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2020.05.20

食品 新型コロナで苦しむ飲食業界を救え!体質改善を見据えた飲食業界のビジネスモデル変革

補償・融資の効果は限定的~飲食業界の苦しい現状~

新型コロナウィルスが猛威を振るうなか、政府の緊急事態宣言に基づく外出自粛要請や休業要請、営業時間の短縮要請なども相まって、飲食業界は大きな損失を被っている。5月6日までの予定であった緊急事態宣言の延長も決定したことから、いまだ終息の目途はたっておらず、事業者は現時点の損失と、先行きの不透明さに頭を悩ませる一方である。

日本政府は当初、感染予防のための営業自粛はお願いするものの、損失に対する補償の設定に難色を示す状況にあった。だが4月末日現在は、持続化給付金の支給や賃料支援の検討、地方創生臨時交付金に関する利用要件の緩和など、補償に向けた施策を打ち始めている。更に、地方自治体においても、独自の休業補償を検討している状況にある。しかし双方合わせても、事業者にとって必要十分な補償になるとは言い難いのが実情だ。
対応スピードにも問題がある。種々の補償が支給されるのは一定期間後になる事が予想されているのだ。「2、3月の客足減少に伴い、当座の運転資金も準備できない」という切迫した状況の事業者を支援するための十分なスピード感は持ち合わせていない。既に赤坂では30件以上の飲食店が閉店に追い込まれており、吉祥寺で33年間続く老舗フランス料理店「芙葉亭」は5月一杯で閉店を決めたとのこと。※1※2事態は一刻を争うほど緊迫している。

つまり、経営の厳しい飲食店が困難を乗り越えるためには、補償頼みではなく、融資(借金)も検討せざるを得ない状況と言える。しかし、自粛要請に従ったことで借金を負わなければならないとなれば、今後の生活への不安を増大させることになる。また、自身の不安のみならず、大手ですら経営が厳しい飲食業界の現実を目の当たりにすると、閉店を決意する店舗も増えかねない。
飲食業界全体の士気低下から、市場が縮小していくというリスクまで考慮すると、ダメージは計り知れない。

では、飲食店に対する補償金が十分給付されれば良いのかというと、そうではない。
補償や融資(借金)で得られる金銭は、飲食店を存続させるための一時的な“止血”に過ぎないからだ。市場が変化しようとも、飲食を提供することで対価を得るという、本来の飲食店の役割に戻すことが必要なのであり、そのための支援こそが根本的に必要な“輸血”なのである。
本記事では、 『市場の変化に対応するために必要な、飲食店の体質改善に関する提言』をゴールとし、飲食業界に求められるビジネスモデル変革について考察していく。

“助け合いの輪”としてのクラウドファンディング

損失を受けた飲食店にとって最優先となるのが、直近で必要な運転資金を集める事である。補償や融資が限定的であるなか、常連顧客を中心とした「支援金や先払い募集」の動きが活発化し、止血を後押ししている。とりわけ、広範囲に募集をかけられるという点で、デジタルを活用したクラウドファンディングに注目が集まっている。

クラウドファンディングとは、不特定多数の人が、インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である 。
日本では東日本大震災における復興対応がきっかけで、クラウドファンディングが注目を集め始めた。「支援したお金がどのように使われるのかが分かる」、「少ない額から気軽に支援できる」などの点が、被災地復興の資金集めに大きな役割を果たし、脚光を浴びた。
クラウドファンディングは個人や団体・企業の大小を問わず、誰でもプロジェクトを立ち上げることができる。そして起案者が自らプロジェクトにかける思いを発信し、共感した人が手を挙げていく。そこには人と人とのつながりが生まれ、更に新たな理解者や支援者を得られることも大きな魅力となっている。
新型コロナウィルス対策の例としては、地域応援型クラウドファンディングサービスと標榜する「ActNow」が挙げられる。北海道の飲食業界応援プロジェクトが立ち上がり、わずか3週間で1,500万円以上の支援を集めることに成功した。集めた支援金の使い方は、「募金」や「お食事券の権利」になるという。

だが上記のような事例は、短期的な対処策に過ぎない。将来を見据えながら、顧客に飲食を提供し、対価を得られる状況につなげられるかが直近の課題となる。

止血から輸血へ!飲食の提供を具現化する取り組み

飲食店は現状を打開すべく、様々な手法で売上の確保に努めている。特に目立つのがデリバリーやテイクアウトの積極活用だ。
UberEatsや出前館に代表されるフードデリバリー代行事業者のもとには、「新たにデリバリーを始めたい」という飲食店からの問い合わせが急増している。
テイクアウトについても、多くの店舗が対応し始めている。レストランによる弁当の販売や、焼き肉店による生肉や調理前食材の販売など、経営者は工夫を凝らして飲食提供を試みている。

また、以上のような事業者の創意工夫を後押しするべく、デジタルを活用した様々な支援・取り組みが日を追う毎に増えている。デリバリーの委託サービスを始め、デリバリーに使うバイクや自転車の無償レンタル、ネットショップ出店・開設に関する期間限定の無償施策などを行う事業者が現れているのだ。
加えて、自治体や食べログなどの事業者は特設サイトを作成。デリバリーやテイクアウトに対応する店舗の「情報掲載」、「POP・ポスターひな形の無償提供」、「ネット印刷業者によるチラシ作成・配布の取り組み」といった、世間に周知する支援も始まっている。

