デジタルトーク

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2018.01.16

銀行・証券 ブロックチェーンの活用方法!エコシステムの発想で事業創出

必要性が実感しにくくビジネスモデルが描けない

ブロックチェーンとは分散型ネットワークにデータを登録する新たな仕組みであり、管理者が存在しないにも関わらず、データを改ざんすることが不可能な画期的なテクノロジーである。その効果を実証するために、国内でも多くの企業がPoC(Proof of Concept<概念実証>)に取り組んでいるものの、実ビジネスの事例がなかなか出てきていないのが実情だ。その理由の一つが、ブロックチェーンでなければならないビジネスモデルを描けていないということが挙げられる。

例えば、改ざんが不可能という大きなメリットがあるが、そもそも大企業がしっかり管理してきたシステムをブロックチェーンに置き換えることで改ざんを防げると言われても、必要性を実感しにくい。また、トレーサビリティ(履歴)を管理できるメリットもあるものの、ブロックチェーンでなければ透明性を保てないと言い切れるビジネスモデルもなかなか思いつかない。

「ブロックチェーンを使わなくても実現できるのでは?」という疑問を打ち返せず、結局、コスト削減を目的とした取り組みになりがちである。現状ビジネスの枠組みで想像を広げても、ブロックチェーンでなければ解決できない課題を見つけ出すのは容易ではない。シーズベースで睨めっこしているだけでは、画期的なビジネスモデルを導き出すのは難しいのである。

本人確認が確実に行えるウソのつけない世の中に

ではどうすれば良いかであるが、ブロックチェーンが活かされるニーズも考慮すべきということだ。その具体例としてエコシステム(プラットフォームを提供する企業と、それを活用してビジネスを行う企業の共存関係)によってもたらされる世界が考えられる。

エコシステムによってインターネット上のあらゆるデータが保管されるようになると、ウソの付けない世の中がやってくる。そこでは自らの履歴データが自分自身を証明する手段となるため、データの真正性を担保してくれるブロックチェーンは無くてはならないテクノロジーとして扱われる。あらゆる場面でスマートコントラクト(賢い契約)が実行されるようになると、自分自身で意識することなく支払いを行っているというケースまで出てくるため、どこかの大企業がデータを担保してくれるという訳にはいかなくなる。

この先、IoT(「モノ」がインターネットに接続され、情報交換で相互を制御する仕組み)を駆使することで、究極的にはすべての行動履歴が記録されるようになると言っても過言ではない。このようなエコシステムを実現するには、本人確認を確実に行えることが前提となる。そもそも、インターネット上では相手が信頼できるか疑わしい場面が多いが、この問題を解決してくれるのがブロックチェーンに他ならない。生活のあらゆる行動履歴を管理してくれるパブリックなブロックチェーンが登場すると、成りすましや詐欺といった犯行への対処が容易になる。

その理由の一つは、身に覚えのない行動があれば成りすましにすぐ気付けるという点だ。スマホアプリなどを使って、いつでも自分の行動履歴を確認できるようになると、自分の行動を振り返って、あり得ない履歴があれば気付けるようになる。さらに人工知能(AI)を駆使すれば、怪しい履歴を検知してくれるようにもなるだろう。

次に、インターネット上で見知らぬ誰かと取引する際に、相手の過去の行動履歴から信頼性を確認できる点が挙げられる。過去にたった2、3回しか行動履歴の無い人がいれば、不正なIDを使っているのではと疑うだろう。

エコシステムによって、人々が意識しない何気ない行動まで漏れなく見られるようになるため、同時にウソのつけない世界が広がる。行動のすべてがインターネット上で明かされるのはプライバシー上の問題もあるため、見せ方や使い方は考慮が必要だが、不正のできない世界にはなっていくだろう。
※この記事は、株式会社セミナーインフォ発刊「レギュレーションズ 2017 September」に掲載された内容を一部抜粋したものです。全体版をご覧になられる場合は下記ボタンからダウンロードいただけます。

パートナー 八木 典裕

大手IT企業を経て現職。デジタル・イノベーション・ラボ所属。
金融・製造・通信を中心に、IT戦略立案、ITコスト最適化、全社システム刷新など多数のプロジェクトに従事。
直近ではデジタルを活用した新規ビジネス創造などに携わっており、社内ブロックチェーン研究会やAI研究会の リーダーとして事例調査や技術研究を推進中。
共著書に「デジタルトランスフォーメーション」、「デジタル化を勝ち抜く新たなIT組織のつくり方」など。