デジタルトーク

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2019.05.15

ヘルスケア 肥満は過去の悩みとなるか

ヘルスケアがブーム、だが肥満はまったく減っていない

最近ヘルスケアブームの到来を肌で感じることが増えた。皇居ランが流行り、東京マラソンには定員の10倍以上もの募集があったと話題になった。メディアには趣向を凝らした様々なフィットネスが取り上げられ、24時間ジムの出店も相次いでいる。

更に、デジタル化がヘルスケアブームを後押ししている。多様なウェアラブルデバイスが登場し、個々人のデータが日々取得され、健康管理や保険料の割引など様々なパーソナライズサービスに活かされている。いつまでも健康に長生きしたいという永遠のテーマと、社会課題の解決を進めるデジタル技術がマッチしている。

これだけ健康・ヘルスケアが取りざたされているのであれば、肥満も徐々に減ってきているのだろうか。気になったので調べてみたら、まったくそんなことはなかった。
逆にテクノロジーの進歩と肥満は相関関係にあるという主張もあるようだ。

OECD各国のICT投資額と肥満の割合は相関関係にあるという。そして過去20年間の情報社会への移行が、運動量減少および摂取カロリー増加を招き、世界的に肥満化が進んでいるとのこと。これからUberEatsのようなデリバリーやリモートワークなどが更に進んでいくと、最低限必要な移動も減り、ますます肥満が課題となる恐れもあるだろう。

痩せられない理由

なぜ肥満は減らないのだろうか。肥満にならないためには、シンプルに言えば摂取カロリーを消費カロリー以下に抑える必要がある。これを太り気味の人はより意識的に行わなければいけない、つまりダイエットをする必要が出てくるが、これがなぜ難しいのか。ダイエットがうまくいかない理由を調べてみた。
「食事制限をしてみるが、周りのお菓子やスイーツが気になってつい手が出てしまい、なかなか結果も出ないし、ストレスもたまってきたのでもういいや!」というストーリーが目に浮かぶ。痩せるためには自制心と根気が必要なようだ。

牛丼・ハンバーガー・カップ麺など、日常生活のあちこちに、炭水化物と脂質まみれの「早い・安い・うまい」を提唱する食事が溢れている。運動が不足しがちな中年サラリーマンが、短いランチタイムと限られたお小遣いの中で、満腹感を満たしてくれるものを選ぶとなると、ついこれらの茶一色の食事に手が伸びてしまう。

一方、健康な食事を意識して取ろうとすると、満腹感やコストが犠牲になりがちだ。例えば野菜や鶏のササミばかりの食事では物足りないし、値段も高くつく。これを、自制心を持って日々継続していくのはなかなか辛い。

テクノロジーの進歩がこの課題を解決する日は来るのだろうか。理想は、過酷な運動や食事制限なしに自然とカロリー摂取を押さえてくれる、つまり誰でも楽に痩せられる社会だ。ヒトの体と、食品そのものに対するアプローチをそれぞれ見てみたい。

ヒトの体に対するアプローチ

いくら好きなものを食べても、それをなかったことにしてくれる特効薬があれば良いのにとは誰もが思うことだろう。一部ダイエット女子の間では、コーラックなどを用いた下剤ダイエットが普及しているようだ。ただこれは依存症や副作用の懸念もあり、あまり気軽に行えるものではない。

似たようなもので、脂肪の分解を防ぐリパーゼ阻害薬というものがある。近年、大手製薬が国内での研究・販売に乗り出すと話題になっていたが、効用面の疑問や副作用の懸念などから結局見送られてしまった。

一方、食べる量を強制的にコントロールしようとする方法もある。満腹時に食欲を抑える働きをするレプチンだ。どうやら肥満の人はこのレプチンの受容性が低い傾向にあるようで、ここの仕組み解明による新たな肥満治療が期待されるが、まだ実用化には至らない。

これら肥満薬は、いずれもまだ実用的と言えるレベルにはないが、今後データマイニングの進化などにより、画期的な特効薬が発見されるかもしれない。

食品に対するアプローチ

次に、テクノロジーによる食品の機能高度化も見てみる。世界的な人口増加や水不足といった顕在化しつつある課題意識から、安価にバランス良くエネルギーを補給するため、昆虫食やソイレント(完全栄養サプリ)が注目を集めている。しかし、いくら栄養バランスに優れていても、美味しく満足感が得られなければ、日常的に広く受け入れられることは難しいだろう。

個人的に気になるのは、大豆ミートや培養肉だ。今はまだ本物の肉のように美味しく食せるものではないが、今後の遺伝子組み換え技術などの進歩に期待したい。あとはベースパスタという完全栄養パスタが密かにブームとなってきている。カップ麺タイプがあるなど手軽で、かつ普段の食事のように美味しく満腹感も満たせる点が良い。これら主食となる肉や穀物類が、味を保ったままヘルシーになるのは革命的だと思う。

ただしこれらの健康食が徐々に登場してきているとはいえ、身の回りには多くの高カロリー食品が溢れる中、いかに健康な食生活を自然と続けられるかが課題だろう。

求められる食のコンシェルジュ機能

ホリエモンが収監後にメディアに出てきたときは、その痩せた姿を見て驚いた。規律された環境に身を置けばここまで変わるものかと。誘惑の多い日常で同様に食習慣を律するためには、日ごろから何を食べれば良いかを教え、また継続をサポートしてくれる、コンシェルジュのような存在が求められそうだ。

ふと、流行りのサブスクリプションがその一助となり得るのではないかと考えた。フィットネスではお馴染みの定額払いだが、ここには「店舗が限られる」、「料金体系自体は直接的な運動のモチベーションではない」といった課題がある、要は継続するのが面倒なのだ。

ただこれを外食や中食のチェーン店などでは活かせるのではないか。もし自宅近辺と職場や学校の近辺にそれぞれ店舗があれば、通いやすさは抜群だ。日々のランチにおいては、”どうせ1食だけ健康に気をつけても”とすぐ諦める理由が頭に浮かぶが、定額ヘルスメニューが通い放題で食べられるとなれば積極的に行く動機ができるだろう。パーソナルアプリとの相性も良く、メニューごとのカロリーや栄養素が分かれば、記録や改善提案にも活用できる。適切なメニューの提案とそれを継続できるようサポートしてくれる仕組みは、正にコンシェルジュのような役割といえる。

そもそも肥満は多くの人にとって、必ずしも解決しなければならない課題でもない。多少太っているからといって咎められるわけでもないし、結婚して落ち着いたら、周りの目もそこまで気にしなくなってしまうのだろう。

そこまで必要性に迫られているわけではないけれど、簡単にできるなら痩せたい、という微妙な心理バランスの上にあるのがダイエットに対する課題意識ではないだろうか。その一歩を踏み出すきっかけとして、健康食×サブスクリプションがある程度役に立つのではないだろうか。

マネージャー 吉田 健

大学卒業後、現職。
デジタル・イノベーション・ラボ所属。
主に保険・金融を中心に、IT、デジタルを活用したサービス企画・導入支援、オペレーション改善等に従事。