デジタルトーク

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2019.10.02

共通 デジタル時代におけるExpoの重要性

“彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず”

古くより有名な言葉であるが、現代において彼(敵)を知り、己を知ることは非常に難しい。昨今のテクノロジーの進化によって、他業界から突如として強力なライバルが出現し、昨日までのポジションが突如として崩れることが増えてきている。

そんな五里霧中の戦場において、Expoを中心とした商業イベントの重要性が高まっていると感じる。自社の立ち位置を示し、潜んでいた伏兵を発見し、同盟を組むことができるからだ。実際、こういった成果を期待して海外のExpoへ足を運んだ方も少なくないだろう。しかし、十分な手土産を持ち帰れた方はそう多くないのではないか。

NATOと揶揄される日本 ビジネスパートナーとしての不安

私も昨年度、大小合わせて10件ほどの海外Expoやイベントに足を運ぶ機会を得た。XX-Techや要素技術レベルで真新しいものは少なくなり、飽和状態に近づきつつあるように感じるが、依然として、情熱あふれる人達と議論を交わせることは心躍る刺激的な体験だ。こうした最先端を走る企業から我々日系企業や日本人はどう見えているのか、ふと気になり印象を聞くと、「良い技術を持っている」「品質に信頼がおける」等、好印象だった。

しかし、「ビジネスパートナーとしてはどうか」、と聞くと一転して、答えに窮する人が非常に多かった。とある人からは、NATO(No Action Talk Only、つまり口だけで、具体的な行動に繋がらない、の意)、と日系企業を揶揄する言葉があることを教えてもらった。その人も日系企業の部長クラスと繋がったと最初は喜んでいたが、いくら提案しても判断を先延ばしにされ、苦い思いをしたそうだ。

NATOとなってしまう根本的な原因の一つには、出張の目的意識に海外とは乖離があると感じる。日本企業にとって、Expoへの出展や参加はどこか本業の二の次な雰囲気があり、プロモーションまでをゴールにしている印象だ。事業創生・拡大の場と捉える人は少ないのではないか。まして、海外に出向くことは、特権やご褒美のようなイメージが根強く、実際そうであるケースも少なくないだろう。

では、Expoで同盟を加速し、事業貢献の場へと昇華させるためにはどうすべきなのか。
Expo参加の心得は3つある。
  1. 視察という名の旅行から脱却せよ
  2. 訪問者に裁量と失敗チャンスを与え、現地推進を加速せよ
  3. 会社の目的だけでなく、自身のパッションを持ち、人としても繋がることを意識せよ
1.    視察という名の旅行から脱却せよ
まずは、Expo訪問を「視察」と位置付けるマインドを捨てるべきだ。たしかに、かつてExpoは展示された品々から学びを得るための場であり、講義を受けるかのような一方通行のコミュニケーションが主であった。それゆえ、なるべく多くの人が現物に触れ、生々しい情報を持ち帰ることに価値があった。しかし今は違う。Expoは事業について検証・議論する場となり、コミュニケーションは最低でも双方向だ。講義を聞くお客様気分では議論に取り残されてしまう。まずは、自分たちが「何を検証し」、そのために「どんな情報を」、「誰から得る」のか。最低でもこの3点を明確に設定し、議論する準備ができていなければ、Expo訪問もただの海外旅行に終わるだろう。

2.    訪問者に裁量と失敗チャンスを与え、現地推進を加速せよ
加えて、NATOに陥りがちなケースは、良い議論ができたとしても帰国後は日々の業務や報告に追われ、徐々に立ち消えていくパターンだ。こうした事態を防ぐためにも、やはり現地で可能な限り議論を尽くし、次のマイルストーンを決めるべきだ。そのためには、例えば出張の延長や、次回の訪問日程をその場で決められる裁量を与えておくことも必要だろう。また、ここでのポイントはそうした行動や判断に対し、過剰に根拠や責任を追及しすぎないことだ。考えなしの行動を推奨するわけでは決してないが、思考を巡らし続け、社内説得に時間をかけては機を逸する。また、責任追及に怯えて、失敗経験を避け続けていては、Actionを取れる人材は増えていかない。
訪問者視点で言えば、ネクストアクションが判断できるだけの準備は必要ということだ。1で述べた「何を検証し」、そのために「どんな情報を」、「誰から得る」のかに加え、結果に応じて何をすべきかは事前に検討し、現地で柔軟に行動しなくてはならない。

3.    自身の情熱を示し、個人としても繋がることを意識せよ
少し話は逸れるが、Expoでスタートアップ企業に事業立ち上げの成功要因を聞くと、「情熱を持つ人間と繋がれたこと」という答えが返ってくる。デジタル時代においても、新たなチャレンジには「人」が重要だということだ。当然ながらExpoには多くの企業が参戦し、組みたいと思った相手を狙うライバルも存在する。会社としての魅力や論理的な議論が重要であることは間違いないが、「こいつとならやれそうだ」という個人としての魅力が成否を分けることもあるだろう。会社の顔としてだけでなく、個人の情熱を語ることも忘れてはならない。
 
また、Expoの醍醐味は多様な意見との出会いだ。知りもしなかった企業からビジネスのヒントを貰うこともあれば、自社と組みたいと思っている企業もいるはずだ。そうした機会を最大化するべく、Expoの時間帯だけでなく、終了後のオフシーンの交流も積極的に参加すべきだ。

例えば、Table 4 One社は議論したいテーマや行きたいレストランを選べば、出張先で食事会をセットするマッチングサービスを提供している。異国の地で身内同士慰労しあうことも重要ではあるが、日頃出会えない人種との交流に赴くことも良いのではないか。

Expoの重要性は今後も増していく

今後も事業創生においてExpoが担う役割は大きいだろう。リモートワークが流行っている昨今ではあるが、情熱のある人との出会いが今すぐにデジタル化されるとは考えづらい。しばらくは先進企業が一堂に会し、事業を議論する場として重宝されるのではないか。

加えて、Expoの活性化は国家としても重要だ。ご存知の通り、今後設立が予定されている、IR(Integrated Resort/統合型リゾート)には大型の国際会議/展示場の隣接が義務付けられており、商用客を誘致しなくては広大な土地が無駄になってしまう。

しかし、NATOと揶揄されている現状では、多くの訪日者は望めない。まずは海外Expoの活用を通じて、ビジネス感覚を改善し、企業、そして個人としての魅力を発信していくことが肝要である。

デジタルによる働き方改革が進む現代社会において、リモートワークや少労力など、「スマートで、クール」な働き方に変わりつつある。それ自体は決して悪いことではないが、仕事に情熱を燃やさないことと同義ではない。

遠くシルクロードの時代から、異文化との交流が国家の価値を支えてきた。デジタル時代だからこそ、情熱を直接伝える機会を大切にしてゆきたい。

シニアマネージャー 西野 充樹

総合ITメーカーを経て現職。
IT・製造業を中心に、主に事業戦略策定や新規事業創出等のプロジェクトに従事。

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