デジタルトーク

2017.11.20

小売 真のオムニチャネル革新の先にあるもの

2014年、セブン&アイ・ホールディングスが、他社に先駆けて既存の流通小売業の変革を狙い、オムニチャネル戦略の推進を前面に打ち出した。すると、新たな成長戦略を模索する小売り各社も、後を追うようにオムニチャネル戦略を打ち出した。それから約3年が経過。小売業界を取り巻く状況は変わったかというと、当初に思い描いていたほどの変化はなく、スマートフォンなどの普及による利便性の向上の範疇を超えていない感がある。

この当初期待と現実との乖離は、顧客体験の創造を実現することがいかに難しいか、ということを表している。多くの企業は「あらゆるチャネルから場所・時間を選ばず、多岐に渡る商品・サービスを購買可能にすること」がオムニチャネル戦略であると言うが、これは単なる手段であり、その本質は「新たな顧客体験の創造」にある。

各小売り企業はオムニチャネル推進という名目で、商品マスタ・会員情報の一元化や販売チャネルの追加などのシステム開発に没頭する。だが、これ自体が容易ではないため、結果として「新たな顧客体験の創造」という目的は二の次となってしまったのである。

商品を欲しいと思い、情報収集・比較などの検討を経て、商品の購買に至り、その商品を受け取ることが一連の購買プロセスとすると、その各プロセスと、実店舗・PC・スマートフォンなどチャネルの概念がなくなり、完全にシームレスな状態を作りあげることがオムニチャネルの目指す姿である。
 
1つ事例を挙げてみよう。例えば、出先でふと見かけた商品に興味を持つと、ウェアラブル端末に価格帯やユーザーレビューなどの情報が自動表示される。スマートフォンを使ってその場で購買し、駅前のいつものコンビニで買い物のついでに商品を受け取って帰る。

この事例からもわかるように、オムニチャネル革新の先には、確実に新しい世界が広がっている。ショッピングという概念は薄れ、潜在的な欲求や偶然の出会いを、時間・場所に縛られることなく、購買に繋げることが出来るのだ。さらにここへ、AI、AR、ロボティクス、IoTなどの先端技術が加われば、幼い時代にアニメで見たような世界がどんどん現実のものになろうとしていることがわかる。その行く先を想像すると、ワクワク感を抑えられない。

オムニチャネルの本当の価値は、単なる利便性向上ではなく、このようなワクワク感や刺激をもたらすことだと考えている。それは、歳を重ねるごとにルーティン化しがちな毎日に、新しい発見や気付きを与え、退屈とは無縁な日々を送ることに繋がる。そんな未来が広がっているのであれば、「長生きしても充実した生活を送り続けられるかもしれないなぁ」などと思えてくる。

エグゼクティブ・パートナー 山本 将之

株式会社 野村総合研究所を経て現職。
流通小売、製造業を中心に、IT戦略立案、業務改革、人材育成、PM/PMO、ITA設計などの支援に従事。
ICT活用ビジネス立上げ、案件化、プロジェクト推進まで、幅広い領域の知見と経験を有する。
共著書に「デジタル化を勝ち抜く新たなIT組織のつくり方」。

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