デジタルトーク

2019.05.29

エンタメ プロジェクションマッピングの挑戦

鮮烈なデビューを飾ったプロジェクションマッピング

2012年12月、東京駅丸の内駅舎に映し出された映像に、観客は息を飲んだ。東京駅丸の内駅舎の保存・復元の完成を記念したプロジェクションマッピングによるパフォーマンスである。

全46台の超高輝度プロジェクターにより実現した巨大プロジェクションマッピングのイベントは、2日間で2万人以上を動員。あまりにも来場者数が多かったことから、当初1週間だった上映期間は3日間で切り上げとなった。その後もイベントの動画がSNSなどで拡散され、非常に大きな反響を呼んだ。YouTubeでの動画再生回数も200万回を超えた。

このイベントの成功を皮切りに、プロジェクションマッピングはエンターテインメントの可能性を押し広げるツールとして一気に普及。ハウステンボスやディズニーランドなどテーマパーク、東京ドームシティのギャラリーアーモやお台場teamLabなどのアートミュージアム、Perfumeなどアーティストのライブパフォーマンスなど、どこかで目にしたことのある方も多いだろう。

ではなぜ、プロジェクションマッピングはこれほどまでに人々を感嘆させ、広く普及したのだろうか? その要因を考えると、プロジェクションマッピング活躍の場がエンタメ領域に留まるものではないように思えてくる。
 

プロジェクションマッピング独自の特性

プロジェクションマッピングは、他の映像描写方法では同時に実現し得ない2つの特性を持つ。1つ目は、投影対象箇所に特別な機材の設置を必要としない点だ。壁や建物だけでなく、人物や雲さえスクリーンになりうるため、場所の制約から解放されるだけでなく、大人数で同時にコンテンツを共有することもできる。また、投影にはプロジェクターが使われるため、大きなディスプレイを持ち運ぶ必要がないことも大きい。

2つ目は、従来のスクリーンとは一線を画す表現力である。拡大、縮小、さらには投影場所の形状に応じた描写が容易で、コンテンツの取り回しの幅が広いため、これまで行われてきた平面のスクリーンへの投影では想像もつかなかった表現が可能になる。

「百聞は一見に如かず」ということわざもあるとおり、人間は五感による知覚のうち8割の情報を視覚から得ているとも言われる。プロジェクションマッピングはその視覚を通じ、極めて直感的な訴求が可能な映像描写表現と言えるのではないだろうか。

近年の技術革新が広げる可能性

プロジェクションマッピングを実現する技術が近年急速に進化していることが、上記の強みをより際立たせ、普及を後押ししている。

ディープラーニングなどの技術によりその精度と速度が飛躍的に向上している画像解析と組み合わせることで、先述した投影場所の形状や動きに応じ、映像をリアルタイムに加工することが可能になった。

またプロジェクターの進化にも、目を見張るものがある。ハイエンドモデルが高解像度化、高照度化を競う一方で小型化の流れもあり、手のひらサイズのポータブルプロジェクター、スポットライト型プロジェクターなど、様々なタイプのものが登場している。また、低価格化も進んでおり、一昔前はハイエンドモデルと言われ100万円を超える価格帯だったスペックのものでも、今では20万円程度で手に入れることができ、裾野拡大に寄与している。


これらの事実は、プロジェクションマッピングが人間の視覚を通じて、直感的な理解を促すツールとして幅広く活躍する潜在能力を持ち、各社がそれに期待していることを示唆している。実際に、そのような点に着目し、すでに様々な分野で応用が始まっている。
このように、エンタメツールの域を脱却した事例も出てきた一方で、コンテンツプロバイダーの不足から、エンタメ領域における需要に十分に応えられていない状況もある。

また、投影に使われるプロジェクターの限界として、明るい場所においてはまだまだ視認性が低く、消費電力が大きいといった今後も技術的な進化を要する課題も存在している。

新たな価値観の創出に向けて

しかしながら、このような課題は近い将来、解消されるはずだ。コンテンツプロバイダーの不足については、プロジェクションマッピング協会によるコンテストやワークショップの開催など、業界をあげた人材育成の取り組みが進んでいる。プロジェクターの限界についても、先述のとおり、各社が製品開発競争を繰り広げており、徐々に解消されていくだろう。

技術革新が進んで課題を乗り越え、さらなる市場拡大がなされたとき、プロジェクションマッピングは日常的なツールとして普及し、我々の生活を一変させるかもしれない。例えば、スマートフォンにプロジェクターが搭載されれば、家具の組み立て指示や料理サポートをより生々しい体験として実現できる。また、通勤ラッシュ時間帯の駅で、混雑を回避するルートをナビゲーションすることも可能になるだろう。車のヘッドライトにプロジェクターを搭載すれば、濃霧など視界不良時の運転サポートも考えられるかもしれない。

プロジェクションマッピングは、視覚を通じた直感的な理解の実現という機能を通じ、我々の生活体験に新しい価値をもたらすポテンシャルを秘めているのだ。

様々なものが自動化される昨今だが、人が担う役割は一定割合残っている。その役割を、視覚という切り口でサポートする存在としてプロジェクションマッピングが活用されて行く未来に期待したい。

シニアマネージャー 福原 寛

大学卒業後、現職。
金融、ハイテク、通信業界などを中心に、営業戦略や新規事業策定、業務改革といったテーマに対し、企画立案から実行支援まで幅広い領域で支援。

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