デジタルトーク

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2019.07.08

小売 デジタル時代に問われるコンビニの真価

消費行動をリードしてきたコンビニの進化

図:小売三業態の売上推移(単位:10億円)
今や消費財小売を支える存在となったコンビニ業界。

ここ20年間、コンビニの在り方は質/量共に大きな変化を遂げてきている。私が高校生くらいの頃までは、単純な小売の全国チェーンであり、規模も限定的な存在だった。ローソンが5000店舗突破!と言っていた時代だ。高校卒業を控えて、初めてのバイトの給料を銀行振込で受け取ったとき、銀行の営業時間にしか現金を引き出せないことを不便に思い、24HのコンビニにATMがあればな・・・、と思っていた。

その後、2000年代に入りコンビニにATMが設置され始めた。私が望んでいたことが現実となったのだ。新たな顧客体験が浸透してゆく上でも欠かせない存在だ。昔から小銭入れを持ち歩くことに煩わしさを感じていたが、最近では現金の使用機会が減ってくることになった。これには電子マネーやQR決済の普及はもちろんのこと、新技術を積極的に導入し、その利用を促進させたコンビニの存在が大きいだろう。

最近また新たな進化を感じたものが無人レジだ。これは大手スーパーへの導入のほうが先行していたが、初めて使ってとても便利に思えた。じきにコンビニにも展開されると思っていたが、実際に導入されるまでには数年かかった。最近やっとお目にかかる機会が増えてきた。

某アパレルショップでは、RFIDにより買いものカゴの中の商品を一括読取する機能も実装されているため、コンビニでもお目にかかれる日が来るのか、期待したい。

ほかにも、高級おにぎり、スイーツのブランディング、総菜の多品種化、ドリップコーヒーの販売など、本来の小売業態の拡張はもちろんのこと、各種サービスの収納代行、宅配便の発送・受取、WebサービスのEndポイント(メチャカリairClosetなど、毎月おすすめの衣服を提供するサービスの受取窓口としても使える)など、BtoCオンラインサービスの人手を介する接点として重要な役割も担うようになった。

コンビニが抱える課題と強み

一方で、コンビニの進化と同時に、コンビニの労働環境は大きく変わってきた。

私が大学生の頃は、友達の大半とまではいわないが、数人はコンビニでバイトをしていて、皆でバイトの様子を伺いに行ったものだ。当時に比べて、コンビニのバイトというのは、学生にとって魅力的なバイト先では無くなったように思える。

企業へのインターンシップや、SNSを使って好きなことをそのまま職業にする流れ、Uberに代表される時間・場所に縛られない働き方など、学生の自由な労働選択が促進されていることが一因と言えるだろう。

これら若者の労働選択の多様化だけではなく、日本全体の少子高齢化による労働人口減もあり、ついには24H営業廃止の動きも報じられるようになってきた。

さらに、Amazon Goアリババによる次世代型の無人店舗が、日々紙面をにぎわせるようになり、近い将来に世界中で取り入れられていく未来は見えてきている。しかし、利便性・合理性だけでは、日本的商文化には単純に受け入れられないとも考えられる。前述のとおり、単純な小売業ではなく、各種サービスの取り扱いがあることから、無人店舗だけでは、日本のコンビニにはなじまないだろう。

コンビニはいつの時代にも、新しい技術・試みを取り入れることで、利用者の不便を解消してきた。それこそがコンビニの強みである。今まさに実現している・しようとしているデジタルを組み合わせ、日本型のコンビニをさらに進化させることで、Amazon Goにも負けない店舗を作っていけるのではないだろうか。

デジタル活用での進化の余地は?

<無人レジ>
近年、個人的に大きな不便を感じる瞬間が、毎朝/昼のオフィス街のコンビニの大行列だ。これに対しては、無人レジの導入は非常に有効となる可能性があり、現時点でも効果は出ているだろう。朝昼の大行列時のみではなく、店員が仕出しや調理をしている時などの活躍も想像できる。

しかし実態としては、都心のコンビニでたまに見かける程度かつ、利用者もそれほど多くない印象である。理由は2つ考えられる。

1つ目は、技術の導入自体が体験向上に直結しないこと。直接的な体験だけを切り取ると、現金の支払い→スマホでピッといった直接的な(決済の)体験向上とは異なり、無人レジを利用することでのお買い物体験は、自分で商品の袋詰めをしなければならない分、直接的な(買い物の)体験は低下するだろう。

