デジタルトーク

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2019.02.18

不動産 デジタル時代の住まい選び

家の値段が急速に上がっている

住みたい街ランキング上位常連の「恵比寿」。オフィスや商業施設で栄える、言わずと知れた都心だが、少し歩けばハイソなブランドマンションが立ち並ぶ。2012年ごろまでは、これらの多くは概ね坪単価300~400万円ほどの分譲価格で売り出されていたものだが、今や中古市場でも軽く500万円を超えてくる。ここ数年の間で、とても気軽に目標にできるような代物ではなくなってしまった。

都心部の家の価格は、2000年ごろを底に微増、2012年辺りを境に驚異的なペースで上がり続けている。これは、資材や人件費の高騰、オリンピック開催による先高観などが要因と言われているが、そもそも実需がないと成り立たない。実態を見ると、都心が上がって郊外は下がり、二極化が進んでいる。つまり都心部の実需が高まり続けているのだ。
図表:東京都財務局公示地価資料より作成

なぜ高いのに都心に住みたがるのか

都心に住む価値は大きく2つあると考えられる。
  1. 直接的に得られる価値:通勤ストレスの緩和や娯楽性
  2. 間接的に得られる価値:ステータス
これに以下が拍車をかける。
  • 共働き世帯の増加やクルマ離れ
  • 相続税対策(相続税は居住用の持家だと評価額を80%減で見てもらえる。15年の税改正で納税対象者が増えたため、確実に高額な不動産需要が増えたはずだ。)
  • 少子高齢化を見据えた、都心の利便性に対する価値信奉
都心一極集中については賛否あるが、現状だと郊外に住むことの不便さが大きく、多少金銭的に無理をしてでも都心に近付かざるを得ない。

都心に住むことの価値はデジタル化により変わっていくか!?

今後、デジタル化の進展により、「①直接的に得られる価値:通勤ストレスの緩和や娯楽性」は薄れていくだろう。主な要因は2つある。
  • リモート・バーチャルオフィスの発展
  • 自動運転の発達に伴う交通の廉価化と娯楽性の向上
まずリモートでの働き方が進むにつれ、職場に近いことの価値は薄れる。加えて、自動運転の発達が進めば、快適な移動手段をより安く享受できるようになり、遊びや買い物に行く際の鉄道のプライオリティも下がる。結果、駅近である必要性は薄くなる。そうすると、地理的な制限が薄くなり、いずれはオフィスや商業施設にとらわれず、住みたいところに住める時代がやってくるだろう。それは、まずは都市周辺から始まっていく。実際にお金や時間に余裕のある資産家たちが葉山や芦屋といった郊外に住んでいるが、サラリーマンにとっても現実的な選択肢になり得るかもしれない。

海外では完全なバーチャルオフィスを実現している事例もある。
では「②間接的に得られる価値:ステータス」はどうだろうか?

ミレニアル世代は、モノを持つ事によるステータス感・所有欲求が低くなっていると言われる。実際、モノや車のシェアリングは、若い世代を中心に浸透してきている。この実利重視の傾向は家にも現れてきており、都内の西高東低は徐々に崩れ始めてきている。世田谷の閑静な住宅街ではなく、北千住や小岩など、下町だが都心に近い東側の人気が出てきているのだ。

また、資本主義的な貨幣経済から評価経済への移行といった考え方も受け入れらてれてきている。価値観が、お金から自分の気持ちや自分らしい生き方といったものにシフトする潮流のことだ。実際にUberなどでは、ドライバー評価を上げることが楽しく、サービス向上に努めているといった例も見られる。そうすると、たくさんお金を稼ぎ、ブランドのある土地に住み、という欲求は段階的に薄れていくのかもしれない。

変化の激しい時代、無計画に家を持つリスクは高まっている

上記のような、都心の求心力の不確定さだけではない。この先10年ほどの住宅購入シーンを考えてみると、消費税率引き上げ、生産緑地の指定解除、高齢化による空き家問題等、ネガティブな要素は多い。また、デジタル技術の進化によって新たなリスクが出てくるかもしれない。例えば、データ分析が高度化して地域毎の災害予兆の信憑性が高まり、新たなレピュテーションリスクが発生するといったことも考えられる。

このように、資産形成を主目的とした都市部の住宅購入は、曲がり角に来ているのだ。車などではシェアリングが進んだことで、まず使ってみて良いから買ってみるという動線も出てきている。家においても、まずはどこでも気軽に住め、その地での生活を体験できるような社会がやってきても良いのではないか。それが地方発展の起爆剤にもなるはずだと考える。

デジタルによる地方活性化の道

デジタルサービスはヒトの生活をより豊かにしてくれる。見てきた通り、今後、通勤などに伴う不快な時間は徐々に解消されていくだろう。ただし、都心に住む必然性がなくなった人々に対し、地方がその受け皿となり得るためには、そこに住みたいと思わせるような魅力的な街づくりを行うことがまた必然である。

ここもキーはデジタルにあるかもしれない。その地方ならではの魅力的な自然環境や観光資源に加え、デジタル技術を活用し、都会でしか得られない優れた食体験・娯楽体験を満たせるようなサービスや生活インフラを充実させる事ができれば、求心力は大きく高まるだろう。地方が活性化する事で、都心だけでは得られなかった新たな繋がりやサービスが発展することに期待したい。

ちなみに、いまどうしても家を買いたい場合はどうすれば良いか。例えばこういう方法もあるだろう。
 
 ◇ 築10年の中古、かつ、頭金1~2割、かつ、変動金利、かつ、10年買換え前提

金利と資産価値の変動リスクを極力抑え、住宅ローン減税をフルに活用するやり方だ。終の棲家を持つ安心感も重要だが、変化が激しく先が見通せない時代、何十年先まで住み方を縛り付けてしまうことは避けた方が良いかもしれない。

マネージャー 吉田 健

大学卒業後、現職。
デジタル・イノベーション・ラボ所属。
主に保険・金融を中心に、IT、デジタルを活用したサービス企画・導入支援、オペレーション改善等に従事。