(ア) 認知度の低さ
そもそも情報銀行という概念自体、一般的にはほとんど認知されていない。2019年6月「
官民データ活用推進基本計画実行委員会 データ流通・活用ワーキンググループ 第二次とりまとめ」の調査結果によると、PDS、情報銀行の概念認知は1割未満となっている。
消費者の多くは、自身の個人データを企業が裏で活用していることに対しての疑念や不安を抱いており、データを預けることに対して否定的な意見が多い。加えて、情報漏洩に対する危機感、データ管理の煩わしさ等もあり、利用したいという意向もそれほど高くない状況にある。まずはこれらの機運を変えていかなければ、情報銀行は事業として成立しそうにない。
(イ) 情報の分散
参入を表明している各社が情報銀行を本格的に事業化していけば、あらゆる業種や地域においてサービスが始まる可能性もある。しかし乱立すると困るのは個人であろう。利用したいサービスを見つけたとしても、同じような情報を複数の情報銀行に登録せねばならなくなる。
また、行動データや購買データを蓄積してきた企業としても、重要な情報をわざわざ他の企業に提供することに対するインセンティブがない。
そのため、個人データは多くのサイトに分散されたままの状態となり、情報銀行が発足したとしてもデータが分散したままでは、個人にとってもデータ活用企業にとっても利便性が悪く、パーソナルデータの効率的な利活用を実現するのは難しいであろう。
(ウ) ユースケースの不足
情報銀行は、データの預け手(消費者・個人)とデータの借り手(企業・店舗・自治体等)のニーズがマッチして初めて成り立つビジネスモデルである。需要がなければいくら情報を集めたところで事業として成り立たないが、現在行われている実証実験は、ユースケースがあいまいなまま情報を収集することに注力しているものも多い。このままでは個人データが集まったとしても、結果的に使われないサービスになってしまう懸念がある。
データ活用企業のはデータ自体が欲しいわけではない。自社にあったデータの活用方法を知りたいはずである。情報銀行としては、収集した大量のデータを分析し、そこから得られた”インサイト”を提供し、顧客に対してアクションを促す方法を提供することが重要だ。つまり、集めたデータが「どう使えるのか?」に対しても、答えを出さなければならないのである。
(エ) 個人に対する便益の低さ
有用なユースケースが見出せたとしても、データの預け手(個人)に提供できる便益がニーズをとらえたものでなければ、データは提供してもらえない。現状想定される便益は、ポイントやクーポンを提供するイメージが近いが、まだまだ最善策とはいえない。一般的なクーポンサイトを見ると、各個人のニーズにマッチしないものが多く、クーポンを選ぶ煩わしを感じるものもあるだろう。
個人に提供できる便益を、情報銀行の機能やサービス、使い勝手なども含めた形でとらえ、サービス全体の品質をどこまで高められるかが重要となる。
これらの課題を克服し、情報銀行が<広く>知られ、<企業にデータを>使ってもらい、<個人から様々なデータを>提供してもらえるようになるには、まだまだ多くの壁を乗り越えなければならない。
次回は、情報銀行の発展に向けた打ち手と、発展の起爆剤となりうる企業について考察する。
(後編に続く)