2つ目には、単純な安心感が理由として考えられる。不慣れな無人レジを操作して、動かなかった場合を想像すると・・・、はい、店員さんのいるレジに並びたくなる気持ちはわからなくはない。

これら、無人レジの利用に関する障壁を取り除き、私が不便に思っていることに立ち向かうには、一定数の利用者が参加したうえで、間接的な(行列改善といった)体験向上に結び付ける必要がある。XX Payとまでは言わないが、ポイントバックキャンペーンなどで、無人レジの利用を促すことはできないだろうか。人間、慣れてしまえば、次回以降は反射的に無人レジを選択できると思うのだが・・・。有人レジ1台に変え、無人レジ2~3台を配置することで、朝昼行列の解消を図っていただきたい!

<顔認証>
コンビニの煩わしさの第二位が成人認証だ。私は酒もタバコも買う。まぁ、レジをタッチするだけでいいのだが、できることなら無くしてもらいたい。そこで、顔認証を用いて成人認証をしてもらえやしないだろうか。AIで判断に迷うラインは今まで通りレジタッチ、明らかにオッサンの場合はレジタッチ無し。AIに若いと判断される喜び・AIにオジサン認定される悲しみが新たなUXとはならないだろうか。

<RFID>
2025年に向けて政府が導入を推進している。これにより、レジでのバーコード読取時間が大幅に短縮さるため、店員の空き時間を確保できるだけではなく、製造~輸送~販売/廃棄の情報が一元管理可能となる。

また、前述の無人レジにおける直接的なお買い物体験の向上や、消費期限間際の商品へのダイナミックプライシング(夕方のタイムセールのような)・食品ロス削減、精算前商品の万引き防止といったセキュリティ対策=無人店舗の課題解決にも役立つことが期待される。

しかし、ありとあらゆる商品に対して製造(包装)段階で埋め込む必要があるため、1タグ当たりのコストの問題や、厳しい環境下(冷凍や電子レンジ加熱)での耐久性能などの課題解決が必要な状況であるため、本格的な導入までには少し時間が必要となるだろう。とはいえ、夢のある技術なのでその動向に注目していきたい。

<ビーコン>
最近ローソンでLINEを開くとからあげクンをゲットできるキャンペーンを実施していた(これのためにLINE友達になってしまった・・・)。

これはローソンの店内に居ないと参加できない仕掛けになっていたのだが、これの裏で動作していたのがビーコン(正確にはBluetooth Low Energy)という技術だ。Bluetoothを利用した狭い範囲に限定した通信技術であるため、特定の位置にいるかどうかを識別することができる。

今はアプリ(LINE)を起動しないと使えないが、iBeaconという規格ではバックグラウンドで動作可能。バックグラウンドで動くというのが重要で、IoTと組み合わせることで「(冷蔵庫から)牛乳が少なくなっています」や「(電子タバコから)タバコが切れそうです」など、個人的なお買い物忘れに対して的確なレコメンドを出してもらえるようにはならないだろうか。もはや介護の世界だが。

<モノタロウ・ローソンスマホレジ>
Amazon Goは最先端技術に加え大きな資本に支えられているが、より簡易に無人店舗を開設する試みも始められている。セキュリティ面は完全ではないため、特定の施設内での店舗に限られるが(今回の出店は佐賀大学)、事前登録→入店時にゲートで認証→購入はレジ不要、スマホアプリで精算、という最低限無人店舗たるUX、かつ実現可能な技術・予算で店舗運営が可能な仕組みを提案している。
(参考:モノタロウ「佐賀大学内に初の店舗をオープン」)

同じようにローソンでもスマホレジなるものの導入を始めている。これも最初に記載した無人レジを超えて、大行列対策には大きく貢献できるはずではある。しかし、導入段階ゆえに、対応店舗がかなり限定的であり、標準となるまでの普及は遠いように思える。キャンペーンも開催しているが、やはり皆新しい体験にコンサバなのだろうか。いずれにしてもローソンの試みには今後も期待したい。

昔から些細な不便を解消することで、利用者によりよいUXを提供してきたコンビニ。現在の私の不便もきっと解消してくれるに違いない。無人店舗実現の前にも、デジタルを有効に活用することで更なる真価を発揮してほしい。

シニアマネージャー 広瀬 剛

外資系IT企業を経て現職。
金融・小売業界を中心に、コールセンターシステムの構築や基幹システムの刷新から業務改善プロジェクトまで幅広く従事。