない商品であっても、デジタルネイティブ世代は興味・関心を持てば購入をいとわない。購入前に、リアル店舗で商品を手に取って確認する必要などないのだ。インターネット上で商品を見つけ、ECアプリを開き、購入まで済ませてしまうことに抵抗がなくなってきている。

パルス消費を生み出すSNS×ECサービス

パルス消費が起こりやすいタイミングというのは、上述した通り隙間時間にある。人によって隙間時間の過ごし方は様々だが、多くの人が訪れるSNSには、パルス消費に適した仕組みが出来上がりつつある。投稿画像へのタグ付け機能は、もともとSNS内で遷移するものであったが、ECサイトに遷移する機能が追加されたのである。これは、すでに様々なサービスに搭載され始めている。
<主なSNS×ECサービス>
図表にまとめた事例のうち、特に利用者数の多い3サービスの特徴を見てみよう。
①.    WEAR
日本を代表するファッション特化型ECサイト ZOZOTOWNを有する株式会社ZOZOが運営するコーディネートアプリ。月間アクティブユーザー数は1,000万人を超える。モデルや俳優からショップスタッフなどの一般人まで様々な人物が自作コーディネートを掲載しており、コーデ投稿数は900万件以上となっている。
特徴としては、タグの遷移先が”UNIQLO オンラインストア”や”CONVERSE OFFICIAL ONLINE SHOP”などのブランドが運営するECサイトと、ZOZOTOWNの2パターンあることが挙げられる。ZOZOTOWNにアクセス出来るため、ユーザーは類似商品やお勧め商品など、ブランドに捕らわれない多くの情報を入手することが出来る。

②.    RED(小紅書)
中国最大のファッション・化粧品に特化したソーシャルコマースプラットフォーム。2013年に画像投稿SNSとしてリリースされ、2014年からECサイトへ飛ぶタグ付け機能を搭載した。ダウンロード数は3億人、月間アクティブユーザー数は1億人を突破し、中国では若い女性を中心に根強い人気SNSとなっている。
インフルエンサーを始めとする個人ユーザーが、自らの投稿にタグを付けられることが特徴である。購入につながった時は販売元からスポンサー料が支払われるため、多くのタグ付き投稿が見受けられる。

③.    Instagram
Facebookが運営する写真共有SNSの代表格。特定のカテゴリに特化せず、様々な投稿が見られる。月間アクティブユーザー数は今や世界10億人以上、日本だけでも3,300万人に上る。2017年からECサイトへ飛ぶタグ付け機能が導入され、日本でも2018年から使えるようになった。
Instagramの特徴としては、店舗・ブランドのアカウントが申請した場合のみ利用できるよう制限されており、一般ユーザーはECへアクセスできるタグを付けられないことが挙げられる。しかし、店舗やブランドのアカウントを複数フォローし、ファッション雑誌のように利用するユーザーが多く、タグ付け機能を制限していても十分利活用されているようだ。

SNS×ECサービスの特徴を見ていくと、2つのパターンが見受けられる。
1つ目はWEARやREDのように、ファッションなど特定カテゴリに興味を持つ人が集まる場所で情報発信する「特定カテゴリ特化パターン」だ。興味を持つユーザーだけが集まっているため、ユーザー母数は少なくなるが購入につながる確率は高くなる。
2つ目はInstagramのような巨大SNSで、ユーザーの興味に傾向がなく、数多の情報が発信される「カテゴリ不特定パターン」だ。ユーザーの母数は膨大になるものの、ユーザーが商品に興味を抱き、購入に至るまでの確率は低くなるため、巧妙な仕掛けづくりが求められる。
<SNS×ECサービスの特徴2パターン>
パルス消費での”売上げ”を狙うのであれば、ターゲットとなる顧客を特定し、興味を惹きつけやすい「特定カテゴリ特化パターン」から始めると良いであろう。

パルス消費を生み出すためのポイント

ECへのリンクを組み込むこと自体は様々なコンテンツで可能だ。例えば自社のWebサイトに掲載する商品紹介コラムにて、商品画像にリンクタグを埋め込むだけで良い。しかし、ただタグを付けただけで、簡単に購入につながるわけではない。
では、どのようにユーザーを導けば良いのか?
意識すべきポイントは2つある。
<パルス消費に導く2つのポイント>
1.    ユーザーを惹きつけ、コンテンツを閲覧させる
パルス消費は、何気なくスマホを操作しているユーザーの興味を、いかに惹きつけるかが重要な観点となる。興味を惹きつけるために、そのメディアを利用しているユーザーを分析し、ペルソナに合わせたコンテンツを発信していかねばならない。
そして、どのようなペルソナであっても、コンテンツを掲載する場所として”接点頻度は高く、拘束時間は少ないサービス“を選ぶことが鉄則となる。例えば、接点頻度の低い銀行アプリなどでコンテンツを用意したとしても、そもそもの閲覧頻度が少ない為、パルス消費の発生は期待できないということになる。また、Amazon Primeなどのストリーミングサービスでコンテンツを用意したとしても、ユーザーは動画の視聴に時間を拘束されているため、他ページへアクセスさせることは難しい。
パルス消費につなげるには、なんとなくアクセスしてしまう接点頻度の多さと、いつ離脱しても問題のない拘束時間の短さを併せ持つサービスを選び、興味を惹きつけるコンテンツを用意していくのだ。

2.    6つの要素で購入につなげる
興味を惹きつけ、コンテンツを閲覧させることができれば、あとはいかに購入につなげられるかだ。具体的には、Googleが整理しているパルス消費が起きる要素を、コンテンツに盛り込んでいくことになる。各要素に対し、適した商材を下記の図に列挙しているので、ご参照いただきたい。商材によって売り込む要素が異なるため、どの要素を訴求するのが効果的か事前に特定しておく必要がある。
<パルス消費が起きる6要素と、適した商材例>
どの要素を訴求するか特定したら、顧客の感情を揺さぶる仕掛けをコンテンツに盛り込み、購入へ誘導する。顧客の心理を読み解くことが、パルス消費を生み出す可能性を高めることになる。

パルス消費を起こすには、「いかに掲載するコンテンツへ興味を惹きつけるか」と「いかに購買へ導く要素を盛り込むか」にこだわる必要がある。従来とは異なる新たな消費行動が登場したのは、大いなるチャンスが到来したということだ。パルス消費は一瞬の爆発的な興味と感心が原動力となるため、従来以上に緻密な顧客理解と、綿密な顧客心理を誘導する設計を行った企業が、チャンスをつかみとっていくだろう。

デジタルマーケティング担当 金澤 佑依

大手小売企業を経て現職。
金融、通信などの業界を中心に、レガシーシステム刷新プロジェクトのプロジェクトマネジメント支援に従事。ベイカレントのデジタル関連プロジェクトの支援、国内外のデジタル事例研究、デジタルマーケティングを担当。

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