デジタルトーク

2019.07.22

共通 デジタル時代におけるコンサルタントの提供価値

提供価値に見るコンサルティングの3つの時代

コンサルタントが提供する価値の根源は、いつの時代にも問題解決にある。その根源は変わらない一方で、コンサルタントの価値の発揮しどころは、経営のあり方の進化とともに変化している。価値の発揮しどころの変遷を見ると、コンサルティングの時代は大きく3つに分けられる。
  • トラディショナル時代(1960年頃~)
  • オーソドックス時代(2000年頃~)
  • デジタル時代(2015年頃~)
トラディショナル時代は、マッキンゼーやBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を始めとするファームにより、コンサルティングというサービスが勃興・急成長し、市場が形作られた時代だ。

BCGのブルース・ヘンダーソンによって編み出された「論理的かつ戦略的な問題解決」というこれまでになかったアプローチが広がり、多くの先人によって今となっては古典とされるフレームワークが続々と生み出された時代でもある。

次は、オーソドックス時代だ。コンサルティング市場が安定成長期に入り、コンサルタントの量産が求められるようになった時代であり、そうした時代の要請に応えるべく、コンサルティングの形式知化が進んだ。私の若手コンサルタント時代は、ちょうどオーソドックス時代に重なる。

そして今は、デジタルの時代だ。デジタルテクノロジーの進展が、コンサルタントの価値の発揮しどころを再び変えようとしている。コンサルタントを生業とする者にとって、面白い時代がやってきた。

では時代とともに、コンサルタントの価値の発揮しどころはどう変化してきたのだろうか?順を追って見ていこう。

時代による提供価値の変化

冒頭で、コンサルタントが提供する価値の根源は問題解決にあると述べた。その問題解決は、大きく5つのステップで構成される。
  • 論点設定
  • 仮説構築
  • 仮説検証
  • 打ち手策定
  • 打ち手実行
そこで、各ステップにおける提供価値の大きさの濃淡を、時代ごとに整理してみた。
トラディショナル時代は、論点設定から打ち手策定までの4つのステップで価値を発揮していた。

特に最初の2つのステップ、論点設定と仮説構築の価値は大きなものであった。論理的かつ戦略的な思考で、リチャード・ロックリッジによるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、ジョン・クラークソンによるエクスペリエンスカーブ、トム・ピーターズらによる7Sなど斬新なフレームワークが開発された。それらフレームワーク自体と、それらを生み出した思考力が価値の大きな源泉となっていたのである。

オーソドックス時代になると、コンサルタントの量産が求められ、その要請に応えるべく問題解決の形式知化が進んだ。そしてこれが、コンサルタントの価値の発揮しどころをも変えていった。

具体的には、形式知化により論点設定と仮説構築におけるコンサルタントの価値が低下したのだ。それを補うべく、コンサルティングファームは、価値の発揮しどころを仮説検証と打ち手実行へとシフトさせる。

ハンズオン、インプリメンテーション、実行支援といった言葉が躍り、もてはやされたのはこの頃だ。それは時代の要請にも適っており、一般的なものとして定着していった。よって、私はそのスタイルと時代をオーソドックスと呼びたいと思う。

ならばその変化には、どのような背景があったのだろうか?

論点設定と仮説構築については、問題解決の形式知化が進んだことにより、クライアントの問題解決ケイパビリティが高まり、論点設定と仮説構築をクライアントが一定こなせるようになったことが背景にある。

一方で、仮説検証と打ち手実行に光が当たった理由は、現地現物に基づく仮説検証、および打ち手実行の徹底こそが、成功確率とインパクトの大きさを左右するという認識。クライアントの間でこの認識が高まったからだ。

そして迎えたデジタル時代。オーソドックス時代の価値提供のあり方が脅威にさらされる時代である。

まずは、仮説検証。オーソドックス時代には地道な情報収集や、コンサルタントの分析技術が価値の源泉となってきたが、デジタルテクノロジーによるデータ収集・分析の進化と、それを使いこなすデータサイエンティストの量産が従来の価値の源泉を脅かしている。