飲食店を救う動きは多方面に広がり、「行きつけの店舗を救いたい」、「地元の飲食店に貢献したい」といった機運が高まりつつある。
例えば札幌市では、新聞配達所が料理宅配を代行する取り組みを始めている。地元の飲食店から「デリバリーを始めたいが人手が足りない」というニーズを聞き取り、実行に移したものだ。新聞配達所が、折り込みチラシによる宣伝、料理の宅配、集金までを担い、顧客が手数料を負担する。飲食店側の負担は一切ない。
“売上減で困っている飲食店”と“食事の手配に困っている高齢者や共働き家庭”の双方を繋ぐため、新聞配達所の宅配が支える。地域の中で経済を回すことを手助けし、自分達の売上も向上させる。まさに、「三方良し」の状況を作り上げているのだ。

これらの取り組みが、当座の飲食提供を支える長期的視点による継続性のある支援策の代表例であるが、同時に今後の飲食業界の在り方(ビジネスモデル)を変えるターニングポイントにもなり得ると推察できる。

市場変化に適応する体質改善で、飲食業界にビジネスモデル変革を

売上激減の飲食店があらゆる手段で収入を確保して、当座をしのぐ必要があることは間違いない。ただこれを機に、中長期的な目線でビジネスモデル変革の必要性に気付いていくことも重要である。
なぜならば、新型コロナウィルスの影響でいくら経済が停滞しようとも、人々の胃袋に収まる量は減らないからだ。人は財布の紐は締めても、食事の回数や食事量は大きく変わらない。にも関わらず、飲食店の売上が激減しているということは、「消費の減少」ではなく「消費の転換」が起きているということだ。この転換がコロナショック終息後の世界にも影響を与えるのであれば、ビジネスモデルの変革は必須ということができる。

現在の緊急事態宣言が解除された後も、依然として新型コロナウイルスの脅威を人々が持ち続け、ステイホームという社会的風潮は続いていくだろうと予測されている。人々の生活は変化し、ニーズも変化し、それらに応えられたサービスだけが脚光を浴びるようになっていく。その初期段階として、デリバリーやテイクアウトが勃興しているというのが現状だ。そのため、将来を見据えてビジネスを考えていく必要があるが、そのための観点は何か?現状起きている変化から発想を広げると、以下3点については検討しておいた方が良いと言える。

①    顧客の”不”をどうやって解消するか
直近では、顧客が外食に行けないことで生じる「不満」「不自由」「不足」「不安」といった”不”を解消するため、デリバリーやテイクアウトという手段が有効である。今後はあらゆる顧客の“不”にフォーカスし、解消方法を検討していく流れにすると良い。
例えば「今日は疲労困憊で自炊するのも面倒」という「不自由」があるならば、自宅まで料理をしに行くという店舗があっても良いかもしれない。「あの店の味を再現したいけど、どれだけ工夫しても再現できない」という「不満」であれば、テレビ電話で料理を教えるというサービスが成り立つ可能性もある。
出来合いの飲食を提供するだけでなく、サービスを提供するという発想を持てば、新たな収入源を確保できるかもしれない。

②    自分達の店の“宝”=資産を見直す
新たな取り組みには失敗がつきものだが、自分達の店の「宝」と呼べる価値を生かすことができれば、成功確率を上げることができる。
例えば経営に苦戦していたある洋菓子店は、その洋菓子店はチェーン店に対抗するため、150種類もの製品ラインナップを取り揃え、価格も安く設定していたが、正直商売が上手く行っていなかった。そこで、経営を改善するために“資産”を見直した結果、ケーキのスポンジを焼く技術が自分達の強みであることを発見。ロールケーキを主力商品として売り出す方針に変えたところ、1日に1,000人以上が来店する人気店へと変貌を遂げた。
このように「自分達の店の資産は何なのか」を具体的に掘り下げて考え、答えを導き出す事が出来れば、どこで勝負すべきかを自問自答できるようになるだろう。

③    来店できない顧客にどう価値を提供するか
自分達の価値を、いかに来店できない遠くの顧客に提供できるかが、重要な論点である。もし食材やレシピに揺るぎない価値があるのであれば、ミールキットをしつらえて販売する、という施策もあり得る。必要な材料とレシピを手にできた顧客は、店舗の味に近づける楽しみを味わうことができるだろう。「顧客の悩み相談に乗る」、「店主のトークがウリ」といった価値があるならば、Web会議を活用したオンライン店舗を開くことで、顧客と会話するという手段が解決策となり得る。
飲食店が提供する本質的な価値は千差万別だ。そのため、採るべき手段も様々だが、顧客にどうやって喜んでもらうかにこだわれば、これまでの常連客だけでなく、遠方のファンも獲得できる可能性があるだろう。

なお、飲食業界のビジネスモデルが変革されていくのであれば、その影響はおそらく業界内のプレイヤーにはとどまらない。
一例を挙げると、デリバリーやテイクアウトの需要増加に伴い、プラスチック容器の需要が高まったことを受け、問屋街である合羽橋は現在活況を呈しており、包装資材業界は供給が追い付かない事態になっている。
他業界のプレイヤーにおいては、飲食業界にもたらされる変化を想像し、先手を打つことは有効な取り組みだ。『消費の転換』が起きる時はビジネスチャンスが到来する。どの業界も他人事ではないことを理解し、絶えず変化に向けた検討を重ねておくべきだと言える。

シニアコンサルタント 清水 翼

大手通信会社を経て現職。
IT、通信、運輸業界を中心にDX戦略立案や、新規事業企画支援、業務改革支援、プロジェクト管理に従事。IT卸売業における営業経験を活かした、購買コスト削減やベンダー協業推進の知見も有する。

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