データ収集・分析の進化とは、以下のようなものだ。
  • データ収集における進化:アナログ情報のデータ化とアクセス容易性の進展
  • データ分析における進化:分析技術の進展とそのライブラリ化
さらに、打ち手策定では、テクノロジーの深い知見なしには打ち手をかたちにできなくなる。すなわち、従来のケイパビリティを持つコンサルタントとクライアントだけでは不足であり、何らかの手でテクノロジーケイパビリティを補完せねばならない。テクノロジー企業との三位一体が求められる時代が来るかもしれない。

一方で、デジタル時代に再認識されるコンサルタントの価値もある。デジタルテクノロジーの進化が「できること」の幅を広げた結果、テクノロジー知見のない人間には、論点設定と仮説構築がより難しいものになり、問題解決も適切に行えなくなりつつある。

その結果、テクノロジーの可能性と限界を見極める眼を持つコンサルタントの価値が高まっている。先ほど述べたデジタルテクノロジーを活用した仮説検証力も兼ね備えたコンサルタントならば、より価値ある存在になれるだろう。

また、オーソドックス時代にニーズの高まりを見せた打ち手実行支援は、これまで以上に求められるだろう。デジタル時代の打ち手実行においては、データに基づく高速PDCAが肝になるのはご承知の通りだ。

これまでのコンサルタントの強みであった速い提言の枠を超え、速い実行まで踏み込めるコンサルタントにならねばならない。速い提言と実行を兼ね備えたコンサルタントによる高速PDCAの価値は、デジタル時代には計り知れないものになる。

デジタル時代のコンサルタントに求められるケイパビリティ

以上のデジタル時代に求められるコンサルタントの提供価値をにらみ、我々ベイカレント・コンサルティングはデジタルケイパビリティの向上につとめている。我々は、大きく5つのケイパビリティが必要だと考えている。
  • 問題の本質を捉える力
  • 技術の可能性と限界を見極める力
  • 問題解決コンセプトに落とし込む力
  • コンセプトを形にする実装力
  • 進化を遂げ切る変革力

最初の3つのケイパビリティを持たないコンサルタントは、効果的な論点・仮説・打ち手を策定することができないだけでなく、テクノロジーを振りかざすベンダーや、一部の知識を聞きかじったユーザーに振り回されてしまうだろう。

また、実装力に欠けるコンサルタントでは、アジャイル型の取り組みができず、高速PDCAに対応できないだろう。そして、これまでと同じく、企画から実行までやり切る覚悟・情熱・粘り、すなわち変革力を持たないコンサルタントでは成果を出せず、クライアントから相手にされなくなるだろう。

必要とされるケイパビリティを見てもわかる通り、コンサルタントにとっての知恵と日々の鍛錬の重要性が、トラディショナル時代と同様、いやそれ以上になろうとしているのかもしれない。日々進化を続ける技術の可能性が、そしてそれに伴って変化していく経営環境が、先人のフレームワークや、過去の知識の貯金だけで勝負することを難しくしている。

最近私は、先人が古典となるフレームワークを生み出したときの頭の中身と使い方に思いをはせる。そこにこそ、デジタル時代に競合ファームに差をつけるコンセプトを編み出すヒントがあると思うからだ。

まずは、トラディショナル時代のフレームワークやコンセプトを今風に読み解くことから始めている。それが十分にできるようになった暁には、新たなコンセプトの創出に挑戦しようと思う。

コンサルタントにとって、本当に面白い時代がやってきた。まだまだ楽しめそうだ。

執行役員 則武 譲二

ボストン コンサルティング グループ、大手IT企業を経て現職。
主に全社・事業戦略の策定、デジタルトランスフォーメーション、新規事業の立上げ、マーケティング・営業改革等のテーマに従事。デジタル関連のプロジェクト、研究活動、人材開発などの全体を統括。

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